
飛行機には窓がありませんが、換気が常に行われています。周囲にある上空の空気は薄いので、空気を圧縮してから機内に送り込んでいるのですが、エンジンを通過しているので、有害物質が機内に流れ込んでいる可能性があるのだそうです。排気ガスは使っていないそうですが、これはショックです!
客室内の換気と暖房のシステム

現在の商業用旅客機の大部分は、換気と暖房に「ブリードエア」と呼ばれるシステムを使用しています。
上空では、飛行機はエンジンから抜き取った高温高圧の空気をエア・コンディショニング・システム(エアコン)に導き、機内に送り込んでいます。(「
JAL 航空豆知識」より引用)
エンジンを通った空気は圧縮され、その結果200℃と高温になります。これがマイナス50℃になっている外気と合わせるなどして冷やされ、客室内に入ります。
この暖かい空気は、バクテリアとウィルス除去のフィルターを通って再循環した空気と混ぜられます。フィルターは、エンジンからの煙や湯気は除去しません。そのため、エンジンオイルや油圧燃料の漏れがあった場合、またタンクに充填しすぎた場合は、有害物質が空気に入る可能性があると言われています。
汚染された空気が既に問題に

この空気の汚染については、既に問題が起こっています。
近年は、ひどい吐き気や力が入らないといった症状が起きたとするパイロットからの報告が何百とあり、それを「エアロトキシック症候群」と呼ぶ専門家もいます。乗務員のみならず、毎年少なく見積もって20万人の乗客に影響を与えているという説があります。
アメリカン航空のキャプテンが、2人の乗客と客室乗務員が軽い頭痛を訴えて、ロサンゼルスに向けて出発したもののヒースロー空港に戻ってきて着陸したことがありました。その後の調査で、空気の毒性は検出されなかったけれど、航空機すべてのエアフィルターを置き換えたということがありました。
また、機内で有毒な煙に侵されたと訴えていたパイロット2012年に亡くなっています。死因を調べていた検察も彼の主張を支持しました。「航空機の煙が出るのはまれなので、長期的な健康への悪影響は証拠がない」としていた民間航空局と、ブリティッシュ・エアウェイズに対し、「今後の死者を出さないために緊急行動を取るように」と要求。
客室内の汚染された空気については、長い間、パイロットと客室乗務員の間では公然の秘密だったそうです。航空業界は何十年もこの問題を知りながら手を付けておらず、1950年代から換気の技術はほとんど変わっていないと言われています。
明るいニュースとしては、ボーイング社がはじめて、新システムを開発したというものです。同社のドリームライナーは、エンジンから離れた場所から空気を供給する新システムを採用。こういったことを全部の会社が早くやってほしいですね。
空港、飛行機関係のトリビアについては、『【特集】元空港グランドスタッフの、今だから話せる驚きの実話』『マニアの間で人気!?三角マークがついている飛行機の座席の意味とは?』などもぜひチェックを!
参考
[航空豆知識 第12回|JAL]
[航空豆知識 第16回|JAL]
[ののちゃんのDO科学「飛行機の酸素なくならない?」|朝日新聞]
[Is cabin air making us sick?|The Telegraph]
[Toxic cabin air campaigners call for detectors in planes|The Telegraph]

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Shio Narumi ライター
イタリアはフィレンツェとタオルミーナの料理留学、イギリスはウエストン・スーパー・メアとケンブリッジの花留学を経て、現在はロンドンと神奈川を行ったり来たり。飛行時間の大幅短縮が実現するよう、心から科学の進歩を願う水瓶座。
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