長崎「雲仙地獄」で絶景と歴史を巡る~湯けむりたなびく温泉地の散策道~

Posted by: ロザンベール葉

掲載日: Feb 15th, 2022

長崎県の島原半島にある「雲仙温泉郷」は、雲仙天草国立公園に指定された自然豊かな温泉地です。その中心地にあるのが「雲仙地獄」。「地獄」だなんて縁起でもないと思いましたが、ぶくぶくと地の底から噴き出す湯煙と、ゴツゴツとした湯の花が一面を覆うその光景から、仏教でいう「地獄」に例えたのが名前の由来だそう。潜伏キリシタンの拷問も行われたという、歴史ある散策道をご紹介します。

雲仙地獄

湯煙の中、哀史や伝説が残る「雲仙地獄」

雲仙地獄

雲仙温泉郷は、日本初の国立公園に指定された「雲仙天草国立公園」の中にあります。「雲仙」という名は、平成3年(1991年)の雲仙普賢岳の火砕流災害で聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。その麓に雲仙温泉郷があるのです。

古くは701年に大乗院満明寺が開かれ、仏教の修業の場として栄えたといいます。硫黄の香りが立ち込め、ぶくぶくと噴き出す蒸気と熱気が一帯を覆う一種奇妙な光景を、仏教でいう「地獄」に例えたのが始まりだとか。

「大叫喚地獄」「お糸地獄」「清七地獄」など30余りの地獄ポイントから成り、さまざまな哀史や伝説が伝わります。江戸時代にはキリシタンの拷問が行われ、殉教の地にもなりました。そんな歴史を知ると少し怖いような気もしますが、単純に見ていると、もくもくと噴き上がる水蒸気は雲海のように幻想的で、地球のパワーさえ感じられます。

地獄内には遊歩道が整備されているので、約1時間、快適に散策を楽しめます。途中には休憩所が用意されていますよ。

「邪見地獄」「大叫喚地獄」など多彩な地獄が

雲仙地獄 足湯

まずは足湯広場からスタート。足湯に浸かり、心身をほぐしてから歩くのもいいですね。

雲仙地獄

樹木に囲まれた気持ちの良い遊歩道が続きます。

雲仙地獄

歩いていると、このような光景が垣間見られます。もくもくと湯煙が噴き上がり、温泉地にいることを実感できますよ。

邪見地獄

こちらは「邪見(じゃけん)地獄」。邪見とは、人を妬む醜い心のこと。この温泉のお湯を飲むと、夫婦や友だちの間で生じた嫉妬心による不和を解消するといわれているのだとか。しかし実際には強酸性の温泉で、とても飲むことはできません。「邪見を捨てなさい」という仏教の教えからの言い伝えといわれています。

大叫喚地獄

雲仙地獄に現在30あるという地獄の中で、もっとも活発に噴気を上げている「大叫喚地獄」。筆者はその名から想像し、ここに放り投げられて「助けてくれー」と叫んだ人が数多くいたとか、そんな逸話が残っているのかと思いました。実際は噴気口から聞こえてくる「アー、オー」というような低音が、地獄からの叫び声や喚き声のように聞こえることが由来だそうです。それを知り、ほっとしました。

大叫喚地獄

33名のキリシタンが殉教した地

雲仙地獄 キリシタン碑

キリシタン殉教碑です。雲仙地獄では、寛永4年(1627年)から7年間、キリシタンを棄教させるために過酷な拷問が行われ、この地で33名が殉教されました。これこそ本物の地獄です。この地獄を見ていると、信徒たちがどれほど苦しんだのかが容易に想像でき、胸が苦しくなるような思いです。

雲仙地獄 キリシタン碑

この地獄を見下ろす丘の上に建つ十字架は、殉教の信徒たちを讃えています。現在も毎年5月の第3日曜日には、殉教者の遺徳を偲び、長崎大司教区主催による雲仙殉教祭が開催され、巡礼が行われています。

温泉たまごとレモネードを味わえる「雲仙地獄工房」

雲仙地獄工房

「雲仙地獄工房」にたどり着きました。温泉地ならではの温泉たまごをいただけるようですよ。

温泉玉子とサイダー

湯煙を眺めながらちょっと一息。雲仙地獄で蒸した温泉たまご2個200円(税込)と、レトロな瓶に惹かれる温泉(うんぜん)レモネード250円(330ml・税込)。たまごは「1個食べたら1年長生き、2個食べたら2年長生き、3個食べたら死ぬまで長生き」と言われているのだとか。

雲仙地獄足蒸し

工房の前に、足を置くと地熱や噴気を体感できる「雲仙地獄足蒸し」という休憩所があります。裸足になるのが辛いほど寒い日だったので試しませんでしたが、気持ちがよさそうですね。

雲仙地獄工房/雲仙地獄足蒸し
TEL:0957-73-3434(雲仙温泉観光協会)
定休日:年中無休、4月~10月:9:00~18:00
11月~3月:9:00~17:00
※悪天候の場合、臨時休業の可能性あり
※雨天や高温の際は使用中止

夜のイベント「湯にも地獄の物語」も開催

お糸地獄

「雲仙地獄工房」の前に「お糸地獄」があります。こちらには具体的なエピソードがあります。

かつて、島原城下でたいへん裕福な生活をしていたお糸という女性が、密通した挙句に夫を殺してしまいます。そのお糸が処刑される頃に、この地獄が噴出したことから「家庭を乱すと地獄に堕ちるぞ」という戒めを込めて名付けられたとか。恐ろしや~。

雀地獄

最後にかわいい「雀地獄」。この辺り一帯では、地下から噴き出したガスが水中ではじけて、ぴちぴちと小さな音を立てています。まるでスズメがたくさん集まって鳴き騒いでいるような感じがすることからこの名前になったそうです。

雲仙地獄

不吉なエピソードや戒めが込められ、また実際にキリシタンの拷問が行われていた「雲仙地獄」。辛い歴史も残りますが、今となっては人気の観光スポットです。温泉を堪能する合間に、家族や仲間同士で楽しく散策できますよ。

雲仙地獄をめぐりながら4つのお話を聞く「湯にも地獄の物語」という夜のイベントも行われています。

■湯にも地獄の物語
TEL:0957-73-3434 (雲仙温泉観光協会)
実施期間:2021年4月3日~2022年3月26日の第2・4土曜日
料金:3,000円(小学生未満は参加不可)
開始時間:3~9月/19:30~、10~12月/18:00~(10分前に集合)
集合場所:50周年広場(雲仙お山の情報館別館となり)
事前申し込み締切:一日前
URL:https://www.unzen.org/yunimojigoku/(予約可)

 

雲仙地獄
住所:雲仙市小浜町雲仙320
TEL:0957-73-3434 (雲仙温泉観光協会)
営業時間:24時間(夜間はライトアップはありません)
入場料:無料
駐車場:周辺に200台(有料)

[All photos by Yo Rosinberg]
Do not use images without permission.

PROFILE

ロザンベール葉

ロザンベール葉

主に横浜・東京で育ち、縁あって京都に在住。美術書出版社勤務を経て、フリーランスライター歴20年余り。フランス人のパートナーと共に、フランスとイタリアを中心に気ままな旅をする。海はどこも好きだけど、「地中海」という響きに憧れる。マイペースが好き。

主に横浜・東京で育ち、縁あって京都に在住。美術書出版社勤務を経て、フリーランスライター歴20年余り。フランス人のパートナーと共に、フランスとイタリアを中心に気ままな旅をする。海はどこも好きだけど、「地中海」という響きに憧れる。マイペースが好き。

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