外国人が知っている日本語の一つに、「ゲイシャ」があります。辞書「OXFORD」には「geisha」という“英単語”の解説が出ているほどですが、この芸者の意味、日本人も意外に理解していないのではないでしょうか?
例えば「芸者と芸妓と芸子、舞子と舞妓の違いを200字で述べよ」という国語の問題があれば、多くの人はきっと答えられないはず・・・。
そこで今回は岩波書店「広辞苑」や学研「漢字源」、共同通信社「記者ハンドブック」などさまざまな資料を参考に、上述の似たような言葉の意味の違いをまとめました。京都や金沢などに遊びに行く前には、しっかりとチェックしておきたいですね。
「芸」が付くか「舞」が付くかで大まかに区別できる
芸者と芸妓と芸子と舞子と舞妓、何となくどれも似たイメージがあります。冒頭で紹介した辞書「OXFORD」ではgeishaに対し、
≪A Japanese hostess trained to entertain men with conversation, dance, and song≫(Oxford Dictionariesより引用)
と説明があります。直訳すると「訓練を積んだ日本人のホステスで、男性を会話や踊り、歌で楽しませる人」という意味になりますが、舞妓も芸子も芸者も舞妓も似たようなイメージがありますよね。一体違いは何なのでしょうか?
まず上述の言葉を理解するためには、一文字目の「芸」と「舞」でグループ分けすると分かりやすいです。
(1)舞妓(まいこ)・舞子(まいこ)グループ
(2)芸者・芸子(げいこ)・芸妓(げいぎ・げいこ)グループ
ですね。舞妓や舞子は「舞」とあるように、主に舞いを披露して男性を楽しませる存在になります。本来なら三味線や長唄など、さまざまな芸を披露して男性の酒宴を盛り上げる存在のはずですが、舞妓や舞子は主に舞いだけを披露するのですから、その他の芸は修行中の身だとも言えます。
実際、舞子や舞妓は20歳以下など若手が主体。その道に入ってから5年ほど掛けて長唄、三味線、茶道、華道などの芸を修め、舞子や舞妓は芸者や芸子・芸妓になっていくのですね。
ちなみに舞子と舞妓はほぼ同義。各種の辞書でも同じ意味として説明されています。舞妓の「妓」という字は見慣れない文字ですが、学研「漢字源」によると「技」を持った「女」という意味の漢字だとか。舞妓は「舞い」という「技」を披露する「女」なのです。
女という言葉が入っている分、同じ若手の中でも年若を舞子、20歳前後の経験者を舞妓と区別するという考えもあるようです。
芸妓と芸子、芸者の区別は地方による
一方で芸者と芸妓と芸子の違いはなんなのでしょうか? どの存在も先に触れた通り、三味線を弾き、舞いを披露し、長唄を吟じて、茶道や華道を収めた芸達者な女性を差しますが、地域によって呼び方が変わるとか。大まかに言えば、
・京都で使われる場合・・・芸妓、芸子
・京都以外で使われる場合・・・芸者
という関係ですね。もちろん例外はあります。例えば福井県の観光用看板には、“芸妓”の言葉が使われていますから、明確な線引きはないのかもしれませんが、1つの参考にはなるはず。
ちなみに芸妓と芸子の区別は微妙で、同じ京都内でもお店によって表記が異なるほど。岩波書店「広辞苑」には同義として紹介されています。
ただ、読み方に関しては、京都では芸子も芸妓も「げいこ」と呼ぶそう。一方で、共同通信社「記者ハンドブック」には、
≪芸妓(げいぎ)「芸妓(げいこ)」とも≫(共同通信社「記者ハンドブック」より引用)
と表記や読み方の解説があるように、新聞社では「げいぎ」の読みを基本的に採用しているのですね。
以上、舞妓や舞子、芸者や芸妓、芸子の違いをまとめましたが、いかがでしたか? 京都などでお茶屋遊びを楽しむ際に、最低限知っておくとより楽しみが増すかもしれません。ぜひとも頭に入れておいてくださいね。
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