ドイツの世界遺産といえば、まっさきにケルン大聖堂を思い浮かべる人が多いかもしれません。
ところが、ドイツは全部で42の世界遺産を保有する世界遺産大国。ケルン大聖堂のほかにも魅力ある世界遺産がたくさんあります。そのなかから、選りすぐりの8遺産をご紹介しましょう。
アーヘン大聖堂
ケルン大聖堂ばかりが注目されがちですが、アーヘン大聖堂もケルン大聖堂に負けない歴史的価値を持つ壮大な大聖堂。その証拠にアーヘン大聖堂は、1978年に世界遺産に登録された、最初の世界遺産のひとつなのです。
カール大帝が786年に建てた宮殿教会がアーヘン大聖堂のはじまりで、814年にカール大帝が死去すると、皇帝の遺体はここに埋葬されました。
さらに、936年から1531年にかけてのおよそ600年間に、30人の神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われたこともあって、アーヘン大聖堂は「皇帝の大聖堂」とも呼ばれています。アーヘン大聖堂はドイツに数ある聖堂のなかでも、特別な存在なのです。
(C) Haruna Akamatsu
古典主義やビザンティン様式、ドイツ・ロマネスク様式などが混在したアーヘン大聖堂。内部に足を踏み入れると、天井を覆う黄金色のモザイクや、重厚なアーチの数々に圧倒されます。カール大帝の即位600年を記念して造られた、25メートルのステンドグラスがはめ込まれた礼拝堂「ガラスの家」も圧巻の美しさ。
他に類を見ないほど独創的で荘厳な空間は、「皇帝の大聖堂」の名にふさわしい威容です。
ロマンティック・ライン(ライン渓谷中流上部)
ドイツを代表する景観のひとつが、「ロマンティック・ライン」の名で知られるライン渓谷中流上部。全長1300キロを超える「父なる川」、ライン川のなかでも特に美しいとされているのが、マインツ・コブレンツ間のおよそ65キロの区間です。
「ラインの真珠」と呼ばれる可愛らしい町・リューデスハイムで散策や名物のワインを楽しんだら、いざライン川クルーズへ。船上からは、緑豊かな森と数々の古城が織り成す「これぞドイツ」といった絶景が楽しめます。
途中下船して街歩きを楽しむもよし、城を訪ねてみるのもよし。夜はロマンティックな古城ホテルに泊まって、ドイツの旅ならではの特別なひとときを過ごしたいものです。
ベルリンの博物館島
ドイツの首都・ベルリンは、アートシティ。シュプレー川の中州には、5つの博物館が集結した「博物館島」があります。
5つの博物館とは、古代ギリシアやローマ、バビロニアなどの巨大遺跡がそのままのスケールで展示された「ペルガモン博物館」、ベルリンの至宝「王妃ネフェルティティの胸像」をはじめとする古代エジプト美術を展示する「新博物館」、中世以降の宗教彫刻やビザンチン芸術などを所蔵する「ボーデ博物館」、18世紀から20世紀のドイツ絵画やフランス印象派絵画などがそろう「旧ナショナルギャラリー」、古代ギリシアやローマ時代の彫刻が並ぶアンティーク・コレクションを有する「旧博物館」。
なかでも必見なのが「ペルガモン博物館」で、その展示の壮大さには圧倒されること間違いなし。規模も大きいため、歴史好きならここだけで一日過ごせてしまうかもしれません。
30以上の施設に入場できるお得な「ミュージアムパス」を活用しながら、歴史と芸術の世界にどっぷりと浸かってみては。
バンベルク市街
ドイツには、歴史的な街並みがまるごと世界遺産に登録されている場所がいくつかあります。そのひとつが、「バイエルンの真珠」と称えられるバンベルク。1007年、のちに神聖ローマ皇帝となるハインリヒ2世が司教座を置いたことにより、キリスト教の街として発展しました。
ドイツの都市の多くが第2次世界大戦の被害を受けたなか、奇跡的に無傷で残ったバンベルクの旧市街は、1000年以上ほとんど変わらない情緒あふれる街並みを残しています。
ドイツ屈指の文化遺産として名高い大聖堂をはじめ、こぢんまりとした街は、壮麗な歴史的建造物でいっぱい。
一方で、カラフルな木造家屋が並ぶ、レグニッツ川沿いの「小ヴェネツィア」と呼ばれる地区を歩けば、素朴で優しい風景に心がふっとなごみます。
観光の合間には、バンベルク名物の燻製ビール「ラオホビア」や、ラオホビアを使った郷土料理を楽しんで。
レーゲンスブルク旧市街
ドナウ川のほとりに広がる2000年の古都・レーゲンスブルク。その歴史は古く、ローマ時代から交通の要衝として栄えてきました。戦災を免れた本物の中世の街並みが残っていることから「ドイツ中世の奇跡」とも呼ばれています。
2本の尖塔が美しい、ゴシック様式の大聖堂を中心に広がるレーゲンスブルクの旧市街。色とりどりのパステルカラーの建物が並ぶ、狭く曲がりくねった石畳の路地を歩いているだけで心躍ります。ドナウ川の対岸から見る旧市街の風景はとりわけ美しく、絵画の世界に迷い込んだかのよう。
(C) Haruna Akamatsu
ドナウ川沿いには、レーゲンスブルクきっての有名店にして、世界最古のソーセージ屋さん「ヒストリッシェヴルストキュッヘ」があります。晴れた日に、ドナウ川を臨むテラス席で味わう香ばしい炭火焼ソーセージは「最高」の一言。
ゴスラー旧市街
魔女伝説が残る山間部・ハルツ地方に位置するゴスラー。今となっては小さな田舎町の風情ですが、968年にはじまった近郊の銀鉱の採掘にともなって発展し、1050年には皇帝ハインリヒ3世が城を建設。ゴスラーは一時、ヨーロッパの歴史の舞台の中心に躍り出ました。
ゴスラーの旧市街に残る建物の3分の2が1850年以前に建てられたもので、その多くが木組みの家。とりわけ町の中心をなすマルクト広場には、ゴスラーを象徴する見事な歴史的建造物が集まっています。銀色に輝く独特の街並みは、ほかのドイツの都市とはひと味もふた味も違う、ゴスラーならではの風景です。
狭い路地を歩けば、かつての富を物語る、豪華な装飾が施された木組みの家々に出会います。世界に名をはせるドイツ企業「シーメンス」創業者のひときわ立派な館もお見逃しなく。
クヴェトリンブルク旧市街と城山
ゴスラーと同じく、ハルツ地方にある小さな町・クヴェトリンブルク。1000年の歴史をもつ古都は、交易で栄えた中世の街並みをほどんどそのままに残しています。
クヴェトリンブルクの魅力は、なんといっても美しい木組みの家々が描きだす風景。ドイツのなかでも、クヴェトリンブルクに残る木組みの建物の数と質は群を抜いています。1300にのぼる、あらゆる年代の、あらゆる建築様式の木組みの建物が残る街並みは、まさに「木組みの家の博物館」といえるでしょう。
木組みの街並みとあわせて必見なのが、町を見下ろす城山。919年にドイツの初代王ハインリヒ1世が居城として築いたもので、「ドイツ発祥の地」とも呼ばれています。城山最大の見どころである聖セルヴァティウス教会は、ロマネスク様式の傑作。教会内に展示されている、ドイツ屈指の教会宝物のコレクションも圧巻です。
トリーアのローマ遺跡群、大聖堂と聖母教会
「ドイツでローマ遺跡?」と思われるかもしれませんが、トリーアは、ローマ皇帝アウグストゥスによって植民都市として築かれたドイツ最古の町。
ドイツにおけるもっとも重要なローマ遺跡である「ポルタ・二グラ」をはじめ、貴重な遺跡や歴史的建造物が町のあちこちに点在しています。
トリーアのシンボルが、2世紀後半に造られた巨大な石の城門「ポルタ・二グラ」。黒ずんだ砂岩のブロックを積み上げてできた門は、近くで見ると圧倒的な存在感。建設から18世紀以上を経た今も、古代の雰囲気をまとっています。
ドイツ屈指の大聖堂もトリーア最大の見どころのひとつ。トリーアの大聖堂は、4世紀ごろに古代ローマ時代の宮殿の土台を改築して建てられた、ドイツ最古級の聖堂です。初期ロマネスク様式の堂々たるその姿は貫録十分。
大聖堂のそばには、13世紀に建設された聖母マリア教会が寄り添うようにして建っています。質実剛健な大聖堂と、ステンドグラスがきらめく優美な聖母マリア教会のコントラストがユニークです。
これら8つの世界遺産を見ただけでも、ドイツが驚くほど多彩な歴史・文化遺産を有していることがわかりますね。奥が深いドイツの世界遺産。あなたはどれを訪ねてみたいですか。
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