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「カルマだよ」。インドで捨てる神あれば拾う神ありだった話

Posted by: 春奈
掲載日: Aug 28th, 2018.

インドで待っていたのは、詐欺と無償の親切という、まったく正反対の体験。5ヵ月間のアジア旅行でインドを訪れた筆者は、チベット人コミュニティをひと目見たくて、「リトルラサ」と呼ばれる、インドの別世界ダラムサラの地をたずねました。

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「カルマだよ」。インドで捨てる捨てる神あれば拾う神ありだった話
「リトルラサ」と呼ばれる、インドの別世界ダラムサラ。5ヵ月間のアジア旅行でインドを訪れた筆者は、チベット人コミュニティをひと目見たくてこの地をたずねました。

そこで待っていたのは、詐欺と無償の親切という、まったく正反対の体験だったのです。


インドの「リトルラサ」、ダラムサラへ

「カルマだよ」。インドで捨てる捨てる神あれば拾う神ありだった話
5ヵ月にわたるアジア横断旅行の一環でインドを一人で旅していたときのこと。インド北部にあるシク教の聖地アムリトサルから、「リトルラサ」と呼ばれるダラムサラへと向かいました。

日本人のあいだでは決してメジャーとはいえないこの町に向かった理由はひとつ。インドにおけるチベットコミュニティの姿をこの目で見てみたかったからです。

ダラムサラは、チベットを追われ、インドに亡命したダライ・ラマが亡命政府を置いたインドにおけるチベット亡命社会の中心地。チベット仏教の寺院やチベット料理の店が並び、通りを歩けば、民族衣装を着たチベット人や、あずき色の袈裟を着た僧侶とすれ違う、インドの別世界です。

おんぼろバスでダラムサラ到着

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お昼すぎにアムリトサルのバスターミナルへと到着し、ダラムサラへと向かうバスに乗り込みます。乗ったバスはエアコンの付いていないおんぼろバス。地元の人々を乗り降りさせながらようやくダラムサラに着いたころには、もうすっかり日も落ちて暗くなっていました。

ダラムサラに到着し、目指すは「マクロードガンジ」と呼ばれるエリア。標高2000メートルの山中に位置するマクロードガンジにはチベット亡命政府の本拠地であり、多数の宿泊施設や飲食店が並ぶ観光地でもあります。

インド旅行中、あまり日本人に出会うことはなかったのですが、なんとアムリトサル~ダラムサラというマイナー路線のバスの車内で日本人男性に遭遇。久しぶりに日本人と日本語で会話ができたことに嬉しくなり、一緒に宿探しをしようということになりました(もちろん部屋は別々です)。

明暗を分けた客引きとの出会い

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マクロードガンジに到着した途端、インド人青年から「いいゲストハウスを紹介するよ」と声をかけられました。

普段なら、そんな宿の客引きなどまったく相手にしません。ところが、このときは日本人男性と一緒だったこともあり、「見てみるだけならいいか。気に入らなかったら泊まらなければいいだけなんだし」と軽く考えてしまったのです。

インドとは思えないような、マクロードガンジの平和な空気につい油断してしまったせいもあるかもしれません。

「清潔?」「Wifiは使える?」「ホットシャワーはある?」と、基本的な質問をしたところ、客引きの青年はすべてに「イエス」と答えたので、それなら見てみようということになり、客引きについて行くことになりました。

急階段の下へと連れられて

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「その宿が気に入らなければほかを当たればいいや」と考えていたにもかかわらず、客引きの青年はどんどん中心部から離れ、90度に近いような急階段を下っていきます。

筆者の重い荷物を持っているのに、すごいスピード。いま思えば、有無を言わせないスピードで歩くことが、途中で「ノー」と言わせないための彼の作戦だったのかもしれません。

そうやって到着した宿には、一人の中年男性が待ち構えていて、すぐに一泊分を前払いするように求められました。着いた瞬間はさほど悪い部屋にも見えなかったので「今日はもう遅いから仕方ない。明日またゆっくり別の宿を探そう」と思い、言われるがままにお金を払ったのです。

Wifiどころかシャワーすらない!

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その男性が部屋を去った後、バスルームを見て驚きました。「いったいどれだけ掃除してないんだ!」と思うほど、ひどく汚れた洗面台。おまけに、シャワーがあるはずの場所にシャワーはなく、あるのは蛇口と小さな水桶だけ。ホットシャワーどころか、シャワーすらもなかったのです。

そんな有様ですから、もちろん無料Wifiなんてあるはずがありません。客引きの青年が言った、「清潔」「ホットシャワーあり」「Wifiあり」は、すべて嘘だったのです・・・

「客引きの言うことをそのまま信じるなんてバカだ」と言われればそれまでですが、このときはすっかり気が緩んでしまっていました。

宿に到着したときには「一晩だけの辛抱だから」と思いましたが、あまりにもひどいバスルームの状態を見て、ここに泊まること自体が怖くなり、「たとえ一晩でもとてもこんなところには泊まれない!」と部屋を飛び出しました。

真っ暗なマクロードガンジの谷で途方に暮れる

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まずは先ほどお金を渡した男性を見つけようとしましたが、すでに近くにはいない模様。「お金さえもらえばあとのことは知らない」ということなのでしょう。

勢いで部屋を飛び出したはいいものの、外は真っ暗。インターネットが繋がらないので、地図も見られず、近くに何があるのかもわかりません。

極めつきは、そこがびっくりするほどの急階段の下であること。普通に上るだけでも一苦労なのに、重い荷物をもってその階段を上ることはとうてい不可能。一緒に宿に来たはずの日本人男性がどの部屋にいるのかもわからず、手伝ってくれるようお願いすることはできませんでした。

すぐ近くにほかの宿がある様子はなく、陸の孤島と化した急階段の下で途方に暮れました。いくら比較的安全なマクロードガンジとはいえ、ひと気のない場所を夜暗くなってから女性一人で動くのは不安。あてもなく歩き回るわけにもいきません。

渡りに船の出会い

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どうしたらいいかわからず、しばし暗闇に立ち尽くしていたとき、一人の青年が通りかかりました。チャンスだと思い「困っているから助けてほしい」と言ったのです。

今考えればなかなか図々しい行動でしたが、「この人を逃したら、その後は誰も通らないかもしれない」という切羽詰まった思いがありました。それに加え、インドという日本とは人と人との距離感が異なる国にいたせいもあったかもしれません。

とはいえ、「たまたま声をかけた相手が、この状況で力になってくれる可能性は低いだろう」と考えていたのも事実。しかし、事情を聞いた彼は、「兄と一緒にゲストハウスを運営しているから、そこに泊まればいい」というのです。しかも、「そのゲストハウスにすでに払ったお金を取り戻すのは無理だろうから、二泊以上するなら一泊目は無料にしてあげる」と。

「カルマだよ」

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宿の客引きに騙されて、困った挙句、たまたま通りかかった青年がゲストハウスを運営している。しかも一泊目は無料だなんて、びっくりするほど虫のいい話です。

ここがインドということもあって、警戒する気持ちもなくはありませんでしたが、あくまで声をかけたのはこちらのほう。

「自分のしたことはいつかきっと自分に返ってくる。人に悪いことをすれば悪いことが返ってくるし、人にいいことをすればいいことが返ってくるんだ。カルマだよ」。

青年がこう言って爽やかに微笑んだのを見て、「この人を信じてみよう」と思いました。

その後、彼が働くゲストハウスに3泊お世話になり、次の目的地へと向かう際には、バス停まで重い荷物を運ぶのを手伝ってくれました。

最初に騙されるという経験をしたために、この出来事は100パーセント良い思い出とはいえませんが、だからこそ、この青年のような人に出会うことができたのも確か。

嘘をついてでも旅行者からお金を取ろうとする人と、自分の信念にしたがって、目の前の相手に何を差し出せるかを考える人。まったくタイプの異なる「インド人」に続けて出会うことができました。

インドといえば、客引きやぼったくりのイメージが強いかもしれませんが、コツコツと善行を重ねながら真面目に生きている人がいるのもまたインドなのです。

旅の出来事は自分の「選択」次第

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結局、旅先でどんな人に出会い、どんな経験をするのかは、自分自身の「選択」にかかっているのかもしれません。人生は選択の連続ですが、旅行中は日常生活にはないイレギュラーな選択の連続です。

どこへどうやって行くのかはもちろんのこと、客引きが声をかけてきたら話を聞くのか、無視するのか、話を聞いたら聞いたで、その人について行くのか、行かないのか、誰を信じるのか・・・そういった選択に迫られているときに、自分できちんと判断しようとせず、いい加減な態度をとっていると、悪意のある人や嫌な出来事を引き寄せてしまうのかもしれません。

反対に、自分の頭やときには直感を使って、それぞれの選択にきちんと向き合えば、そのときには善意の人や良い出来事が待っているのではないかという気がします。

暗闇の中で通りすがりの青年に声をかけたときのように、時には理屈ではなく、本能的、感覚的に「この人は大丈夫か?」と判断しなければならないときもあります。

さまざまな場面で、自分の選択が試されている。そして、どんな選択をするかによって、まったく別のストーリーが待っている。旅とはそういうものなのではないでしょうか。

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[All Photos by shutterstock.com]

春奈

Haruna ライター
和歌山出身。東京での会社員時代に、旅先でドイツ人夫と出会う。5か月間のアジア横断旅行の後ドイツに移住し、ライターに転身。約2年半のドイツ生活を経て、現在は日本在住。「歴史地区」や「旧市街」と名の付く場所に目がなく、古い町を歩き尽くすのが大好き。世界のリアルな「ワクワク」を多くの人に伝えたい。


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