京都市内中心部から日帰りで行ける鞍馬・貴船。鞍馬天狗と義経伝説で知られる鞍馬と、和泉式部ゆかりの貴船は「京都最強のパワースポット」ともいわれています。
京都中心部が大混雑の時期も、鞍馬・貴船は比較的静かで、神秘的な森の中を歩くだけで心が洗われるような気分に。
ひと味違った京都の魅力に触れられる、鞍馬~貴船を歩いてみましょう。
貴船・鞍馬
「京都の奥座敷」と呼ばれるのが、鞍馬・貴船。それぞれ異なる雰囲気をもつエリアですが、互いに隣接しており、徒歩でも行き来ができるため、よく「鞍馬・貴船」とセットで紹介されます。
鞍馬山は、650万年前に、護法魔王尊(天狗の総帥)が金星から降り立ったという伝説が残る場所。その鞍馬山を境内とする鞍馬寺は、源義経(牛若丸)が修行したと言い伝えられる「京都最強」の呼び声高いパワースポットで、鞍馬山には、目には見えない宇宙の力が満ちているといわれます。
一方、川床で知られる貴船のシンボル、貴船神社は和泉式部ゆかりの恋愛パワースポット。水の神様を祀る本殿と、縁結びにご利益があるといわれる中宮、貴船神社創建の地である奥宮の3つの社からなっています。
夫の心変わりに悩んだ和泉式部が貴船神社に参拝し、復縁を祈願したところ、願いが叶ったというエピソードから、縁結びの社として知られるようになりました。
鞍馬寺~貴船神社まで山越えハイキング
鞍馬寺本殿から貴船神社までは、およそ1.5キロの山越えのハイキングコースで結ばれています。神秘的な雰囲気に包まれた鞍馬~貴船の山歩きは外国人観光客にも大人気。
山越えといっても、高低差が少ないうえ、ルートには寺社仏閣や木の根道などのパワースポットが点在しているので、ハイキング初心者でも飽きることなく歩けます。
鞍馬寺の入口となる仁王門から本殿までは約30分。そこから貴船神社まではおよそ1時間半で、全体で2時間ほどのコースです。写真撮影や観光時間も含め、3時間程度を見ておくといいでしょう。
比較的気軽に歩けることから、パンプスで挑む女性もいますが、滑りやすい坂道もあるので、スニーカーやハイキングシューズなど、歩きやすく滑りにくい靴で出かけてください。
鞍馬と貴船、どちらを先にするか迷う人も多いですが、おすすめは鞍馬寺からスタートして、貴船神社へと向かうルート。そのほうが上り坂が少なく、比較的ラクに歩けます。
鞍馬寺へのアクセス
京都市内中心部から鞍馬寺へ向かう方法にはいくつかあり、ひとつは叡山電鉄を使う方法。
京都駅からはJR奈良線で東福寺駅下車。東福寺駅で京阪電車に乗り換え、終点出町柳駅で下車。さらに出町柳駅で叡山電鉄に乗り換え、鞍馬駅下車。叡山電鉄鞍馬駅から鞍馬寺までは徒歩約1分です。
もうひとつのおもな方法が、地下鉄とバスを乗り継ぐ方法。京都駅からは地下鉄烏丸線で国際会館駅下車。駅前のバス停から京都バス「鞍馬温泉行き」に乗り、「鞍馬」で下車すれば、鞍馬寺は目の前です。
いずれのルートも、京都市内中心部から鞍馬までは1~1時間半程度。叡山電鉄や鞍馬温泉行き京都バスの本数は多くないので、あらかじめ時刻表を確認しておくといいでしょう。
仁王門
鞍馬・貴船ハイキングのスタート地点となるのが、鞍馬寺の仁王門。この門は俗界から浄域(神聖な場所で鞍馬山のこと)への結界とされていて、鎌倉時代を代表する仏師・湛慶作の仁王尊像が祀られています。
さあ、この門から先、山全体が聖なるパワースポット・鞍馬寺です。心なしか、門をくぐった瞬間、空気が一変して凛とした雰囲気に包まれたような・・・
由岐神社
(C)Haruna Akamatsu
仁王門から階段と坂道をのぼっていくと、「鞍馬の火祭」が行われることで知られる由岐神社に到着します。中央に通路をとった割拝殿(わりはいでん)と呼ばれる様式の拝殿は珍しく、豊臣秀頼によって再建されたもの。国の重要文化財にも指定されています。
(C)Haruna Akamatsu
もうひとつ由岐神社で目を引くのは、高さ約53メートル、樹齢およそ800年という杉の大木。「大杉さん」と呼ばれ、一心に願えば願いを叶えてくれるとされています。
本殿金堂
(C)Haruna Akamatsu
仁王門から続く坂道や階段をのぼりきると視界が開け、鞍馬寺の本殿金堂が目に入ります。鞍馬寺は、源義経(牛若丸)が幼少期を過ごしたといわれるお寺。
山上の本殿金堂は、「尊天」と呼ばれる毘沙門天・千手観世音・護法魔王尊の三身を祀っており、正面の石畳には六芒星の形をした金剛床があります。
鞍馬寺の教えでは、ここに立つと宇宙と自分が一体化し、宇宙のエネルギーを得られるのだとか。ぜひ金剛床に立って、不思議なパワーを感じてみてください。
僧正ガ谷不動堂
(C)Haruna Akamatsu
鞍馬寺の本殿金堂から霊宝殿を経てさらに奥へと進んでいくと、森も深まり、より本格的なハイキングの様相を呈してきます。
神秘的な森に囲まれた鞍馬寺の僧正ガ谷不動堂は、鞍馬の天狗が牛若丸と出会ったと伝えられる場所。小さいながらも、ピンと張り詰めたような清浄な空気をまとった存在感抜群のお堂です。
木の根道
僧正ガ谷不動堂のほど近くに広がっているのが、ジブリの世界を彷彿とさせる木の根道。
このあたりは、地盤が地表近くまで迫っていることから、木の根が地中深くまで入りこむことができないため、木の根が地面を這う神秘的な景色が広がるようになりました。伝説によると、ここで牛若丸が跳躍のトレーニングに励んだとか。
鞍馬奥の院・魔王殿
奇岩の上にある小堂が奥の院・魔王殿。ここは、650万年前に人類を救うため金星からやってきた護法魔王尊が降り立ったと言い伝えられる場所。
650万年前に金星からとは・・・予想を超えたスケールのエピソードです。信じるか信じないかは、あなた次第。
(C)Haruna Akamatsu
ここまでやってくれば、貴船神社まであともうひと頑張り。下り坂がメインですが、未舗装の山道が続くので、気を引き締めていきましょう。
貴船神社・本宮
鞍馬山を越えると、すぐ脇にたたずんでいるのが貴船神社。古くから水の神様として崇められてきた神社で、赤い灯篭が並ぶ本宮参道は、京都を代表するフォトスポットのひとつとして有名です。
本宮に祀られているのは水の神様である高龗神(たかおかみのかみ)。本殿の近くにある神水は、太古から枯れることなく湧き出る天然水です。
(C)Haruna Akamatsu
貴船神社では、おみくじの紙をこの神水に浸すと文字が浮かび上がってくる「水占い」が名物。水の神様はどんなメッセージを届けてくれるのでしょうか。
日本人が古来より育んできた歴史と文化、自然の神秘が肌で感じられる鞍馬~貴船のハイキング。じばし京都の街なかから離れて、心洗われる一日を過ごしてみませんか。
[Photos by shutterstock.com]