ドイツ南西部の深い森に、物語の世界から飛び出してきたような美しい城があります。
それが「妖精の城」とも称されるリヒテンシュタイン城。中世の騎士物語への憧れが詰まったロマンティックな世界に足を踏み入れてみましょう。
ドイツにあるリヒテンシュタイン城
「リヒテンシュタイン城」と聞くと、スイスとオーストリアに挟まれたヨーロッパの小国、リヒテンシュタインにあると思いがちですが、リヒテンシュタイン城があるのはドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州。
「天空の城」として知られるホーエンツォレルン城から車で40分ほどのところにある、リヒテンシュタインという小さな町のはずれにひっそりとたたずんでいます。
断崖にそびえる「妖精の城」
シュヴァーベンアルプと呼ばれる深い森に囲まれた、切り立った断崖にそびえるリヒテンシュタイン城。その現実離れした美しさは「妖精の城」ともたたえられています。
足がすくんでしまうようなロケーションと、円筒型の塔が美しい城が織り成す風景は、まるで物語の世界から飛び出してきたかのよう。
騎士物語「リヒテンシュタイン」から生まれた城
リヒテンシュタイン城は、19世紀のドイツロマン派の作家、ヴィルヘルム・ハウフによる騎士物語「リヒテンシュタイン」に着想を得て生まれました。
城の起源は12世紀ごろに築かれた砦にさかのぼり、増築や破壊、再建、再度の破壊を経て廃墟となった城は、1802年、ヴュルテンベルク公国の公爵フリードリヒ2世の領地となり、1803年には廃城にかわって狩猟の館が建てられました。
1837年にこの地を相続した、ヴュルテンベルク大公ヴィルヘルム・ウーラッハは、武器や甲冑などの熱心な蒐集者でした。騎士物語「リヒテンシュタイン」の世界に憧れた彼が、中世の城を再現すべく建設したのが現在のリヒテンシュタイン城なのです。
中世の雰囲気が漂う城内
塔や居室、跳ね橋をはじめ、物語の記述に即して建てられたリヒテンシュタイン城。城へと続く橋の上を歩けば、物語の主人公になったような非日常感に包まれます。
中世に建てられた城のなかには、破壊や増改築により、建設当初の姿が失われているものも少なくありませんが、中世の騎士の世界を忠実に再現したリヒテンシュタイン城は、ある意味では中世に建てられた城よりも中世の雰囲気が漂っているといえるかもしれません。
城内はガイドツアーで見学でき、ヴィルヘルム・ウーラッハ大公が蒐集した武器を展示する「武器の間」や、木彫りの装飾が印象的な「騎士の間」をはじめとする、重厚な部屋の数々が見られます。
リヒテンシュタイン城へのアクセス
リヒテンシュタイン城への起点となるのが、バーデン=ヴュルテンベルク州の州都シュトゥットガルト。
シュトゥットガルト中央駅から列車で約40分のロイトリンゲン中央駅下車。ロイトリンゲン中央駅からバスでおよそ40分のトライフェルベルク停留所で下車し、バス停から城までは徒歩約30分です。
19世紀の貴族が抱いた、中世への騎士物語への憧れが具現化されたリヒテンシュタイン城。そのドラマティックな景観は、きっと忘れられません。
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