東京タワー、エッフェル塔、エンパイア・ステート・ビルディング etc・・・
ここぞという街にはシンボルとなるような塔が立っているもの。そして、塔があるなら上ってみたい、そう思う人は少なくないはず。観光で訪れた街で、その街のシンボルとなる高い塔に上るのは、思い出にもなりますし、何より高いところからその街を一望するのは、その街をよく知るひとつの手段でもあります。
そして高い塔に上ることは、視点を変えることであり、違う視点を体験することこその旅の楽しさ。上から眺めてみればよくわかるその町の景色・・・というわけで、「高い塔からの眺め」を観測地点として、町を紹介したいと思います。

今回は、日本でもおなじみ「スパゲッティ・ボロネーゼ」の故郷、ボローニャを、町のシンボルの塔の上からご紹介します。
ボローニャという町
ローマ、ミラノ、ベネチア、イタリアの3大有名都市に隠れて、日本ではあまり知られていませんが、ボローニャは、この3大都市の中間地点にあり、イタリアの基幹道路、鉄道が交差する重要な町です。その歴史も古く、紀元前9世紀頃にまでさかのぼることができ、ヴィッラノーヴァ文化という独自の文化を持っていました。
周辺は豊かな穀倉地帯で、畜産も盛ん。交通の要衝である町は、その農産物の集散地として発展しました。盛んな交易で経済的に豊かであったボローニャは、芸術文化でも様々な功績を残しており、世界最古の大学ができたのもボローニャ、そして各時代の様々な美術品も多く保存されています。美術品だけでなく、中世の美しい町並みも大切に保存されており、レンガ色の町並みは必見です。

こちらは時計塔が美しいボローニャの市庁舎。中世、教皇代理使節の居館として使われていた建物です。

こちらはボローニャのドゥオーモ、サン・ペトロニオ聖堂。14世紀に建築が開始され、今も未完のままですが、その大きさと、所蔵されている美術品から、イタリアでも重要な教会のひとつに挙げられています。

そして、町のシンボル、ボローニャのツイン・タワー。2本並んで並ぶ塔は12世紀のもの。中世、より高い塔を建てることが権力の象徴だった頃、その当時の勢力を2分していた、皇帝派と教皇派との争いの中で、皇帝派の貴族がその権力を示すために建てました。
レンガ色に染まる芸術の町、塔から見たボローニャ
ボローニャのシンボル、ツイン・タワー、低い方の塔は傾斜が進んでしまったため、今は閉鎖されていますが、ピサの斜塔ならぬ、ボローニャの斜塔としてこちらも観光名所。高い方、アシッネリの塔には上ることができ、美しいボローニャの町並みを一望できるとあって人気の観光名所です。

さっそく、アシッネリの塔に上ってみましょう。

アシッネリの塔は97mのレンガ造りの塔。外から見れば美しい塔ですが、中に入って間近に見ると、本当にレンガを重ねて造った筒状の塔ということが分かり、それが100m近い高さで、しかも900年も立っているのが驚きと、少しの恐怖とともに実感されます。人がすれ違えないほど狭い木の階段は、たくさんの人が歩いたためすり減り、なんだか心もとない感じ。498段のこの階段を上りきって見える景色はこちら。

暖かなレンガ色に染まった町、とても美しいですね。建物晴れた日には遠くアルプス山脈も望めるそうです。

大きな町、大きな教会に美しい建物、広場とまっすぐに伸びた広い道、これが中世に造られたものだというのだから、この町がどれだけの経済力を持ち、文化芸術を発展させてきたか、そしてそれをこの町の人々がどれだけ大切に守ってきたかが、こうやって上から眺めてみるとよく見えてきます。
観光旅行に出かけたら、どの有名スポットをまわった、で満足してしまいがちですが、こうやって高いところからその町をよく眺めてみると、その町の成り立ち、色がよく見えて、ただ観光名所の前で記念写真を撮るだけよりもその町を感じることができ、より心に残る旅が出来るのではと思います。
まずはあなたの近くの塔からのぼって、小さな旅に出てみませんか? もしかしたら今まで見えていなかったことが見えてくるかもしれません。
[Photos by Ryoko Fujihara & Shutterstock.com]
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Ryoko Fujihara フォトグラファー&ライター
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、’09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、イタリアで撮影・執筆活動をしつつ、更なる美しい景色を求めてカメラ片手に旅を続けている。
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