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すでに1万枚を超えた、NY市民の揺れる想いを綴る「地下鉄セラピー」【現地ルポ】

Posted by: 青山 沙羅
掲載日: Nov 23rd, 2016. 更新日: Jan 12th, 2017
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全世界を揺るがした2016年米大統領選。 ニューヨーカーも、まさかの結果に不安が隠せません。二人の候補者のうち選ばれたのは、「人種差別主義」「不法移民は送還」「女性蔑視」「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)批判」「イスラム教徒は入国禁止」など数々の暴言で悪評高いトランプ氏。

多くの人種、移民(不法滞在を含め)、LGBTが多く集まるニューヨークではクリントン氏支持が8割近くだったため、「アメリカはこの先一体どうなるのか? 自分の立場は? 生活は?」と皆が動揺しています。


選挙結果に動揺するニューヨーカー

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Sara Aoyama

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)prtimes

ニューヨークのアーティストMatthew Chavez氏が、ユニオンスクエア地下鉄構内通路にテーブルとポストイットを用意し、気持ちを共有しようというアクションを起こしました。
それぞれの思いを小さなポストイットに託し、動揺を宥める趣旨の「地下鉄セラピー(Subway Therapy)」。

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Hideyuki Tatebayashi

ニューヨーカーが抱える不安や正直な気持ちを、ポストイットに綴り、貼り残していきます。

NYCではトランプ氏経営のホテルやコンドミニアムなど商業施設も多く、住居のトランプタワーを目指してアンチ・デモが行われました。大統領選で選出された候補に対しての、これほどのアレルギー反応が今まであったのでしょうか。トランプの名称が残っていた高級アパート(現在の所有者はトランプ氏ではない)からは、危険を感じた住民の希望により、トランプ名が取り払われたほどです。

ポストイットに思いをはき出す「地下鉄セラピー」

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Sara Aoyama

メッセージには、「あなたも悲しいけど、私も悲しい」「私の信ずる大統領じゃない」「こんな結果になってどうして良いか分からない」「彼には同調できない」「同性愛であることに誇りを持とう」のほか、過激なアンチ・トランプのメッセージも多く見られました。

クリントン氏を支持していたレディ・ガガは、選挙翌朝トランプタワーの前にゴミ収取車で乗りつけ、「Love Trumps Hate(愛は憎しみに打ち勝つ)」のプラカードを掲げました。

トランプがすでに築いた壁

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Hideyuki Tatebayashi

選挙後、「白人至上主義になるのか」「戦争が始まるのでは」「自国で徴兵制が行われることになったら」「強制収容所に入れられたら」と全世界の人々の心に暗雲が立ち込めました。「メキシコ移民が入国しないため壁を作る。費用はメキシコ持ち」とBuild the Wall(壁を打ちたてろ)論をはじめとする暴言は、人々に恐怖心や憎悪を感じさせ、心を隔てる壁を築いたのです。

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Sara Aoyama

皆の思いを綴った色鮮やかなポストイットは、カラフルなモザイク模様で地下鉄通路の壁を覆いました。ニューヨークらしい光景です。

ポストイットの数はすでに1万枚を越したそうです。

米大統領選トランプ選出で揺れるNY市民の心を癒す「地下鉄セラピー」
(C)Sara Aoyama

否定的な心境だけでなく、懸命に前を向こうとするものも多く見られました。

恐怖を感じて閉じこもるのではなく、気持ちを共有しよう。
混乱しているのは、あなただけではない。

憎しみや恐怖からは、解決は生まれない。
こんな時だから、皆で助け合おう。
自分の生き方に、自信を持とう、と。

NY州知事が伝えること

NY州アンドリュー・クオモ知事も、「地下鉄セラピー」を訪れました。州知事が残したメッセージは、世界遺産「自由の女神」に刻まれた、心に残る名詩でもご紹介した、自由の女神の台座に書かれている詩から数行引用したものでした。

Give me your tired,
your poor,
Your huddled masses yearning to breathe free,

I lift my lamp beside the golden door!

疲れ果て、
貧しさにあえぎ、
自由の息吹を求める群衆を、
私に与えたまえ。

私は希望の灯を掲げて照らそう、
自由の国はここなのだと。

エマ・ラザラス(意訳 青山沙羅)

揺れるアメリカで、ニューヨーカーは心底怒りと恐怖を感じていますが、憎しみで返すのではなく、希望の灯を見出そうとしています。

クオモ知事は、11月12日付けフェイスブックで、呼びかけています。

The state of New York has a proud legacy as the progressive capital of the nation, and that is more important today than ever before.
As New Yorkers, we have fundamentally different philosophies than what Donald Trump laid out in his campaign.

So let me be absolutely clear: If anyone feels that they are under attack, I want them to know that the state of New York – the state that has the Statue of Liberty in its harbor – is their refuge.
Whether you are gay or straight, Muslim or Christian, rich or poor, black or white or brown, we respect all people in the state of New York.
It’s the very core of what we believe and who we are. But it’s not just what we say, we passed laws that reflect it, and we will continue to do so, no matter what happens nationally. We won’t allow a federal government that attacks immigrants to do so in our state.

We are a state of immigrants.
We are the state that raised the minimum wage to $15.
We are the state that passed Paid Family Leave.
We are the state that passed marriage equality.
We are New York, and we will stand up for you.
And on that, I will never compromise.
Count on it.

ニューヨーク州は、国家の進歩的な首都として誇れる実績があります。
今日においては、今まで以上にそれが重要なことなのです。
ニューヨーカーは、ドナルド・トランプがキャンペーンで展開した政策とは根本的に異なる哲学を持っています。

ここで、はっきりさせておきましょう。
もし誰かが攻撃を受けていると感じたら、自由の女神が港に立つニューヨーク州こそが避難所であることを知っておいて欲しいのです。
同性愛者であれ、異性愛者であれ、イスラム教徒であれ、クリスチャンであれ、貧しいものも富めるものも、黒人(アフリカ系)であれ、白人であれ、浅黒い肌(中南米系)であれ、私たちはニューヨーク州すべての人々を尊重します。
それが、私たちの信念、存在価値の根本なのですから。けれど、それだけではなく、私たちは反映する法律を可決し、国で何が起こっても継続し続けるでしょう。私たちの州で移民が攻撃されることを、連邦政府に許しません。

私たちは、移民の州です。
私たちは、最低賃金を15ドルに引き上げた州です。
私たちは、有給の家族休暇(新生児や重病の家族の世話による休職時の支給手当)を通過させた州です。
私たちは、同性婚を認めた州です。

私たちはニューヨークゆえ、あなたのために立ち上がるでしょう。
そして決して妥協はしません。
任せておいてください。

2016年11月12日 ニューヨーク州知事 アンドリュー・クオモ(意訳 青山沙羅)

この言葉こそ、私たちニューヨーカーが今待ち望んでいた言葉だったのです。

[Photos by Hideyuki Tatebayashi & Sara Aoyama]
※無断で画像を転載・使用することを固くお断りします。Do not use images without permission.

青山 沙羅

sara-aoyama ライター
はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。


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