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シャンバラ伝説とは?
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シャンバラは、インドの北にあるシタ川の北、ヒマラヤ地域にあるとされています。そこにはカーラチャクラ(最高レベルのヨーガタントラ)を信仰するカラパという聖都があり、立派な宮殿のほか、7人の法王と25人の王が存在するそうです。
そして、やがて起こる最終戦争にこの聖都は勝利し、世界に永遠の黄金時代が訪れるといいます。
『西蔵大蔵経(ちべっとだいぞうきょう)』のなかには、入滅する前の、釈迦(ゴータマ・シッダールタ)が、シャンバラの帝王シューチャンドラにカーラチャクラを伝授した経緯が記された経典も存在するとか。
またシャンバラは、イギリスの小説家であるジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に描かれているチベット山中の理想郷「シャングリラ(Shangri-La)」のモデルにもなっています。
シャンバラはどんな場所?
仏教をはじめヒンドゥー教やボン教といった宗教や哲学的な伝統のなかで息づくシャンバラ。ここには、現在の人工知能をはるかに上回る高度に発展した霊的な知識や智慧(ちえ)が蓄積されており、永遠の平和と幸福が実現すると信じられているそうです。
チベットの理想郷伝説は2つある
ノンフィクション作家・探検家の角幡唯介氏の著書『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』によると、チベットの理想郷伝説は2つあり、ひとつはチベット仏教の経典にあるシャングリラ(シャンバラ)といわれる理想郷の伝説、もうひとつはチベットやヒマラヤの山中の深い谷に封印されたという理想郷「ベユル・ペコマ」の伝説だそうです。
なお、べユルは”隠された場所”という意味で、8世紀にインドからチベットにやってきた偉大なヨガ行者・パドマサンババが開き、封印した聖地のこと。
「ベユル・ペコマ」はどこにあるのか?
パドマサンババは、チベット密教の経典や仏像、宝物などをチベットやネパール、インドの洞窟、岩穴、湖、寺院といった場所に隠し、封印したといいます。これらは「テルマ」と呼ばれ、しかるべき時代に、テルトンという聖人が啓示を受けることによって、発掘されると伝えられているそうです。
その「テルマ」のひとつが、世界最大の峡谷「ヤル・ツアンポー峡谷」のどこかにあるのではないか、といわれており、それが「ベユル・ペコマ」、つまりシャンバラへつながるカギになるとか。
7,000m級の山々に囲まれた世界最大の峡谷「ヤル・ツアンポー峡谷」の洞窟
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ノンフィクション作家・探検家の角幡唯介氏は、「ヤル・ツアンポー峡谷」を訪れ、人跡未踏といわれる5マイルに到達。そして、ヤル・ツアンポー川を挟んだ対岸の岩壁にある大きな洞窟を発見しました。
その洞窟は川の側壁をくり抜くようにできており、上に広がる台地からは確認できず、対岸からしか見ることができないそうです。
角幡氏は、その洞窟を発見した際、「ベユル・ペコマ」ではないか? と思ったといいます。
そのため、その洞窟に行ってみることにしたのですが……。
結論からいうと、大発見のニュースが流れなかったことがすべてです。しかし、その洞窟へ向かう途中で、おそらく現地に住む人以外、誰も発見していない2段の滝や、白い石灰岩の岩壁が屏風のように連なる神秘的な場所を見つけたりしました。
サラッと書きましたが、「ヤル・ツアンポー峡谷」の探検は超過酷! ヤル・ツアンポー川は水量が多く激流で、峡谷エリアは日が当たらないため、ジメジメとしていて、地面も滑りやすく、ヒルやダニ、毒蛇が生息しているとか。
気になる方は、ぜひ『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』を読んでみてくださいね。十分な体力・気力はもちろん、登山・クライミングの高度な技術がないと、到底到達できない秘境の中の秘境だとわかりますよ。
そんな場所にある洞窟だからこそ、リアリストの角幡氏も「ベユル・ペコマなのでは?」と胸を躍らせたのでしょう。
シャンバラは悟りの境地のことかもしれない
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そのほか、シャンバラは崑崙山脈(こんろんさんみゃく)やゴビ砂漠、チベットの地下深くにあるという説もあります。
しかし個人的には、シャンバラもまた般若心経の「色即是空・空即是色」であり、何年も修行を積んだラマ(僧侶)にしか決して辿り着くことができない悟りの境地のような気がします。
[参考文献]
空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む|著者:角幡唯介
[参考サイト]
カーラチャクラの教えを通してみる近代のチベット密教|真言宗智山派 総本山智積院
聖地シャンバラ伝説 | 高野山大師教会光寿支部
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