日本の世界遺産【18】養蚕の技術革新で世界を変えた!群馬県「富岡製糸場と絹産業遺産群」

Posted by: あやみ

掲載日: Dec 6th, 2023

紀元前に中国で発見され、19世紀のヨーロッパで大量生産が始まった絹。かつて絹は一部の特権階級のものでした。しかし、富岡製糸場が設立されたことにより、全国の製糸業が近代化。養蚕の技術革新も起こりました。今回は、そんな群馬県が世界に誇る世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」をクローズアップ。概要や見どころをはじめ、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

群馬県・富岡製糸場内部
 


 

生産量が限られていた高級繊維の絹を身近な存在に変えた「富岡製糸場と絹産業遺産群」

群馬県・富岡製糸場器械
ヨーロッパで絹の大量生産が始まった当時、日本は開国して間もないタイミングで、日本政府は海外と肩を並べるため、産業や科学技術の近代化に努めていました。1872年に、国は日本初の本格的な器械製糸工場「富岡製糸場」を設立。長さ約140mの繰糸所には、300釜の繰糸器が並び、当時としては世界最大規模の製糸工場でした。

そして、近代的な器械製糸の方法を全国各地の製糸業に伝え、良質で安価な生糸を大量生産することに成功。世界に生糸を提供し、世界の絹産業の発展と絹の大衆化を促しました。

絹糸のイメージ
この偉業の達成は、生糸の原料となる良質な繭の増産を支えた養蚕業の技術革新があってこそです。田島弥平は1863年に建てた住居兼蚕室「田島弥平旧宅」で、通風を重視した蚕の飼育法「清涼育」を生み出しました。また、通風と温度管理を調和させた「清温育」という蚕の飼育法を、1883年に高山長五郎が確立。清温育は全国標準の養蚕法となったのです。

さらに1905年から1914年頃に造られたとされる「荒船風穴」では、冷蔵技術を活かし、それまで年に1回だった養蚕を複数回可能にしました。

群馬県・富岡製糸場外観
このように養蚕・製糸業の革新に貢献したことに加え、日本とほかの国々との産業技術の相互交流の好例として評価され、富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴の4カ所は、2014年に世界文化遺産に登録されました。

富岡製糸場と絹産業遺産群の見どころは?

群馬県・富岡製糸場煉瓦造の外観
一度は見ておきたいのが「富岡製糸場」です。西洋と日本の技術を融合して造られた外観と設備には目を見張るものがあります。

建物はフランス人のオーギュスト・バスティアンが図面を引き、日本人の大工や職人によって建てられたもので、主要な建物は木の骨組みに、煉瓦で壁を積み上げて造る「木骨煉瓦造」を採用。屋根は日本瓦で葺くなど、日本と西洋の技術を見事に融合させています。

群馬県・富岡製糸場東置繭所
東置繭所

繭から糸を取る作業が行われていた「繰糸所」、主に繭を貯蔵していた「東置繭所」「西置繭所」のほか、富岡製糸場設立の指導者だったポール・ブリュナの家族が暮らしていたコロニアル様式の「首長館」、ボイラーと蒸気機関が設置されていた「蒸気釜所」といった国宝や重要文化財に指定されている建造物が盛りだくさんです。フランス式繰糸器(復元機)実演や、「社宅76」ではカイコの生態展示も行っています。

群馬県藤岡市「高山社跡」
観光ぐんま写真館提供

また、藤岡市にある「高山社跡」も必見です。養蚕法「清温育」を確立した高山長五郎の生家で、解説員が駐在し、高山社や養蚕の歴史を解説してくれます。温度と換気の微調整を行うために、火鉢を置くボックスが設置されていた2階の蚕室や、母屋兼蚕室と焚屋の奥にある石垣で囲まれた桑貯蔵庫もぜひチェックしてみてくださいね。

群馬県伊勢崎市「田島弥平旧宅」
観光ぐんま写真館提供

伊勢崎市にある田島弥平の旧宅「田島弥平旧宅」も外観のみ見学可能です。窓の多い開放的な構造など、近代養蚕農家の原型になりました。しかし、現在も個人の住宅として居住していますので、見学の際は十分に配慮しましょう。


自然地形を活かした「荒船風穴」も一見の価値ありです。地元の養蚕農家の庭屋静太郎によって造られた、日本で最大規模を誇る蚕種貯蔵施設で、当時と同じ冷風環境が維持されています。特に夏は、その風の冷たさを肌で感じることができる珍しい史跡です。

富岡製糸場、高山社跡、田島弥平旧宅、荒船風穴への行き方

今回、見どころとしてご紹介した4カ所への行き方は下記の通りです。

富岡製糸場

上信電鉄「上州富岡駅」から徒歩約15分

富岡製糸場
住所:群馬県富岡市富岡1-1
電話:0274-67-0075
開場時間:9:00〜17:00(最終入場16:30)
休場日:年末(12月29日から31日まで)
見学料:大人1,000円、高校・大学生250円、小・中学生150円
公式サイト:https://www.tomioka-silk.jp/tomioka-silk-mill/

高山社跡

JR八高線「群馬藤岡駅」から市内循環バス「めぐるん」で約35分、「高山社跡」バス停下車、もしくはタクシーで約20分

高山社跡
住所:群馬県藤岡市高山237
電話:0274-23-5997
見学時間:9:00〜17:00(最終入場16:30)
休館日:年末年始(12月28日から1月4日)
観覧料:大人500円、高校生以下(市外も含む)無料
※母屋兼蚕室の修復・耐震補強のための保存修復工事が行われているため、当日の工事内容によっては見学できない場合があります
公式サイト:https://www.city.fujioka.gunma.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/2/2/1081.html

田島弥平旧宅

JR高崎線「本庄駅」からタクシー約20分

田島弥平旧宅
住所:群馬県伊勢崎市境島村2243
電話:0270-61-5924
開館時間:9:00~16:00
休場日:12月29日~1月3日
見学料:無料
公式サイト:https://gunma-kanko.jp/spots/623

荒船風穴

上信電鉄「下仁田駅」からタクシーで約30分

荒船風穴
住所:群馬県甘楽郡下仁田町南野牧屋敷甲10690-2外
電話:0274-82-5345
開場時間:9:30〜16:00(入場の最終受付は15:30)
冬季閉鎖期間:12月から3月まで
見学料:大人500円、高校生以下無料
公式サイト:https://www.town.shimonita.lg.jp/fuketsu/m01/01.html

無料で工場見学&バイキングを楽しめる「こんにゃくパーク」


こんにゃくの生産が日本一の群馬県! 富岡製糸場を見学するついでに訪れたいのが、車なら約15分で行ける「こんにゃくパーク」です。こんにゃく・白滝ゾーン、ゼリーゾーン、バイキング・おみやげゾーンの3つのゾーンからなり、工場見学とこんにゃくバイキングを楽しめます。

さらに、手作りこんにゃく体験ができるキッチンも。お土産用に、こんにゃく詰め放題、こんにゃくゼリー(日替わり)詰め放題をするのも良さそうですね。群馬の旬の野菜や果物が並ぶフーズマーケットや5つの足湯もありますよ。

こしね汁
出典:農林水産省Webサイト

また、群馬県富岡市の郷土料理のひとつ「こしね汁」は、こんにゃく、しいたけ、ねぎなどの野菜や豆腐、豚肉を使った旨みが詰まった、一度は味わいたい汁物です。栄養価が高く、ヘルシーなため、学校の給食としても提供されています。郷土料理店や割烹料理店などのメニューにあるので、ぜひ味わってみてくださいね。

こんにゃくパーク
住所:群馬県甘楽郡甘楽町小幡204-1
電話:0274-60-4100
営業時間:平日9:00~17:30(最終受付17:00)、土日祝9:00~18:00(最終受付17:30)
休園日:詳しくはこちらをご覧ください。
入園料:無料
交通アクセス:上信電鉄「上州富岡駅」から車で約15分
公式サイト:https://konnyaku-park.com/

[参考]
観光ぐんま
藤岡市
下仁田町

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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