芸術家をも魅了した壮麗なる広場
ベルギーの首都・ブリュッセルにある世界遺産の広場、グランプラス。フランスの詩人、ジャン・コクトーが「豊穣なる劇場」、そして文豪ヴィクトル・ユゴーが「世界で最も豪華な広場」と称賛したことでも有名です。

中世の面影が色濃く残る石畳の細い路地を通り抜けると待っているのが、縦約110メートル、横約70メートルの石畳の広場。その美しさを目の当たりにすると、ヴィクトル・ユゴーをして「世界で最も豪華な広場」と言わしめたことが納得できるはずです。

車などの往来もない守られた空間に歴史的建造物がぎゅっとつまった広場はまさに芸術。あまりの壮麗さに、時間を忘れていつまでも眺めていたくなります。
ブリュッセルの歴史

ヨーロッパの交通の要衝であるブリュッセルが発展し始めたのは10世紀頃で、その繁栄を支えていたのが「ギルド」と呼ばれる職業別の組合組織でした。12~13世紀には市庁舎ができ、その周辺にギルドが集結しました。現在残っているグランプラス周辺の建物は、ギルドの組合員たちが集まる「ギルドハウス」だったものです。

15世紀以降、ブリュッセルはハプスブルク家やオランダの領地となったり、フランスの一部になったりと、混迷の時代を迎えます。1695年のフランス王ルイ14世による侵略では、市庁舎以外のほぼすべての建物が焼失しましたが、街は再建され、ギルドハウスは二度と燃えないよう石で造られるようになりました。
その後も宗主国は入れ替わりましたが、1830年のベルギー独立によりブリュッセルは晴れてベルギーの首都となったのです。
グランプラスの楽しみ方

グランプラスは11の建物に囲まれており、屋根や欄干に並ぶ彫刻や銅像の数々が、訪れる人の目を楽しませてくれます。ぜひじっくりと細部まで味わってください。

市庁舎

1421年に建てられたゴシック建築の傑作で、中央の塔の高さは96メートルにもおよびます。先端の像はブリュッセルの守護聖人・大天使ミカエルがドラゴンを倒す場面を描いたもの。フランス軍の攻撃にも持ちこたえ、17世紀以前の姿をとどめるほぼ唯一の建築物でもあり、ガイドツアーで中を見学することができます。
王の家

16世紀にスペイン王カール5世の命で造られたためにその名がつけられました。19世紀後半にはネオ・ゴシック様式に改築され、現在は一部が市立博物館として公開されています。日本を含め世界の国々から贈られた、ブリュッセル名物・小便小僧のユニークな衣装コレクションも展示されています。
黄金の木

ビール醸造所のギルドが造ったギルドハウスで、現在は一部がビール博物館として公開されています。18世紀のビール醸造器具や最新のハイテク醸造法の紹介があり、入場料にはビールの試飲が含まれています。
グランプラスにあるカフェで本場のベルギーワッフルを味わってみるのはいかがでしょう。世界遺産の広場の景色を眺めながらのカフェタイムは最高に贅沢なひとときです。

夜になるとライトアップされ、その美しさはまた格別。昼夜それぞに異なる表情を存分に味わいたいものです。

[All About ブリュッセルのグランプラス]
[ベルギー観光局ワロン・ブリュッセル]
[All photos by Shutterstock.com]
Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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