えっ、空が割れちゃった!?
これからの季節に夕暮れ空を見ると、放射状に空の色が変わっていることがあります。
地平線のあたりで光のイリュージョンでもやっているのか!? と思ってしまうような不思議な風景ですね。これは「天割れ」という気象現象で、「後光」などの別名もあります。
一体どんな仕組みでこんな現象が起こるのでしょうか。
正体は、入道雲(積乱雲や雄大積雲)の影です。孤立した入道雲が西の地平線上にあると、その影が大気中の小さな水滴やホコリなどによって散乱されて、光の筋になるのです。
よ~く見ると、地平線にモコモコっと小さく見える入道雲がありますよね。こんなに小さいのに、影なんてできるの? と疑問に思うかもしれません。しかし、入道雲は高さ1万5000m近くに達することもあるので、ものすごく小さく見える遠くの入道雲でも影は空にしっかりと残るのです。
ちなみに、天割れが見られるのは、基本的には日没時の西の空です。しかし、大気中に水蒸気が多いと、日没時の東の空でも確認できます。
沖縄の八重山地方では、昔から天割れのことを「風の根」と呼び、大風の兆しだとされてきました。天割れのなかでも反対側の地平線にまで達したものは「天女の帯」と呼ばれ、猛烈な台風が現れる兆しとして恐れられてきたそうです。
天気は西から変化するので、西に積乱雲や積乱雲の集合体である台風があり、大気中に水蒸気が多ければ、後で天気が大荒れになることは確かです。昔から言い伝えられている天気に関することわざは、実は天気のメカニズムと照らし合わせると、的を射たものが多いものですね。
[気象予報士・伊藤譲司のオモシロ天気塾]
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