
日本には、猫が多く暮らす島、通称猫島が点在しています。その中でも元祖と言われるのが宮城県の田代島(たしろじま)。なんと猫神様が祀られる神社まであるのです。この筋金入りの猫島の今昔を調べてみました。
田代島とは?

宮城県石巻市に属する田代島は、周囲11.5kmほどの小さな島。石巻市の中心エリアから約17km離れたところにあります。東北に位置しますが、月平均の気温がマイナスになることがない、比較的温暖な気候です。
この島には現在人が70人前後暮らしていて、猫は120匹程度いると言われています。飼い猫~地域猫~野良猫といて、食事スタイルもさまざま。漁のおこぼれにあずかる猫、人に餌をもらう猫、山で自分で餌を捕る猫がいるそうです。
島の施設としては、猫グッズなどが手に入る「島のえき」と、漫画家のちばてつや先生と里中満智子先生がデザインした猫型ロッジがある市営の宿泊施設「マンガアイランド」があります(2018年は7~10月のみオープンの実績)。
猫が増えた理由

田代島では、江戸時代に養蚕業が行われており、多くのカイコが飼われていました。そのカイコを狙うネズミ対策で、猫が必要とされました。それが、田代島で猫が増え始めたきっかけと言われています。
明治以降は、大謀網という大型の定置網を使った漁業が盛んになります。漁師が暮らす小屋の近辺には食べ物を求めて多くの猫がやってきました。漁師は、猫の仕草から天気や漁の結果を占うようになったそうです。島ではいつしか猫が大漁を招き、海難事故を防ぐ守り神となっていきました。
猫神様

昔は漁の錨に岩を使っていました。その岩が当たって死んでしまった猫を葬ったのが猫神様の始まりと言われています。島の中央におかれた猫神社は、国土交通省が選定した「島の宝100景」になっています。日本の島が6,800以上(有人島は400以上)あることを考えるとすごいですね。
猫神社
被災後、島の猫を支える人々

(C)Natthanaree / Shutterstock.com
猫ブームにより年間1万人以上が訪れていた田代島は、東日本大震災で大きな被害を受けました。動物愛護団体の呼びかけもあり、島の猫を心配した人たちから届いた救援物資の中に、ペットフードも多く含まれていたといいます。

ドイツ在住の日本人獣医であるクレス聖美先生は、島の猫を撮影していたカメラマンの田中良直さんに、獣医の自分にできることがないかと問い合わせました。田中さんは、カキ養殖再生を中心とした「田代島にゃんこ・ザ・プロジェクト」(現・社団法人田代島にゃんこ共和国)という一口支援基金にそれを伝え、基金の一部が猫の治療にも役立てられることに決まりました。
猫島で知られていることに加え、高齢者が8割以上の限界集落という事情も人々の支援したい気持ちの背中を押したのか、このプロジェクトはたった3カ月で目標金額であった1億5000万円を集めたそうです。
クレス先生は、今も2カ月ごとに自費で島を訪れ、ボランティアで猫たちの診察を行っています。診療で使う薬品の一部だけ「田代島にゃんこ・ザ・プロジェクト」が負担しているそうです。
外猫が多いせいか、島の猫の寿命は5年ほどだそう。その決して長くはない一生のQOLを上げるのを目的としています。たとえば、風邪や下痢の猫に抗生物質を投与する、栄養状態をよくするよう療法食をあげるなどといった活動です。
さまざまな人の助けを受けて、今日も田代島の猫は元気に暮らしています。

田代島
参考
[石巻市 田代島の紹介]
[石巻市 統計書 住民基本台帳による人口推移]
[田代島にゃんこ共和国]
[PETOKOTO]
[東洋経済オンライン]
[週刊女性PRIME]
[石巻市 マンガアイランド]
[国土交通省 島の宝100景]

Shio Narumi ライター
イタリアはフィレンツェとタオルミーナの料理留学、イギリスはウエストン・スーパー・メアとケンブリッジの花留学を経て、現在はロンドンと神奈川を行ったり来たり。飛行時間の大幅短縮が実現するよう、心から科学の進歩を願う水瓶座。
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