【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験ルポ

Posted by: 青山 沙羅

掲載日: Jan 28th, 2017

昔、米シカゴを舞台にした「ER 緊急救命室」 というテレビドラマがありましたが、あなたはご存知でしょうか? 筆者は大ファンで、テーマソングを聴くとワクワクしたものでした。出演者の中では、フレッシュなカーター先生も良いし、 セクシーなロス先生(ジョージ・クルーニー) も捨てがたいと妄想にふけったものです。

長いシリーズを追い続けて見たせいか、ER(緊急治療室)内部の様子に詳しくなりました。何年か後に、まさかニューヨークで自分が内部潜入するとは、思ってもいなかったのです。

救急車はリムジンより高級車

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

アメリカでは祭日のサンクスギビングデー(11月第4木曜日)の早朝、筆者は身体に異変を感じていました。2週間ほど前から体調が悪く、市販薬を飲みながらやり過ごしておりましたが、この朝の様子は只事ではなかったのです。やはり休日前に医者に行くべきだったと、朦朧としながら後悔していました。

歯の根をガチガチ言わせて震えている筆者に仰天したツレアイが「救急車を呼ぼう」というのに、「救急車は呼ばないで!」と叫んだのは筆者。なぜならアメリカは救急車が有料。病院まで500ドル以上(距離に応じてメーター制らしい)もかかるのですから。保険のない身としては、そんな高級車は恐ろしくて呼べません。解熱剤を飲みしばらく経ったら震えが止まったので、「大通りまで歩いて、タクシーを捕まえる」とヨロヨロしながら起き上がったのです。

そ、そんなに悪いんですか?

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

祭日の早朝6時であっても運良くタクシーは走っており、近所の救急病院まで辿り着くことが出来ました。祭日のがらんとした待合室を通り過ぎると、病院勤務のスタッフを見かけたので、筆者が「先生に診てもらいたいのです(I need a doctor)」と呟くや否やスタッフがすっ飛んできました。

スタッフの「車椅子が必要か」「担架に乗せたほうが良いのでは」の本気モードに、病人本人が「ええっ? そ、そんなに悪いんですか?」と心の中で焦りました。

担架や車椅子は有料ではないはずですが(多分)、「大丈夫、歩けます」とヤマトナデシコの心意気を見せました。付き添いのツレアイは気が動転しており、その間呆然としておりました(あまり役に立たない 苦笑)。

行き着いた果てはER

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

祭日で通常診療は休みなのですから、連れて行かれた先はER(緊急治療室)です。「ついにここまで、来てしまったのか」と妙な感慨に襲われました。ニューヨークは治療費の高さ(日本とは0が2つ違う場合も)で知られています。しかしながら、筆者の行った病院は、保険を持たない患者に対して、収入に応じて治療費を減額してくれるNYCの公立病院なのです。

【ERでの流れ】

●ERは、設備も新しく、想像以上に清潔で綺麗。

●ERのスタッフがワラワラと寄ってきて、ベッドに寝かされ、治療しやすい、後ろ紐のエプロンみたいな患者服を着るように促されます。自分の着てきた服は、渡されたビニール袋に突っ込む(盗難・紛失防止?)。

●ベッドは紙製の剥がせるシーツが敷いてあり、靴を履いたまま上がる(さすがアメリカ)。

●上半身の前後にピップエレキバンのようなものを貼られる。その後、心拍数、血圧、体温を測る。

●自分の症状を説明。何時いつから、どういうふうに体調が悪い、熱がある、どこが痛い、などなど。

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いつまでも続く問診

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

自分の症状についての質問を、ERの女性スタッフ、保険関係の人、事務手続きの人、医者、インターンなど6-7人の異なる人に繰り返し聞かれます。「またかよ・・・」と思いましたが、自分の治療のためだと感謝することにしました。スピーキングとヒアリングの良い英語の勉強になるかもしれません。筆者の時は早朝だったので、深夜勤務と朝からの勤務のスタッフやドクターが交代の時間で、重なって聞かれていたと思われます。

お医者様はじめ医療関係者から聞かれることは色々ありますが、下記は必ず聞かれます。

お医者様から必ず聞かれること

What’s the problem? どんな具合ですか?(何が悪くて病院に来たのか)

Did you take any medicine today? 今日何か薬を飲みましたか?(薬の飲み合わせがあるので、必ず聞かれます)

Do you have any allergies? 何かアレルギーはありますか?(薬を含めアレルギーのある人は、きちんと伝えましょう)

Have you ever had surgery before? 今まで手術を受けたことはありますか?

女性の場合聞かれること

Are you pregnant? 妊娠していますか?(プレグナントとは妊娠を意味します)

When was your last period? 最後の生理はいつでしたか?(ピリオドとは生理を意味します)

1.病院によっては、通訳(通訳専門でなく、スタッフで該当する国の人を探してくる)がいる場合もあります。
2.答えるのは単語で構いませんし、場所を指差して(お腹、背中、頭など)も良いです。
3.今はスマートフォンで翻訳機能もついているので、英訳した症状をスマートフォンで見せても良いでしょう。

テレビドラマ並みのハンサムな青い目のドクターが担当

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

イケメン率が意外にも低いニューヨーク。在住歴も長くなれば、ムダな期待はしなくなるもの(苦笑)。ところが、”How are you?”と言いながら現れたのは、金髪に青い目のまさにイケメン・ドクター。地獄に仏、病院にイケメン先生とはこのことか(笑)。こんなところで、希少価値のイケメンに会えるなんて。

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まさかの犯罪者が同室に。手錠、足錠、警官3人付

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

一通りの問診や検査が終われば、ベッドで寝ているだけ。付き添いのツレアイがあたりを見回し、ヘンなことを言いだしたのです。

ツレアイ「あの人、犯罪者なんじゃない?」
筆者「ええっ? マジ?」
ツレアイ「だって、手錠しているどころか、足錠までしてるし」
筆者「あ、足まで?」
ツレアイ「しかも目つきの悪いお巡りさんが3人も付いているよ。かなりの重罪犯なんじゃない」
筆者「その人、どこにいるの(汗)?」
ツレアイ「キミの並びのベッドで、部屋の一番奥」

首を伸ばして見ると、確かに警官がベッド脇に立っているのが見えます。しかもブルックリンやブロンクスにいそうな、コワモテの警官です。

ツレアイ「あの人、靴ないよ。裸足だね。もしかしてホームレスかもね」
筆者「えっ、どこに」
ツレアイ「キミのベッドの斜め向かいに」
筆者「・・・」

ニューヨークの2大アイコン、犯罪者とホームレス。一緒に過ごす機会があるなんて、滅多にないチャンスでした。病院で良かった、プリズンでなくて。

病院に着いただけで取りあえず治まる?のが大半なER患者

医者の問診や簡単な検査が終われば、薬や点滴が与えられるワケでもなく、ベッドに転がされているだけ。容態が急変しないよう、様子見の時間だと思われます。あんなに具合が悪かったのに、病院で先生に診て頂いたらもう治ってきたような気がするのは不思議なもの。でも周りも同じで、「もう家に帰りたい」様子です。半日ほど病院に居て薬を処方してもらったら、次々押し寄せてくるER患者のためにベッドを明け渡し、自宅へ帰るのを許されました。

アメリカの医療費の高さはハンパでない

【実録ニューヨーク】TVドラマよりエキサイティングなER体験

米ニューヨークの病院の良いところは、「はい、帰りはお会計をして帰ってくださいね」などと、野暮なことを言われないこと。請求書は後ほど、郵送されてくるためです。ERから出ると、すぐに外に出られる出口があり、逃げるように帰りました。

そして、病院に駆け込んだことなど忘れかけていた時、請求書が届きます。アメリカの医療費の高さは、ハンパなく高いのを知っていますか? 筆者も今回身にしみて実感しました。

恐る恐る開けた請求書の金額は、なんと

1512.95ドル。 (収入に合わせ、大幅に減額してもらいましたが)

アメリカや海外に旅行予定のあなたは、必ず海外旅行保険をかけましょう。疾病、傷害とも最高額で設定するのが望ましいです(筆者は日本では、損害保険の仕事をしていました)。また、旅先で体調の悪い時には、我慢せず早めに病院へ行くことをお勧めします。

テレビドラマよりも、エキサイティングなER体験。しかしながら、体験しないほうが良いに決まっています。健康こそが、何よりの宝なのですから。

[All Photos by shutterstock.com]

PROFILE

青山 沙羅

sara-aoyama ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

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