日本人にとって身近な旅先、タイ。日本と同じアジアの国でありながら、異国感満点のワンダーランド。そんなタイの人々の生活をよくよく見てみると、日本では考えられないような驚きがたくさんあります。
エキゾチックな魅力が満載のタイで、筆者が驚いた8つのことをお話しましょう。
朝夕2回、みんなが直立不動に
タイの正式名称は「タイ王国」。2016年に亡くなったプミポン国王の後を引き継いで、現在は息子のワチラーロンコーン国王(ラーマ10世)が「タイの顔」を務めています。
王室が高い地位をもつタイでは、朝8時と夜18時に国王賛歌が流れ、国民はそのあいだ立ち止まって国に対する忠誠心や王室に対する敬意を表さなければなりません。
駅の窓口で切符を買おうとしたら突然音楽が流れ出し、係員は「ちょっと待ってください」と言って仕事の手を止めて真剣な顔で起立。駅にいる乗客も、みんながその場で立ち止まって直立不動に・・・。
タイではそんな光景が日常茶飯事として繰り返されているのです。タイ人であるにもかかわらず、国王賛歌が流れても立ち止まらないでいると、場合によっては不敬罪で逮捕されてしまう可能性もあるのだとか。
外国人の場合、国王賛歌が流れても立ち止まる義務はありませんが、外国人が少ないエリアで国王賛歌に遭遇すると、自分だけ動いているのもなんだか気まずく、「動こうとしたけどやっぱりやめておこう」なんて、中途半端な行動になってしまう可能性大です。
コンビニで店員さんが料理
(C)Haruna Akamatsu
タイは日本にも負けないほどのコンビニ大国。なかでも首都バンコクの中心部は、数百メートルごとにコンビニが並んでいるといっても過言ではないほどのコンビニ密集地帯です。
タイで特に幅をきかせているコンビニはセブンイレブンで、とあるセブンイレブンからわずか200メートルほど離れたところに別のセブンイレブンがあったり、道路を隔てて2軒のセブンイレブンが向かい合っていたりします。
日本にもあるセブンイレブンですが、日本のセブンイレブンとタイのセブンイレブンではずいぶんと違う点が。最大の違いのひとつが、タイのセブンイレブンのなかには、店員さんがその場で料理を作ってくれて、それをテイクアウトできる店舗があるということ。
メニューは、オムライスのようにとろりと炒めた卵をご飯にのせたものなど、簡単なものではありますが、多くのレストランや屋台が閉まっている時間にも利用できるのはなかなか便利。
ほとんどのカフェやレストランでテイクアウトができるほど、テイクアウト文化が発達しているタイのコンビニならではのサービスといえるでしょう。
食器やペットボトルに直接口をつけてはいけない
タイ独特の飲食マナーが、食器やペットボトルなどに直接口をつけて飲んではいけないということ。
日本には、味噌汁椀やラーメンボウルなどを手で持ち上げ、器から直接スープを飲むという習慣がありますが、タイではこれはご法度。うっかりタイでこれをやってしまうと、「卑しい食べ方」と、周囲から白い目で見られてしまうかもしれません。
それではどうすればいいかというと、器を手で持ち上げずにスプーンやレンゲで少しずつスープをすくって飲みます。
タイの人はペットボトルの飲み物でさえ直接口をつけて飲むことはせず、必ずストローを使って飲みます。温かいお茶やコーヒーの場合は、カップに直接口をつけて飲みますが、冷たい飲み物を飲むときには容器が何であれ必ずストロー。世界的にも珍しいタイならではの習慣です。
マクドナルドやKFCにご飯メニューがある
(C)Haruna Akamatsu
日本でもお馴染みの世界的ファストフードチェーンは、タイでも店舗を拡大中。
そこで注目すべきは、ハンバーガーやフライドポテトが売りのマクドナルド、フライドチキンが売りのケンタッキー・フライドチキンにも、それぞれタイオリジナルのご飯メニューがあることです。
マクドナルドでは、朝マックのおかゆに始まり、豚肉や鶏肉などを甘辛く炒めてご飯に添えた料理など、タイオリジナルのご飯メニューが季節ごとに登場。ケンタッキーでは、小さめのフライドチキンをラープ風に味付けした丼ぶりなどがいただけます。
一般に、タイのレストランは非常にメニューが幅広いのが特徴。屋台を除きなにか一品だけで勝負するということがあまりなく、たくさんのメニューを用意しておいたほうがお客さんの受けがいい傾向にあります。
食の多様化・欧米化が進みつつあるタイとはいえ、日本以上にまだまだ米が食卓に欠かせない存在。家族や友人など数人で連れだって食事に出かけるときに、「自分はご飯しか食べたくない」という人がいても対応できるようにと、ファストフードチェーンもご飯メニューを用意しているのかもしれません。
歯科矯正はステイタス
一般に、日本では歯科矯正はあえてアピールするべきものではないと見られていますが、タイでは異なります。
タイにおける歯科矯正の位置づけは、「歯科矯正をしていれば、裕福で教養のある家庭出身に見える」というもの。ある意味ではステイタスシンボルともいえます。
筆者は、知人(日本人)と結婚したタイ人女性が歯科矯正器具を付けた状態で自身の結婚写真に納まっていたのを見て不思議に思ったものでしたが、タイを訪れた際に歯科矯正の位置づけを聞いて膝を打ちました。
近年のタイでは歯科矯正を行う若者がどんどん増えており、タイの若者のあいだでは、歯科矯正は恥ずかしいものであるどころか、おしゃれの一部にもなっているといいます。
日本人ならばできるだけ目立たない色の矯正器具を選ぶところですが、タイでは赤、青、緑など、カラフルな矯正器具を付けた若者の姿も。まさに「ところ変われば」ですね。
男と女の中間に位置する人が多い
タイをじっくり旅してみると、男と女の中間に位置する人が非常に多いことに気づきます。
ニューハーフが社会的に認められている、タイのニューハーフ文化は有名な話。ところが、タイには「ニューハーフ」という言葉からイメージされるような、華やかに作りこまれた女性(元男性)とは異なる人が少なくありません。
たとえば、髪型や服装など、全体としての見た目は男性であるにもかかわらず、ファンデーションと口紅を塗っている人。豊胸手術をしているのか、胸があり髪も伸ばしているのにメイクはまったくしておらず、胸とヘアスタイル以外はどう見ても男性という人。
タイでは、そんな日本人から見るとちょっと不思議な人々がごく普通に働いており、社会に溶け込んでいます。単純に男にも女にも分類できない人々は、サービス業に従事していることも多いので、レストランやホテルなど、観光客がよく利用する場所でも見かける機会も少なくありません。
男か女かで二分したがる傾向の強い日本とも、「LGTBにも権利を!」と意気込む欧米とも違って、タイにはゆるく寛容な独特の性文化があるように感じられます。
思った以上に多民族
(C)Haruna Akamatsu
「タイ」と聞いて日本人が思い浮かべるのは、パッタイやトムヤムクンなどのタイ料理、金ピカの上座部仏教の寺院、トゥクトゥク、水上マーケットなどでしょうか。
タイは東南アジアで植民地化されることがなかった唯一の国。それだけに独自の文化がそのまま残る国ですが、タイはタイ人によるタイ人のためだけの国というわけではありません。
なかでも首都バンコクは世界各国からの旅行者や移住者が多く、東京よりも国際的な環境であると言っても過言ではありません。観光地として有名なチャイナタウンだけでなく、チャイナタウンに隣接するインド人街や繁華街のなかにひっそりとたたずむアラブ人街など、タイにいながらにして異文化に触れられる町も存在します。
短期間タイを訪れただけでは、なかなかタイにおける外国人コミュニティの存在に気づくことはありません。筆者はタイを3度目に訪れ、暮らすように滞在したときに、バンコクには外国人旅行者だけでなく、世界各国からの移住者や出稼ぎ労働者が極めて多いことに気づき、「どうして今まで見過ごしていたのだろう」とはっとしました。
バンコクのナイトマーケットでは、インド系の人がインド風クレープを焼いていたり、インドネシア系の人がインドネシア風焼き鳥を売っていたりする光景が当たり前のように繰り広げられています。
タイを訪れるということは、東南アジアや南アジアの国々をはじめ、タイ以外の異文化に触れるきっかけにもなるのかもしれません。
公共交通機関に僧侶優先席がある
熱心な仏教徒が多いタイにあって、僧侶は一般の人々から尊敬を集める存在。タイではバンコクのBTS(スカイトレイン)などの公共交通機関のほか、空港の待合エリアなどに僧侶優先席があります。
「さすがは仏教国、タイ!」と言いたくなりますが、タイで僧侶優先席が設けられているのは、僧侶が尊ばれているからということだけが理由ではないようです。
僧侶は女性に触れてはいけないのはもちろんのこと、女性から僧侶に触れてもいけません。修業中の僧侶が女性と接触してしまうと、それまでの修業の成果が台無しになってしまうというのです。
公共交通機関などに僧侶優先席が設けられているのは、揺れなどによって僧侶がうっかり女性と接触してしまうのを防ぐためという意味合いもあるとか。
女性にとっても、袈裟を着た僧侶が立っているとそこに近づくことができないので、座ってくれたほうが安心していられるといえそうです。
何度も行けば行くほど、新しい発見に出会えるタイ。さて、あなたの旅にはどんな驚きが待っているでしょうか。
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