「 僕たちバリ人が、なんでニコニコしているのかっていうとね・・・」

Posted by: sweetsholic

掲載日: May 7th, 2017

地元のグルメ情報から観光名所まで、バッチリ把握しているタクシードライバーたち。とりわけ見知らぬ土地においては心強い存在です。

人によってはさまざまな地元情報を提供してくれるので、現地で土地鑑を養いときには助手席に乗るのがオススメです。ドライバーとの距離が近いと話が弾みますし、場合によっては、ほかの観光客が知らないようなおトク情報を得られることも。また乗車時間が長ければ、その人の人生観など、より突っ込んだ話が聞けたりするのも楽しいものです。

僕たちバリ人が、なんでニコニコしているのかっていうとね・・・

先日3泊4日で訪れたバリ島では、4回ほどタクシーに乗る機会がありました。どの人も印象的でしたが、そのうち2人との会話には少し考えさせられました。

屈託のない笑顔に隠されたヒミツ

僕たちバリ人が、なんでニコニコしているのかっていうとね・・・

デンパサール(ングラ・ライ)国際空港から、滞在先のホテルに向かう際の車内でのことです。「バリ島へようこそ!」という屈託のない笑顔で迎えてくれたドライバーのSuarjanaさん(男性)。事前に仕入れたバリ島の人々は温かく優しいという情報を裏切らない笑顔です。

とてもフレンドリーな人で、バリ島で必食の料理(※「バビ・グリン」という豚の丸焼き)やタクシードライバーの間で人気の食堂の話、「ここだけの話なんだけど・・・」と前置きしつつ現地のおおまかな物価(外国人価格と現地人価格が存在すること)などなど、15分の間にさまざまな話で盛り上がりました。

もうそろそろホテルへ到着するというときに、お礼の意味も込めて「バリ島の人たちは、いつもにこやかでフレンドリーだと聞きましたが、その話は本当だったみたいです」とSuarjanaさんに伝えると、少し声のトーンを落としつつ「ただ笑っているだけじゃないんだよ」という思わぬ切り返しが。

「僕たちバリ人がなんでニコニコしているのかっていうとね、バリ島は観光業で成り立っている島だからだよ。バリに来た観光客によい印象をもってもらいたいし、また来たいと思ってもらうためでもあるんだよ」と。営業スマイルだったのか・・・! と衝撃を受けたことは言うまでもありません。

僕はかつて、ホテルマンだった

僕たちバリ人が、なんでニコニコしているのかっていうとね・・・

3日間の滞在を終え、空港へ戻る際に利用したタクシーにて。残念ながら名前を聞き忘れてしまったのですが、「滞在先のホテルはどうだった?」と話しかけてくれるなど、非常に利用客との距離感が近い人でした。

会話を続けていくうちに「僕はかつて、ホテルマンだったんだ」と彼が切り出しました。「2002年の爆弾テロを覚えてるかい? テロが起きた当初は観光客が激減、経営困難に陥った宿泊施設も少なくなかった。現に、僕は働いていたホテルを解雇されてしまったよ。今の仕事(タクシードライバー)は前と比べて給料が低いけれど、家族を養うために働かなくちゃならない」と、重い表情をしています。

2002年のバリ島爆弾テロ事件は、インドネシア人のイスラム過激派により実行されたもの。インドネシアには約490の異なる民族が暮らしており、約9割がイスラム教徒で、バリ島を中心に信仰されているヒンズー教徒は1%前後とされています。こういった文化や宗教が異なる背景もあり、ドライバーの話では「観光で潤っているバリ島は、ほかの民族から妬まれやすい」ということでした。

車内の重い雰囲気を和らげるために「もう一度、ホテル業界にチャレンジしてみたらよいのでは?」と提案すると「きっと若手が欲しいはずだよ。僕の年齢ではホテルへの再就職は難しい」。これには何も答えられず・・・。切ないですね。

僕たちバリ人が、なんでニコニコしているのかっていうとね・・・

バリ島がアジアの中でも根強い人気を誇るのは、煌めく太陽と紺碧の海、おいしい食事と共に、しっかり仕事に向き合う人たちの努力があってこそ。どこの国の社会にも、表と裏の顔がある・・・というのを実感した出来事です。

[visitindonesia.jp]
[mofa.go.jp]
[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

sweetsholic

sweetsholic ライター

海外を放浪しながら気ままな人生を謳歌しているフリーライター、パティシエ。世界で経験した文化や学んだお料理などをみなさまと共有できればと思っています。 世界の文化とスイーツ、地中海料理が大好き。寄稿媒体:Pouch、ANGIEなど

ブログ
https://ameblo.jp/ma-petite-chocolatine/

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