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【実は日本が世界一】戦中に一番乗りの「海底鉄道トンネル」は未だ現役だった

Posted by: 坂本正敬
掲載日: May 25th, 2022. 更新日: May 6th, 2023

意外な世界一を取り上げるTABIZINEの連載。今回は、世界で一番乗りに日本でつくられた、意外な土木遺産を紹介します。

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関門トンネル下関方坑口 photo by Tam0031 in Wikipedia

 


第二次世界大戦中にできた「海底鉄道トンネル」

下関駅
(C) seaonweb / Shutterstock.com

世界初の偉業は日本にたくさんあります。例えば、海底鉄道トンネルも世界で初めて日本でつくられたことをご存じでしょうか?

その時期は、1942年(昭和17年)と1944年(昭和19年)です。歴史に詳しい人であれば、すぐにピンときたはず。まさに第二次世界大戦の真っただ中ですね。

日本が破滅に向かっていくその過程で、山陽本線の下関駅から現在の門司駅を結ぶ「下り線の関門鉄道トンネル」が世界で最初に誕生し、追って上り線も開通しました。

しかも、この工事は、外国の技術者を招へいせず、当時のトンネル工事技術を結集させたチーム・ジャパンのチャレンジだったのだとか。本格的に取り入れたシールド工法の設計・製作・材料もすべて国産だったといいます。

シールド工法とは、

<シールドを用いた工法。主に軟弱で浸水の危険のある地盤で採用する>(岩波書店『広辞苑』より引用)

そうです。シールドとはそもそも、

<トンネルの掘削で、土室の柔らかい場所をほるのに用いる強固な鉄製円筒>(岩波書店『広辞苑』より引用)

なのだとか。当時から、日本には世界に誇れるトップクラスの土木技術があったのですね。

別々に掘られたこれらの2本のトンネルは、世界で最初につくられた海底鉄道トンネルとして、今も現役で活用されています。

毎日600トンの海水や地下水が漏れている

下関の街

関門鉄道トンネルは、海底でどのような姿になっているのでしょうか。関門鉄道トンネルは上下線で別々のトンネルが2本、海底を走っています。

山口県下関市の彦島から海峡の最深部に向かって20%のこう配で下り、海底を通過して、同じ角度で福岡県北九州市の門司駅に向かって上がっていきます。

大きな水圧がかかる海底にトンネルを掘る場合、トンネルの断面が大きいほど海底深くに通す必要があるそうです。

とはいえ、鉄道トンネルの場合、トンネルを太くして、海岸近くから一気に海底深くまで潜り込ませるわけにはいきません。自動車と違って鉄道の場合は急な坂道を通過できないからですね。

かといって、緩やかなこう配を保ちながら、海底深くまで太いトンネルを通そうとすると、かなり内陸部から掘り下げ始める必要に迫られ、その距離が長くなる分だけ工事費も高くなります。

そこで、複線用のトンネルよりも小さい単線のトンネルを別々に2本掘り、海底の浅い部分に通した方がいいと判断されました。

2本の単線用トンネルをつくれば、片方が事故で不通になった時(あるいは保守点検の時)、もう一方で単線運転もできます。

工事費が安く、技術的にも容易で、非常時の対応・メンテナンスにも強いという理由から、関門鉄道トンネルは上下線が別々のトンネルとしてつくられたのですね。

とはいえ、さすがに老朽化も指摘され、新しいルートの計画もあるとの話。トンネルを鉄道で実際に通ると、トンネルの狭さや天井から垂れてくる水滴、壁面の様子を通じて、かなりの経年劣化を感じさせられます。

産経新聞によると、トンネル内には毎日、600トンもの海水や地下水が漏れてきているのだとか。

新型コロナウイルス感染症の影響も心配なくなって、自由に旅ができる時代が戻ったら、関門海峡に今のうちに出掛けて、山陽本線の普通列車で海峡の地下を潜り抜ける時間をつくってみると面白いかもしれませんね。

[参考]
世界初の海底トンネル「関門鉄道トンネル」 – 土木遺産の香

楽しく分かる!トンネルの世界 トンネルのNo.1

関門鉄道トンネル(下関市~北九州市) – 日本の土木遺産

開通から70年……山陽本線関門トンネルの“寿命”が近づいている – ITmediaビジネスONLiNE

大動脈が危ない 関門新ルート実現を(中)寿命 – 産経新聞

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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