アートと交通の融合──「アート・ステーション」プロジェクトとは?
ナポリの地下鉄1号線・6号線で、2001年から始まった「Stazioni dell’Arte(アート・ステーション)」という都市再生プロジェクト。
このプロジェクトには、世界中の著名なアーティストや建築家たちが参加しており、駅そのものを一つの芸術作品として捉え、設計・装飾しているのが特徴です。
アート・ステーションの目的は、公共空間を通じて市民の生活に芸術を取り入れること。また、観光客にとっては思いがけない“展示空間”との出会いとなり、街の魅力を多層的に体験できる場となっています。
注目のアート駅を巡る~各駅停車で巡る~
トレド駅(Toledo)
ナポリのアート駅の中でも圧倒的な人気を誇るのが、トレド駅。2012年、英紙『デイリー・テレグラフ』により「世界で最も美しい駅」と称されたこの駅は、青を基調とした幻想的な空間が広がります。
設計を手がけたのはスペインの建築家Oscar Tusquets(オスカー・トゥスケッツ)。特に目を引くのが、吹き抜けの天井から広がる「光のクレーター」です。ブルーのタイルが光に照らされ、まるで深海のような静けさと神秘的な雰囲気を醸し出します。
この駅が1番派手で美しく、多くの観光客がエスカレーターの前で撮影。筆者のおすすめはエスカレーター正面もですが、少し斜めから撮影してもおしゃれに見えます。銀河に吸い込まれたような美しさもあり、ずっと上を向いていたい気持ちになります。
ウニヴェルシタ駅(Università)
その名の通り大学エリアに位置するウニヴェルシタ駅は、ポップで鮮やかな色使いが特徴。情報社会や言語、知識といったテーマを扱っており、ネオンカラーのインスタレーションや彫刻が未来的な雰囲気を演出します。
ベネズエラのアーティスト、Carlos Cruz-Diez(カルロス・クルス・ディエス)の作品が通路や壁を彩り、アートとテクノロジーの融合を体感できる空間です。
エスカレーターの方向によってピンクと青で色味が違うので、両方ぜひ写真を撮ってみては?
改札階では黄色をテーマにし、天井の照明の模様が特徴的。
ダンテ駅(Dante)
ナポリの文化的中心部に位置するダンテ駅では、古典と現代が交差するエリア。イタリア文学の父・ダンテにちなんだ名前を持ち、落ち着いた色合いの中に、現代アーティストの作品が控えめに配置されています。
エスカレーターの踊り場には鋳鉄に靴や古着をはさんだものが。これもアート! Jannis Kounellis(ヤニス・クネリス)の作品です。
これは、イタリアの中世の詩人ダンテの作品から引用した文章を使ったダンテ駅の電光アート。駅を抜けた地上にはダンテ像があり、地上と地下で一貫した文化的体験ができるのも面白いポイントです。
ナポリ地下鉄1号線ダンテ駅の壁面アート・Nicola De Maria(ニコラ・デ・マリア)の作品
ムゼオ駅(Museo)
国立考古学博物館に隣接するムゼオ駅は、その名の通り「博物館的」な展示を楽しめる空間です。駅の構内には古代ローマの遺物が展示されており、ナポリの古代史と現代都市の融合が感じられるユニークな駅となっています。
地下鉄を旅するという楽しみ方
ナポリ観光では、地上の名所だけでなく「駅巡り」も一つのテーマになります。さらに1日乗車券を利用すれば、複数のアート駅を気軽に巡ることができ、写真撮影にもぴったり。朝の比較的人が少ない時間帯や、通勤客のいない昼間に訪れると、より一層アートの魅力を堪能できるかも? ぜひ訪れた際は乗車をおすすめします!