涙を流す人も続出!【カナダ】モントリオールの大聖堂デジタルアートの傑作『AURA』とは?

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Apr 14th, 2019

カナダ旅行、とりわけ東部のケベック州に訪れたら、音響と映像によるデジタルアート作品を手掛ける世界的なリーディングカンパニー、モーメントファクトリーの作品は必見です。そこで今回はモントリオールで気軽に体験できるAURAの魅力を紹介したいと思います。

モーメントファクトリーの本拠地モントリオール

日本でも有名なお寺や神社などの宗教施設が、プロジェクションマッピングの対象になって、多くの人を喜ばせていますよ。昨年末の大阪城公園では、単なるプロジェクションマッピングではなく、体験型ライトイルミネーションも登場しました。

もちろん海外も状況は一緒。例えば上述した大阪城公園のプロジェクトを担当し、音響と映像によるデジタルアート作品を手掛ける世界的なリーディングカンパニー、モーメントファクトリーの本拠地があるモントリオール(カナダ)も注目です。同地では旧市街地最大の見どころであるノートルダム大聖堂を舞台に、『AURA』というプロジェクションマッピングが楽しめるからですね。

カナダ旅行、とりわけ東部のケベック州に訪れたら、モーメントファクトリーの作品は必見です。そこで今回はモントリオールで気軽に体験できるAURAの魅力を紹介したいと思います。

ノートルダム大聖堂に投影されるデジタルアート『AURA』

そもそもモーメントファクトリーとは、モントリオールを拠点に誕生した世界的なデジタルアート集団。クライアントの依頼に応じ、映像と音響を駆使したデジタル空間を演出したり、大阪城公園の体験型ナイトエンタテイメントやノートルダム大聖堂AURAなど、デジタルアート作品を作ったりする会社になります。

モントリオールのノートルダム大聖堂

今回紹介するデジタルアート体験は、そんなモーメントファクトリーのホームグランドであるモントリオールで、重厚な威容を誇る大聖堂のホールを舞台に上映される、約20分間の光と音のショーになります。2017年3月20日と比較的新しく登場した作品ですが、すでに何度も観ているというモントリオール観光局の人ですら、「何度見ても鳥肌が立つ」と絶賛するほどです。

モーメントファクトリーによれば、今まで400以上のショーを手掛けてきた中でもノートルダム大聖堂でのプロジェクションマッピングは、「the most complex mapping project(最も複雑なプロジェクト)」なのだとか。

通常であれば、プロジェクションマッピングはグレーなど単色で平面の建物に映像を投影します。しかしノートルダム大聖堂の場合、内部の構造は極めて複雑で、黄金の祭壇やバラ窓、ステンドグラス、エメラルド色の天井(ヴォールト)など、色彩にあふれています。

普段の祭壇。この教会内にプロジェクションマッピングが投影される。

最初は「これほどの空間に、これ以上何をすればいい?」という状況からプロジェクトは始まったといいます。それでも「光の誕生」、「困難」、「自由な空」といったストーリー構成を練り、音と映像で世界観を作り込んでいきます。次いでオリジナルの音楽を作曲依頼し、ラジオカナダオーケストラが演奏して録音するなどして、最終的に音と映像とロケーションが織りなす完璧なアンサンブルがAURAとして出来上がったのですね。

20分間のデジタルショーでは涙を流す人も

© AURA Notre-Dame-Basilica - Photo by Susan Moss

AURAの写真撮影は禁止され、もちろんメディア取材でも禁じられています。来場者は教会内に入ると、中央の通路(身廊)を避けるように、脇の通路(側廊)を歩いて、静かに長椅子への着席が求められます。関係者によると、最前列よりも下がった場所の方がショーの全体が見渡せて楽しめるとか。

着席後にショーがスタートすると、音と映像がネオ・ゴシック様式の教会に新たな命を吹き込み始めます。約20分という時間はあっという間に過ぎ、気が付けば同行メンバーの1人は泣いていました。

ショーの上映後に、祭壇の方から参列席を振り返ると、7000本近くのパイプがあるという世界最大級のオルガンを背景に、カップルたちが肩を寄せ合いながら、祭壇を見上げて余韻に浸っていました。

もちろん、この手の神聖な場所を使った興行に、批判的な人も居るのかもしれません。知人のチャーチプランターで、敬虔(けいけん)なクリスチャンに聞いてみると、「聖書の中でイエスが宮で売り買いしている人を叱責しているように、教会という神の聖殿を興行で使うという行為に、ネガティブな感情を抱く人たちが存在する可能性も十分にある」と言います。

ただ一方で、キリスト教は「寛容」が美徳とされると言います。常識の範囲内であれば教会堂はどのように使っても問題ない、(カトリック教会なので教会そのものに)神学的な意味はあまり持たせていない、ミサができればそれでいい、むしろキリスト教を知らない人たちに来てもらうきかっけになり、歓迎する人ももちろん多いはずとの言葉もありました。

教会には洗礼、ミサ、ざんげに関するお知らせも置いてありました。もちろん単なる観光地としてではなく、教会としても機能しているわけですね。歌手セリーヌ・ディオンも、同教会で結婚式を挙げています。そんな歴史的建造物を利用して、夜間にショーが行われます(1日2回)。ショーが終了した後のライトアップされた教会内は撮影が可能ですから、記念に写真に収めて帰ってくださいね。

説教壇

余談ですがケベック州で活躍する日本人ガイド高橋浩也さんによれば、教会で最も注目すべき場所は、説教壇だと言います。説教壇とは文字通り礼拝者に対し説教者が説教を行う場所で、教会の設計を担当する芸術家が、唯一自分の思った通りにデザインできる部分なのだとか。

言い換えれば、最も芸術家の感性が現れる場所。モントリオールのノートルダム大聖堂では、祭壇に向かってホールの左手に作り込まれています。その辺りもチェックしてみてくださいね。

[Photos by Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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