老舗精肉店が営む食事処
伊勢神宮の門前町として賑わうおはらい町。約800mにわたって続く通りには切妻造りの建築が並び、江戸時代の風情を醸します。今回訪ねた「松阪まるよし 伊勢おはらい店」も趣ある佇まいの一軒。営むのは松阪牛をメインに販売する創業昭和36年の老舗精肉店です。
1階では松阪牛やテイクアウト向けお惣菜などを販売。すき焼きや焼肉、ステーキ用の肉から、日常使いにぴったりな切り落としまで品ぞろえは多岐にわたります。ちなみに、松阪牛の読み方は「まつさかぎゅう」または「まつさかうし」で、「さ」は濁らないのが正しいそうですよ。
窓からの景色はもはや江戸時代
レストランは2階に。窓からはまるでタイムスリップしたかのような風情ある景色が広がります。ワンハンドグルメの食べ歩きが人気のおはらい町ですが、落ち着いて名店の味を楽しむスタイルもまたいいものです。
松阪牛をコスパ良く楽しめるセットメニュー
ステーキ、牛鍋、ハンバーグなどと迷いながら選んだのは「松阪牛焼肉御膳」(3,600円)。御飯や味噌汁、サラダ、香の物のほか、人気土産の松阪牛しぐれ煮がついてくるのもうれしいところ。今や日本惣菜の定番となったしぐれ煮ですが、発祥は三重県とのこと。特産物であるハマグリを生姜と醤油で煮たものを「時雨蛤」と呼び、それ以来、生姜を加えて作る佃煮全般を時雨煮と呼ぶようになったのだとか。
肉は肩、モモ、バラのミックス。赤身中心の部位が使用されるので、霜降りは脂っこすぎて苦手という人にもおすすめです。
それでは焼いていきましょう。ガスや炭火ではなく、旅館の夕食などで使われる固形燃料ですが火力は十分。香ばしく上品な芳香が放たれ、食欲をそそられます。
さっと焼いて食べてみると…、その味の奥行きに驚かされます。厚めにカットされながら、口の中でほろりと崩れていく感覚です。決して霜降りではないのに、この柔らかさはすごい! 赤身ならではの旨味が際立ちながら、繊細な脂感も後からやってくる。このバランス感覚は最強! 自家製タレはほのかにフルーティでまろやか。松阪牛のポテンシャルを引き立てる名脇役っぷりを発揮しておられました。
聞けば、「松阪牛は一般的な和牛よりもオレイン酸を多く含み、脂肪が溶け出す融点が低いのが特徴」とのこと。これにより舌触りがよく、滑らかな口当たりになるのだそう。やはりおいしさの裏側にはれっきとした理由があるんですね。
そんなプレミアムな名牛はご飯とも相性抜群です。おはらい町では松阪牛の串焼きなども人気ですが、ご飯と合わせてこそそのおいしさを体感できるのでは…、なんて思ったり。いずれにせよ、香り、味、口溶けすべてが極上の松阪牛を御膳で3,600円で食せるとは、魅惑のコスパと言えるはずです。
お腹に余裕があれば食べ歩きフードをテイクアウトするのもあり。「松阪牛牛鍋まん」(450円)は松阪牛と野菜の旨味が凝縮した一品です。生地のふんわり感もたまりません。
「松阪牛牛鍋コロッケ」(350円)は、三重県産コシヒカリを使用したライスコロッケ。看板メニューの牛鍋がモチーフに。
味もコスパも、さらには情緒ある風景も格別の「松阪まるよし 伊勢おはらい町店」。老舗精肉店による間違いのない松阪牛を満喫してみてはいかがでしょうか?
松阪まるよし 伊勢おはらい町店
住所:三重県伊勢市宇治今在家町26
TEL:0596-72-8929
営業時間:レストラン10:30~17:00(ラストオーダー 16:00) フード・精肉コーナー9:30~17:00
定休日:無
URL:
https://matsusakaushi.com
[All photos by Nao]
Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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