バンコクにある異国といえば、なんといってもカオスなエネルギーがつまったチャイナタウンが有名。グルメスポットとしても知られるチャイナタウンは、外国人観光客にも大人気です。
しかし、バンコクにはチャイナタウンだけでなく、インド人街やアラブ人街もあることはあまり知られていません。ひと味違ったバンコクの顔が見えてくる、バンコクにある知られざる3つの異国に出かけてみましょう。
カオスなエネルギーに圧倒されるチャイナタウン
バンコクにある異国の筆頭が、「ヤワラート」と呼ばれるチャイナタウン。通りに突き出すようにして派手な漢字の看板が並び、カラフルなタクシーやトゥクトゥク、バスなどがひっきりなしに行き交います。
タイにいながらにして、昔ながらの中国の雰囲気が味わるバンコクのチャイナタウンは、外国人旅行者にも大人気。
真っ赤な開運グッズや陶磁器、お茶に漢方薬、干物、焼き甘栗、ツバメの巣といった、中国の雑貨や食材を売る店に加え、ドリアンなどのタイらしい食べ物を売る露店が加わり、「これでもか」というほどのエネルギーに満ちています。
初めてここを訪れた人は、そのカオスな光景に圧倒され、あちこちから漂ってくる食べ物と排ガスのにおいにむせ返りそうになる・・・バンコクのチャイナタウンは一度訪れると忘れられなくなるほどのインパクトを残す場所です。
サムペン・レーンで格安雑貨ハンティング
バンコクのチャイナタウンの名物ショッピングスポットが、サムペン・レーン(サンペーン)です。
チャイナタウンが開かれた当初は歓楽街としてにぎわっていたというこの場所は、今では雑貨の卸売市場として有名。バンコクの路上や市場で売られている雑貨の多くがここで買い付けられているといい、タイはもちろん海外からも仕入れにやってくるバイヤーがいるほどです。
なかでも手芸用品やアクセサリーが充実していて、安いものならピアスがひとつ数十円というプチプライス。まとめ買いすれば安くなる店が多く、ビーズやボタン、布地などの手芸用品やアクセサリーが好きな人は必見です。
個性的なデザインのおもしろ雑貨やアイデア雑貨なども充実していて、狭い通りの両側に連なるお店を見ながら歩くだけでも楽しいサムペン・レーン。じっくり見ればきっと掘り出し物が見つかるはずです。
あの高級食材が安く味わえる!?
バンコクのチャイナタウン・ヤワラーは、グルメスポットとしても有名。手頃な値段で本格的な中国料理が食べられるお店がたくさんありますが、なかでも注目したいのが高級食材のフカヒレを出すお店。
ヤワラートのど真ん中にある「和盛豊(フアセンホン)」は、フカヒレが安く食べられることで知られる店で、1973年の創業以来、味にうるさい華人にも支持され続けています。
和盛豊(フアセンホン)名物のフカヒレスープは小サイズが330バーツ(約1100円)。ほかのメニューも注文するなら、2人で分けるとちょうどよいサイズです。
飾り気のないお店だけあってお手頃価格ですが、思った以上にフカヒレがたっぷり。カニの身やしいたけも入って、ダシのきいた滋味あふれる一品です。
バンコクのインド人街「パフラット」
外国人観光客のあいだではあまり知られていませんが、チャイナタウンのほど近くには、「パフラット」と呼ばれるインド人街が広がっています。
ここは、インド北部・パンジャブ州出身者を中心としたインド系の人々が住むエリア。目印は、ショッピングセンター「インディア・エンポリアム」と、その隣にあるタイにおけるシク教の総本山「グルドワーラー・シークルシンサパー」です。
チャイナタウンに比べると控えめな規模ではありますが、シク教寺院の周辺には、インドの民族衣装が仕立てられるお店や、インドの神様グッズやお香を売る店、インドのスイーツ店や食堂が並び、インドとタイが入り混じった濃厚な空気が漂っています。
パフラットの中心、シク教寺院
バンコクのインド人街パフラットで注目したいのが、玉ねぎ型のドームをもつシク教寺院グルドワーラー・シークルシンサパー。
シンガポールやクアラルンプールなどのインド人街ではヒンドゥー教寺院が存在感を示していますが、バンコクのインド人街にはパンジャブ州出身のインド系住民が多いため、シク教寺院がコミュニティの中心地となっています。
「シク教」といっても聞きなれない人が多いかもしれませんが、「ターバンを巻くインド人男性が信仰する宗教」といえばピンとくるでしょうか。
シク教を信仰するすべての男性がターバンを巻くわけではありませんし、砂漠の民などシク教徒でなくともターバンを巻く習慣をもつインド人もいる(ただし巻き方は異なります)ため、「シク教=ターバン」とも「ターバン=シク教」とも言い切れませんが、ターバンとシク教に深い結びつきがあるのは間違いありません。
シク教寺院では無料の朝食が振る舞われる
シク教の寺院には、頭を布で隠すというマナーさえ守れば、宗教や国籍を問わず入場できます。寺院内には貸出用のバンダナもありますが、あまりおしゃれなものではないので、女性はスカーフなどを持参するといいでしょう。
シク教の寺院では、無料の食事を振る舞う習慣があり、シク教の聖地であるインドのアムリトサルにある黄金寺院では、24時間365日、訪れる人誰に対しても分け隔てなく無料で食事を提供しています。
黄金寺院に比べると規模は小さいものの、バンコクのシク教寺院でも、毎日朝8時から10時半まで、無料の朝食が出されています。
共同食堂があるのは2階。お皿を受け取ったら、カレーや豆のおかず、米、チャパティなどを好きなだけ盛ることができます。さらにはチャイもついて至れり尽くせり。
アムリトサルの黄金寺院を訪れたことのある筆者は、再びシク教の寛大な精神にふれて感動しきりでした。基本的に、シク教寺院で振る舞われる食事の食材は寄付、調理や後片付けのスタッフはボランティアで賄われています。
無料の朝食をいただく際には、それに思いを馳せつつ敬意を忘れずに。
独特の雰囲気漂う、バンコクのアラブ人街
インド人街よりもさらに小規模で、知る人ぞ知るエキゾチックタウンが、アラブ人街。BTSナーナー駅近く、ソイ・スクンビット3/1を中心としたエリアです。
アラブ人街に足を踏み入れると、突如としてたくさんのアラビア語の看板が目に飛び込んできます。トルコ料理にエジプト料理、オマーン料理など、さまざまなイスラム圏のレストランや、香水店、床屋、医院、クリーニング店など、バンコクで暮らすムスリムたちの生活を支える商品やサービスが集まっています。
タイののんびりした雰囲気は残っているものの、白いムスリム服を着た男性の姿や、チャドルをまとった女性の姿もあり、どこかイスラムの国にやってきたかのよう。
イスラム圏を代表するイメージとして「アラブ人街」と呼ばれていますが、実際にはアラブ人やアラブの文化に限られているわけではなく、バンコクにおけるイスラム教徒のコミニティとして機能しているようです。
旅行者にとって興味深いのは、なんといってもイスラムの国々の珍しい料理。チャイナタウンやインド人街とは違い、これといったランドマークがあるわけではありませんが、タイにいながらにしてイスラムの雰囲気にふれたり、日本では食べる機会の少ない中東料理を味わったりするのは、ユニークな経験になることでしょう。
一般に思われている以上に、バンコクはさまざまな民族が共存する多民族都市。異国からはるばるバンコクにやってきた人々のコミュニティをのぞいてみれば、彼らの活力の源が見えてくるかもしれません。
[All Photos by Haruna Akamatsu]