
国の特別史跡「本薬師寺跡」に藤色の海

国の特別史跡に指定されている「本薬師寺跡」。この田園風景の休耕田に「ホテイアオイ」は咲いています。奈良市西ノ京にある「薬師寺」の前身にあたる「本薬師寺」は、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を祈願し、天武9年(680年)に薬師如来をご本尊にお寺を建てられました。
しかし、未完のうちに天武天皇が崩御され、持統天皇がその遺志を継ぎ完成させます。平城遷都に伴いお寺は伽藍ともども西ノ京へ移築され、「本薬師寺」と呼ばれるようになったとのことです(別々に造られたという説が有力のようです)。
「小さな手」からの始まり、見頃は9月~10月

南米原産で繁殖力の高い花「ホテイアオイ(和名・布袋葵、別名・ウォーターヒヤシンス)」は、水草のなかまで、水面に浮かび花を咲かせます。その花言葉は「揺れる心・恋の悲しみ」。茎の根元の中央部がふくれ、浮き袋の役割をしているこの姿を七福神の布袋様のお腹に例えたことが由来とのこと。
よくよく観察してみましょう。平成30年、橿原市立畝傍北小学校2年生のみなさんが植えつけたのが始まりで、本薬師寺跡周囲にある1.4ヘクタールの水田に最盛期には約400,000株の花が咲くそうです。
小さな手から広がった淡い藤色の花は、8月末~9月に見頃を迎え、10月中頃まで楽しめます。
朝日を浴びて花は開く

到着した朝8時前、ちらほらとカメラマンも集合中。花の小路は人一人が歩けるほどで、みなさん譲り合いの心で花散歩。近所の方が「まだ開いてないでしょう?お日様が当たるとだんだん開いてくるよ」と教えてくださいました。

なるほど。明るいといえど花の上にはまだ影が残っていて、花はお日様が当たるその時を待っているかのよう。

8時30分を過ぎる頃、影はだんだんとのその範囲を狭めていき、お日様とバトンタッチ。

陽があたるにつれだんだんと花開いてゆく姿。水辺にだんだん広まる藤の色。

魔法のように広がる光景に、心は熱く、かまえるカメラも熱くなる9時前。晩夏におとろえない太陽の暑さ。それを忘れるほどの感動がありました。
藤色、青色、緑色の美の共演

一度開花したホテイアオイは夕方に萎んでまい、毎日新しい花が入れ替わり咲くそうです。花を訪ねたこの日は、ホテイアオイのほか、数本の蓮が夏の終わりに最後の美しさを魅せてくれました。諸行無常の儚さに有る美ですね・・・。

花の真ん中には浮き島のように祠のあるひっそりとた空間。そこに在る大きな木は、ホテイアオイと人々の暮らしをそっと見守るように鎮座していました。

雄大な畝傍山、豊かな実りが待ち遠しい鮮やかな緑の田園、澄んだ青空、秋を告げに来た藤色のホテイアオイ。

水田を流れる水の音をBGMに、続いてやってくる彼岸花の風景も楽しみに、秋の花散歩にいかがでしょう。
[all photos by kurisencho]

kurisencho ライター
熊本県天草の凪いだ海と潮の香りの中で育ちました。東京に住むことで、新しいもの、昔からあるものの良さを再発見し、今まで見てきた世界が広がりました。デジタル化の中で生きるアナログの力を確信し、儚いけど美しい、人と風景の一瞬をとらえたいと思い写真を撮っています。
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