国際結婚をしていると、「日本人同士ならありえないんじゃないかなあ」とため息をつきたくなるような夫婦ゲンカに発展することがしばしばあります。
もちろん「国際結婚」とひと括りにはできませんし、アメリカ人の夫と日本人妻の例が中心になりますが、国際結婚カップルの間で「あるある」とネタになるケンカの理由をお伝えします。
1、味付け問題
私たち日本人が愛する和食の風味、残念ながらアメリカ人の舌には物足りないそうです。まるで離乳食のように味気ない、と。
それを言うなら、ドレッシングの味しかしないアメリカのサラダ、胸焼けするほど甘いドーナッツなんて食べられたもんじゃないわと日本人は思うのですが、ともかく圧倒的に食文化が違います。
そのため、家で料理を作ると「味付けが足りない」あるいは「味が濃すぎる」と揉めることがあります。日本人妻がていねいに作った料理にアメリカ人旦那がシャワーのようにタバスコをかけ、妻を悲しませることもあります。ケンカを避けるため、別々に料理を作っているお家もあります。
2、ごはん粒問題
食文化の違いは、味付けだけではありません。食べ方にも大きな違いが潜んでいます。
日本人のみなさんは、「お米ひと粒には7人の神様が宿っているから、ひと粒も残してはいけない」「お米を残すと目がつぶれるぞ」と教えられたことがありませんか。日本人が食べ物の中でもとりわけお米を大切にしてきた証拠でしょう。白いごはんが毎日食べられるようになったのは、長い日本の歴史の中ではごく最近のことですもんね。
「ごはんは残さず」の教えが体に染みついている日本人には、ごはん粒をべたべた食器に残して捨てるアメリカ人の態度が許せません。海外ではおいしいお米が手に入りにくいから、ひと粒も残したくないという現実的な理由もあります。
そのため「お残しは許しませんよ!」という日本人と、「日本人のモッタイナイ根性は度が過ぎる」というアメリカ人の間では、しばしばケンカが起きます。
3、冷暖房問題
西洋人とアジア人は、体感温度が違うのでしょう。日本人が「今日は肌寒いな」と思う日でも、アメリカ人は「暑い暑い」と冷房をガンガンかけます。そのため、エアコンの設定温度はいつ何時も議論の的です。
アメリカでは、夫婦はひとつのベッドで1枚の毛布を共有することが多いので、毛布の厚さでもケンカが起きます。日本人が「もう秋だから厚手の毛布にしよう」といっても、アメリカ人は「まだ暑い」と聞きません。日本のようにひとり一組ふとんが敷けたらどんなに楽か。
冬は冬で、暖房を猛烈にかけてきます。本人はTシャツ1枚しか着ていないのに。「そんなに寒いなら服を着れば」と言うと、「家じゅうを春のようにぽかぽかにして、Tシャツだけで過ごすのが文化的生活だ」と言い返されます。アメリカの家は気密性が高くセントラルヒーティングや暖炉が完備されているので、そんなに電気代はかかりません。でも同じことを日本でされると困ります。
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4、朝シャン問題
アメリカ人の多くは、朝にシャワーを浴びます。夜は浴びません。1日外でいろいろな場所に触れてきた体を、清潔なベッドに横たえるのです。
日本人は「ベッドに入るなら着替えてからにして!」と責め、アメリカ人は「疲れて帰ってきたんだから少しはゆっくりさせてくれよ!」と応戦します。
ちなみに「シャワーは夜に浴びてくれ」リクエストは、とうの昔に諦めています。
5、手続き問題
国際結婚をすると、夫婦のどちらか(またはふたりとも)は必然的に外国で暮らすことになります。外国に暮らすほうは、外国人ビザの申請・更新に始まり、銀行口座の開設やら健康保険への加入やらピザのオーダーやら(笑)、異国のややこしい手続きを外国語でこなさなければなりません。非常にストレスが溜まります。
結局、日本に住んでいるなら日本人が、アメリカに住んでいるならアメリカ人がその手続きを一手に引き受けることになります。そのほうが正確で手っ取り早いですからね。
ただ、手続きを引き受けた側はどうしても「なんで自分ばっかり」と思い、任せている側は「自分は無力だ」と思って精神的にイライラが募り、結果ケンカになってしまうことがあります。
6、おもてなし問題
アメリカ人は、友人知人をほいほい気軽に自宅へ招きます。いわく、「リビングは半公共的なスペースだから」。「誰でも気軽に出入りできるものだし、モデルルームのように完璧に整えられている必要もない」そうですが、日本人としては「掃除しなくちゃ」「見られてまずいものは隠さなくちゃ」と慌てます。
「ちょっと友だちに会いに行こう」と突然友人のお宅へ向かったり、「近くまで来たから」と勤務先へ連れていかれることもあります。
付き合い始めの段階なら、友人知人に会わせて出方を伺うという目的もあるでしょう。でも、結婚後にまでそんな抜き打ち検査はいりません。
「人が来るなら言ってよ! 料理作っておいたのに!」という日本人と、「そんなに見栄張ってもてなさなくてもいいんだよ!」というアメリカ人。なかなか相容れることがありません。
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7、ピーナッツバター問題
ピーナッツバターといっても、砂糖がたっぷり含まれている甘~いピーナッツクリームではありません。SKIPPY(スキッピー)のようにほとんどがピーナッツでできているバターのことです。
アメリカではピーナッツバターは、良質のたんぱく源として食事に使われています。セロリにピーナッツバターを添えた一品は、子どもがよく食べる“健康おやつ”。パンにピーナッツバターとジャムをぬったピーナッツバターとジェリーのサンドイッチ(略してPB&J)は、たんぱく質が手軽にとれる“食事”としてアメリカ人に愛されています。
しかし日本人には、あのデザートのようにねっとりと濃厚な固まりが食事だなんて、どうしても受け入れられないのです。「バナナはおやつか否か」議論に次ぐ大テーマとして、「ピーナッツバターは食事か否か」問題は今日も世界のどこかで論争を巻き起こしています。
とまあ、夫婦ゲンカのネタは尽きないのですが、このあたりでおしまいにさせていただきます。
「日本人夫婦でもそう!」という共感、あるいは「うちはまだマシ」という安堵、はたまた「国際結婚って大変だと思ってたけど、これくらいのケンカならへっちゃら」という希望、何かしらを感じていただければうれしいです。
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