ベルギー出身フォトグラファーのパスカルさん(Pascal Mannaerts)は、10年以上も世界中を旅しながら目を見張るような写真を撮り続けています。イギリスBBCをはじめとした様々な海外メディアも、彼の画像をたびたび取り上げているのだとか。そんな彼が、10年以上のキャリアの中でも「とりわけ素晴らしいと思う15枚」の画像をセレクトしました。
そのどれもが胸をつかむような力強さにあふれているので、ぜひご紹介したいと思います。
ミャンマーのウーベイン橋
(c) Pascal Mannaerts
ミャンマーの都市マンダレー(Mandalay)郊外にある、「ウーベイン橋」(U-Bein Bridge)を写した一枚。なんと全長は1.2キロメートルもあり、世界最長の木造橋なのだとか。もともと高さが3メートルもあるのですが、このパスカルさんの一枚では鏡のような湖面に橋と通行人が写りこんでとても幻想的ですね。どこまでが現実で、どこからが湖面なのかとっさに判断ができません。その神秘的な自然の静かさと、通行人の醸し出す躍動感の対比が見事です。
スリランカの竹馬漁
(c) Pascal Mannaerts
インド隣国スリランカの伝統漁の光景も、パスカルさんにとって思い出深い一枚だったようです。これは「竹馬漁」(Stilt fishing)と呼ばれ、海の中に突き立てた棒に乗りながら魚を釣る漁法です。ただし釣り糸に餌はつけていないので、大量には釣れないのだとか。なんとも大らかな漁法で、環境との調和を感じさせます。このパスカルさんの写真からも、漁師たちのおおらかさがにじみ出ていますね。
イランのモスクに佇む女性
(c) Pascal Mannaerts
ユーラシア大陸の西の果て、イランではこんな神秘的な一枚が選ばれました。イランは多くの美しいモスク(イスラム教の寺院)が存在することで知られていますが、その中でも傑作と名高いシェイク・ロトフォラー・モスク(Sheikh Lotfollah Mosque)で撮影されています。まるで宇宙を思わせるような青と金色の絢爛豪華なタイルに、シンプルな白い衣を纏った女性がよく映えます。
モロッコの青い旧市街
(c) Pascal Mannaerts
「【青い街】街全体がアート!涼しさを感じるモロッコの「シャウエン」」でもご紹介したモロッコのシェフシャウエン(Chefchaouen)という街は、家の壁や道が全て青で彩られた美しい街。一説によると、かつてスペインから追われたユダヤ人たちが、ユダヤ教の聖なる色である青を街づくりの際に多用したからだと言われています。その謎はしっかりと解明されてはいませんが、旅人を魅了してやまないことは確かです。
エチオピアの少女とターコイズの壁
(c) Pascal Mannaerts
アフリカのエチオピアには、ハラール(Harar)という鮮やかなターコイズカラーの街並みが。太陽の光とターコイズの壁の中に佇む少女の赤いスカートは、彼女の命の炎を思わせます。まるで絵画のような一枚ですね。
モンゴルのトナカイ遊牧民との邂逅
(c) Pascal Mannaerts
パスカルさんにとって、2014年6月のモンゴルでの経験は忘れらないものになりました。モンゴル最北端の森林地帯に住むツァータン民族と出会った彼は、人里から遠く離れて住むこのトナカイ遊牧民の生活に感銘を受けたようです。
確かに、この画像を見るだけでも、周囲は何も無い平原。しかもモンゴル最北端ということは、寒さが厳しいことも想像に難くありません。それでもそこに住む人々にその理由を訊いてみたくなります。
伏見稲荷神社の鳥居
(c) Pascal Mannaerts
パスカルさんは、日本にもいらっしゃっていたようですね。京都の伏見稲荷神社の鳥居は、日本人の筆者が見ても吸い込まれそうな力を感じます。まるで迷宮に迷い込んだかのように、出口を求めてしまいそうです。
極彩色のインドの聖祭「Holi」
(c) Pascal Mannaerts
(c) Pascal Mannaerts
例年3月ごろにインド各地で開催される聖祭「ホーリー」(Holi)は、冬の終わりを告げ、新しい人生の始まりを祝うためのフェスティバルです。そんな生命の喜びを象徴するように、人々は様々な色彩のスパイスを撒きあうのです。パスカルさんもその魅力にひかれ、何度もこのお祭りに参加しているのだとか。確かに、この世のものとは思えない鮮やかな写真を見ると、その虜になってしまうのも分かる気がします。
「Holi」の沐浴
(c) Pascal Mannaerts
そしてこちらは、同じく「Holi」期間中の一枚。男性たちが沐浴をすると、水が真っ赤に染まっています。どこを写しても印象的なイベントですね。
ボリビアの廃機関車
(c) Pascal Mannaerts
パスカルさんは、鏡のような塩湖が有名なボリビアのウユニで、人々から忘れ去られた古い機関車に出会いました。空にたなびく雲が、まるで機関車の煙突から流れ出ているようにも見えます。この機関車は、夢の中で今でも走り続けているのかもしれませんね。
ゴビ砂漠での夜明け
(c) Pascal Mannaerts
ゴビ砂漠は、中国の内モンゴル自治区からモンゴルにかけて広がる世界で4番目に広い砂漠。そんな広大な砂漠の地平線から昇る太陽は、まるで空を焼き上げているようにも見えます。人間の力の及ばない、自然の雄大さを見せつけられますね。
チベットの僧侶たちの午後
(c) Pascal Mannaerts
チベットの首都ラサにある、チベット仏教の「ジョカン寺」(Jokhang Temple)で撮影された一枚。パスカルさん曰く、若い僧侶たちは午後になるとチベット仏教の教義に関して思い思いの議論を重ねるのだとか。筆者はこの写真を見て、惑星たちが自転と公転を繰り返しながら宇宙に浮かんでいるようだと感じました。シンプルなのに、不思議な躍動と神秘性を感じさせる写真ですね。
謎の遺跡「マチュピチュ」
(c) Pascal Mannaerts
標高2340mの山の頂上に位置する「マチュピチュ」(Machu Picchu)は、15世紀に建造されたインカ帝国の遺跡だと言われています。何のために作られたのか、誰が住んでいたのかなど解明されていない謎がまだ多く残されているのだとか。このパスカルさんの画像からも、まるで雲が遺跡を隠してしまいそうな危うさを感じます。地上の覇者のような現代人にも、まだ分からないことは多いんですね。
「バラナシ」の老婦人のまなざし
(c) Pascal Mannaerts
ガンジス川沿いにあるインド北部の街「バラナシ」(Varanasi)は、「聖地」と呼ばれています。インドのヒンドゥー教徒は「バラナシのガンジス川近くで亡くなった人は、輪廻転生の苦しみから解放される」と信じているのだとか。そのため、バラナシには毎日インド各地から遺体が運び込まれたり、死を目前に控えた人々が「最期の地」として訪れるそう。
この写真はそのバラナシで撮影された一枚ですが、そんな死の色が濃い街とは思えない鮮やかさですね。しかし、中央に座る老婦人の射るようなまなざしは、この街が「聖地」と呼ばれる理由を思い出させる厳しさを含んでいます。
現地の状況が気になる方は「【現地ルポ】これがインドの日常。バラナシ・ガンジス川でお祈りの儀式」も合わせてどうぞ。
旅するフォトグラファー、パスカルさんの選ぶご自身の15枚の画像、いかがでしたでしょうか。すべての写真が日常を超越していましたが、そこには人間の歴史や自然の営み、生命の息吹を感じました。これからもパスカルさんには、世界中から素晴らしい画像を届けてほしいですね。
[I Spent 10 Years Traveling Around The World Photographing Breathtaking Places, Here Are My Best Shots]
[Photos by Shutterstock.com]