「サンタクロース」は世界共通語ではない?
クリスマスになると、贈り物を運んできてくれる老人がいます。赤い服を来て、白いひげを生やし、トナカイに乗ってくる後期高齢者ですが、あの人の名前を日本人は「サンタクロース」と呼びます。もちろん、この言葉は世界でも知られているのですが、むしろ違う名前でプレゼントの運び屋が呼ばれている国もたくさんあるとご存じですか?
最近のニュースでも、その呼び名の違いが明らかになりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、ヨーロッパでは移動規制が行われていますが、EU(欧州連合)が各国のクリスマスプレゼントの運び屋、日本でいうサンタクロースだけは、移動規制の対象外になると発表し、話題を呼びました。
その際、移動規制の対象外になった運び手は、Saint Nicholas(聖ニコラス)、Pere Noel(ペール・ノエル)、Babbo Natale(バボ・ナターレ)、Reyes Magos(東方の三賢人)、Agios Vassili(アギオス・ヴァシリス)です。いずれも、オランダ、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなどの「サンタクロース」ですね。
そもそもサンタクロースの呼び名は、『広辞苑』(岩波書店)によると、聖ニコラスのオランダ語なまり、Sante Klaassがオランダ人新教徒によってアメリカに持ち込まれ、アメリカで広まった背景があると書かれています。いわばアメリカ的な呼び方なのですね。
『図説クリスマス百科事典』によれば、日本のクリスマスの文化は、第二次世界大戦の敗戦後に、アメリカの進駐軍によってもたらされたと書かれています。その意味で、アメリカの影響が日本での呼び名に直接的な影響を与えているのですね。
ちなみにイギリスの言葉、本当の英語では、Father Christmasと呼びます。
クリスマスのプレゼントの交換が元日の国もある
クリスマスは日本では宗教的な意味がほとんどありません。
単なる商業イベントになっていて、プレゼントなどの購入による消費活動が最大の目的となっています。このクリスマスプレゼント、日本では何日に交換しますか?恐らくクリスマスイブ、もしくはクリスマス当日ですよね?
この伝統は、世界で共通の習慣だと思うかもしれませんが、実はヨーロッパや北米など一部の国と地域では異なります。
『図説クリスマス百科事典』によれば、例えばギリシャ、カナダ東部、スコットランドなど一部の国と地域では、元日にプレゼントを交換する様子。
真偽のほどを確かめたくてギリシャ人の友人に聞くと、今でこそクリスマスと元日がミックスされてきているみたいですが、もともとは元日がプレゼントの交換日だと言います。
欧米のクリスマスシーズンは、12月20日ごろから元日まで続きます。その意味で元日もクリスマス休暇の一部。日本のように慌ただしくクリスマスが終わってしまうわけではないので、元日にプレゼントを交換しあっても、何ら問題はないのですね。
クリスマスに生まれた人は不運になる?
例えば友達に誕生日を聞いて、「クリスマス」と言われたら、どのような反応をするでしょうか?何となく日本ではクリスマス=ロマンティックなイメージがあるので、「ええ、すてき!」と好意的に反応するのではないでしょうか?
このクリスマスに生まれた人に対する印象は、国と地域によって全く異なります。むしろクリスマス生まれがネガティブにとらえられる国もあって、例えばギリシャ、ドイツ、ポーランドなどでは、クリスマス=誕生日があまり好ましく考えられていないと、先ほど話を聞いたギリシャ人の友人が教えてくれました。
例えばギリシャでは、クリスマスに生まれた子どもが「カリカンツァロイ(妖怪のような小人)」になる、ポーランドやドイツでは、クリスマスに生まれた子どもはオオカミ人間になる、ポーランドの一部であるシレジアでは、クリスマス生まれの子どもは泥棒になると思われている(いた)のだとか。
確かに似たような記述は、『図説クリスマス百科事典』にもありますが、一方で同著によれば、クリスマス生まれの子どもは社会的に成功するケースのほうが統計的には多いという事実もあるそう。
その理由は、小さいころから親と周囲に特別視されるため、自己肯定感が育ちやすく、結果として自己実現の可能性も高まるからですね。
オーストラリア人は年に2回クリスマスを祝う
最後は南半球のクリスマスから。筆者が昔読んだ日本人中学生向けの英語の教科書に、南半球のクリスマスの祝い方が載っていました。
サンタクロースがサーフィンをしているイラストも掲載されていたような気がしますが、実際にオーストラリアではクリスマスを海辺で祝います。
オーストラリアの12月25日といえば真夏です。当日はビーチに出かけ、水着にサンタの帽子をかぶって、開放的に祝うのですね。
ここまでは多くの人が知っていると思いますが、一方で雪が降るクリスマスの雰囲気に憧れる一部のオーストラリア人たちは、冬の7月に山(シドニーから近いブルー・マウンテンズなど)に出かけてキャンプとたき火をしたり、イルミネーションでクリスマスムードを出したバーに行って、まったりと時間を過ごしたりするそう。要するにオーストラリアでは冬と夏の2回、クリスマスが来るイメージなのですね。
以上、クリスマスのトリビアを紹介しました。今日、誰か大切な人と会う予定があるのならば、その時にこの雑学を披露して、会話のネタにしてもらえれば幸いです。すてきなクリスマスを。
[参考]
How Do People in Australia Celebrate Summer Christmas? – Suri Do] Christmas in July – Australia We will waive COVID travel restrictions for Father Christmas, EU confirms – euronews.
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
【東京ディズニーランド2023おすすめ土産はこれだ!】コスパ・可愛い・お
Dec 3rd, 2023 | 山口彩
【2023年12月3日更新】東京ディズニーランドのおすすめ土産を現地ルポ。缶やパッケージが可愛いお菓子は? ばらまき土産用で一番コスパがいいのは? おいしいと評判のお土産は? 甘くないおすすめのフードは? 持ち歩きに便利なかさばらないお土産は? などなど、キャストさんに聞きながらまとめてみました! 実際に食べてみた実食ルポもあり。
毎日の腸活をサポート!機能性表示食品「Lakubi premium<ラク
Nov 30th, 2023 | TABIZINE編集部
腸内環境の改善・便通の改善・高めのBMI低下をサポートする「Lakubi premium(ラクビ プレミアム)」は、蛯原英里さんが登場する広告でもおなじみの機能性表示食品。忙しい日々のなかでも、健康にこだわりたいという人の腸活サポートになってくれるかもしれません!
日本の世界遺産【17】日本の信仰と世界の芸術に影響を与えた名峰「富士山―
Nov 29th, 2023 | あやみ
日本を象徴する名峰「富士山」。冬の空気が澄み渡った日に富士山を眺めると、その美しい姿に魅了されます。富士山は古くから信仰を集め、絵画や詩歌といった多数のアート作品の題材にもなっています。今回は、そんな「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」にフォーカス。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。
【日本語を学ぶ人が多い国トップ10】3位韓国・2位インドネシア・1位は?
Nov 28th, 2023 | TABIZINE編集部
世界で一番話している人が多い言語は、約15億人の話者がいる英語です。一方、日本語は1億2,500万人以上に話されていて、世界の中で話されている言語の中では10位前後に位置しています。しかし、日本語を学ぶ人の数は約380万人に上り、ある調査では、日本語は世界で5番目に人気の言語だそうです。そこで、日本語を学ぶ人が多い国・地域のランキングトップ10を紹介します。
【TABIZINE10周年×日本女子大学】大学生目線で切り取る海外7カ国
Nov 27th, 2023 | TABIZINE編集部
2023年9月12日、TABIZINEは10周年を迎えました。これまで支えてくださった読者のみなさま、そして数々の取材先や関係者のみなさまに感謝の気持ちを込めて、さまざまな企画を展開していきます。第3弾は、日本女子大学とコラボ。今年から新設された国際文化学部では、1年生から約2週間の海外研修で他国の言語や文化を学びます。研修を通して、大学1年生ならではのみずみずしい感性で切り取られた海外の“今”をお届けします。イギリス・オックスフォード、アメリカ・ボストン、オーストラリア・シドニー、フランス、ベトナム、台湾、韓国。ヨーロッパからアジアまで、7カ国の最前線の様子を、現地からリポートします。
【水がきれいな川ランキング】荒川・川辺川・ 五ヶ瀬川は10年以上連続でラ
Nov 27th, 2023 | あやみ
国土の約75%を山地が占める日本の川は、標高の高い上流から河口までの距離が短く、川の水は急勾配で流れ落ちるのが特徴です。今回は、日本の一級河川で水がきれいな川のランキングをご紹介します。何気なく景色に溶け込んでいる近所の川や、旅先で訪れた場所に流れている川をじっくり観察したくなるかもしれませんよ。
【世界面積トップ10】日本はランキング何位?1位は世界の13%を占めるロ
Nov 26th, 2023 | TABIZINE編集部
世界の面積は1億3,009万4,010平方キロメートル。世界には196カ国(2023年3月時点)の国がありますが、一番大きな面積を占める国はロシアです。では、日本の面積、約37万8,000平方キロメートルは世界で何番目の広さでしょうか? 面積の大きい国ランキングトップ10と日本の順位を紹介します。
日本の世界遺産【16】仏教の理想郷を目指した!岩手県「平泉-仏国土(浄土
Nov 22nd, 2023 | あやみ
かつて京都に並ぶ政治・行政上の拠点が岩手県にあったことをご存じでしょうか? 同県平泉町には、仏教の中でも、特に浄土思想の考え方に基づいて造られた多様な寺院・庭園が残っています。今回は、そんな「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」に注目。概要や見どころをはじめ、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。
【キッコーマンしょうゆ工場見学が予約制で再開!】宮内庁に納める御用蔵醤油
Nov 21st, 2023 | kurisencho
日本の食卓に欠かせない調味料・醤油(しょうゆ)。国内シェアNo.1のしょうゆメーカー「キッコーマン」では、国内3ヶ所にあるしょうゆ工場で、2023年5月から工場見学を再開しました。今回、千葉・野田工場の施設内にある“しょうゆ”のすべてがわかるミュージアム「キッコーマンもの知りしょうゆ館」を訪問。今昔のしょうゆづくりを学べて、工場限定商品やスイーツもありました!
【都道府県ランキング】訪日外国人の旅行先トップ10!1位は東京・2位は?
Nov 21st, 2023 | TABIZINE編集部
2023年1月〜10月の訪日外国人の数は1,989万1,100人。10月の1カ月では、251万6,500人と、コロナ禍前の2019年同月比でプラスに転じており、外国人観光客が徐々に戻ってきています。では、日本を訪れる外国人は、47都道府県のどこを目的にしているのでしょうか? 旅行先の都道府県トップ10と外国人に人気の観光地を紹介します。