「日本一大きい水車」を巡るデッドヒート
「おばあちゃん市・山岡」の水車 image by Puchi-masashi in Wikipedia
「日本一大きい山」といえば富士山です。「日本一大きい大仏」といえば東大寺の大仏。では、「日本一大きい水車」といえば、どこにあるかご存じですか?
水車とは、水の流れをエネルギーに変換する原動機です。筆者の育った家の近所の庭に比較的大きな水車があって、その水車の回転を飽きずに眺めていた少年時代の記憶があります。
その水車、日本で一番大きいサイズとなると、どのくらいで、どこにあるかご存じでしょうか? 実は、この水車日本一の座を巡って1990年(平成2年)ごろから意外に激しい戦いが繰り広げられています。
直近では2019年(平成31年/令和元年)に日本一の座が入れ替わりました。それまでは、岐阜県にある道の駅「おばあちゃん市・山岡」の木製(カナダ杉)水車が直径24mで日本一を誇っていました。株式会社田中住建が施工し、2004年(平成16年)にお披露目されたものです。
道の駅おばあちゃん市・山岡は小里川ダムの湖畔に位置します。そのダム建設で水没した地域に多くの水車があったため、その歴史を尊重して巨大水車ができたのだとか。
水車の点在する美しい光景がダム湖の下に水没してしまった歴史にちょっとした悲しさを覚えますが、埼玉県・寄居町にある「埼玉県立川の博物館」にある直径23mの水車(当時、日本一)を抜いたニュースで地元に新たな誇りが生まれました。
その埼玉の博物館が巨大な水車を1997年(平成9年)につくるまでは、青森県・深浦町にある「みちのく温泉」の大水車(直径22m)が日本一でした。
その青森の水車が完成する1994年(平成6年)より前の半年間は、大分県・本匠村にある「小半森林公園」の直径18.18mの大水車が日本一でした。要するに、どんどん記録が塗り替えられてきたのですね。
飯能市で育ったヒノキを100本以上使った総ヒノキの水車
「埼玉県立川の博物館」の水車 image by Kawashirou2019 in Wikipedia
しかし、2019年(平成31年/令和元年)に埼玉県立川の博物館が日本2位の座に落ちた巨大水車をリニューアルします。
もともと23mだった水車が老朽化のため動かなくなったので新しくしました。そのリニューアルを期に直径24.2mとなり、おばあちゃん市・山岡の24mの水車を再び追い越したのですね。
しかも、おばあちゃん市・山岡の巨大木製水車がカナダ産杉を使っている一方で、川の博物館の水車は埼玉県飯能市で育ったヒノキ(西川材)を100本以上使って総ヒノキで新しくつくり直したのだとか。
これこそ地産地消ですよね。さらに、川の博物館だけあって、埼玉県内の中部を貫く荒川流域の地形を1000分の1で縮尺再現した大型模型など、川と水、人の暮らしを学べる仕掛けが、ほかにもたくさんあるそうです。
埼玉県で育った境遇ながら川の博物館の巨大水車は生で見た経験がありません。しかし、富山に暮らす今は、隣県の岐阜にあるおばあちゃん市・山岡の水車を生で見ました。
直径24mの水車の威容は想像以上です。高さ24mとはどのくらいか、『小学館の図鑑NEO+もっとくらべる図鑑』(小学館)で調べてみると、イースター島の巨大なモアイ像(20mくらい)よりも大きいとわかります。
ピンと来ない人は、大人のキリンの5倍くらいでどうでしょうか。明治神宮(東京)にある木造の大鳥居(高さ12m)の2倍、ジャンボジェット機(エアバスA380)の垂直尾翼のてっぺんから地面までの高さ(24m)と同じです。
しかも、水車の場合は、その24mが横方向にも広がっているのです。さらに、水の力で回っています。
埼玉県の寄居町は、関東圏に暮らしている人は日帰りコースの距離ではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いてきたら、自動車で人との接触を避けながら日本一の水車を眺めに出掛けてみてもいいかもしれませんね。
[参考]
※ 「道の駅先進県」岐阜県内56カ所も大競争時代 差別化で魅力アップ – 岐阜新聞
※ 寄居町「川の博物館」の大水車、3年ぶりにライトアップ – 秩父経済新聞
※ <すっきりさせます> (64)「最大」譲った山岡の水車はいま? – 中日新聞
※ 埼玉県立川の博物館 – SAITAMAおもてなしミュージアム
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