タイを貧乏旅行で回るならバンコクだけでなく、他のまちも見て回りたい。
ただ、南へ足を向けるとリゾート地が多くて、貧乏旅行の雰囲気にはならないような気がする。目指すならやはり、北だろう。
移動手段は鉄道とバス。いったいどんな旅になるのだろう? きっと、見たこともない風景に遭遇し、多くの人と出会うのだろう。考えるだけでわくわくする。
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まず目指すのは、世界遺産のまち・アユタヤだ。
14~18世紀に王都として繁栄した古都で、当時の戦いで破壊された寺院遺跡や仏像などが多く残っている。当然、バンコク同様、多くの寺院や寺院遺跡などを巡りたい。
アユタヤ遺跡の中心にあり、遺跡全体を見渡せる「ワット・ヤイ・チャイ・モンコン」や、菩提樹の中に埋まった仏像の頭で知られる「ワット・マハタート」、アユタヤ王朝最初の王宮があり、歴代の王3人の遺骨が納められた仏塔がある「ワット・プラ・シー・サンペット」などなど、見たい場所や行きたい場所はたくさんある。
だけど、そんなアユタヤで僕が一番行きたい場所は、かつて多くの日本人が暮らしたという日本人町跡だ。
16世紀初めに朱印船貿易に携わった日本人たちが築き、最盛期には2000~3000人以上もの日本人が住んでいたという。
今は、記念公園に石碑と日タイ修交120周年記念館が建てられている。当時の建物跡などはないらしいが、当時のことを思い描くためにもぜひ、足を運びたい。
16世紀の始めと言ったら、今から500年も前の話だ。そんな時代に、日本から遠く離れた地に多くの人が移り住んでいた。渡航方法は、当然、船だ。今よりずっと危険な・・・。
日本を出る時、きっと二度と帰ってこられないという思いもあっただろう、途中、海の事故で命を落とすことも覚悟していたかもしれない。その勇気に思いを馳せると、うだうだと日本を出られないでいる自分がとても恥ずかしい。
日本人町跡はアユタヤのチャオプラヤー川沿いにある
続いて目指すのは、少し西にそれて、ミャンマーとの国境にある県、カンチャナブリ。
カンチャナブリへ行く大きな目的は2つある。ひとつ目は、ゆったりとした時間を過ごすための贅沢な空間、川の上に浮かぶゲストハウスだ。
カンチャナブリには竹で作られたような水上コテージを使ったゲストハウスがいくつもある。贅沢な空間と言っても、そこはゲストハウス。やっぱり安い。
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竹を組んで作った川べりの床に座り、川の中に足を浸けながらビールを飲むのだ。飲むのはもちろん、日本のタイ料理店でもおなじみのシンハーだ。
僕は土地のお酒はその土地で飲むのが一番おいしいと思っている。それはビールでも日本酒でも、ウィスキーでもなんでもそうだ。その土地の風土の中で味見をし、おいしいと思うお酒を造っているだから、当然だ。
気のせいなんかではない。これははっきりと言い切れる。その土地で飲む、その土地の酒が一番うまいのだ!
強い日差しを受けながら、足は冷たい川の中。そして体の中を通っていくよく冷えたビール。最高じゃないか。つまみは体に感じる気温と、鼻に届く緑と水の香り。贅沢です。なんとも贅沢です。
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そして、もう一つの目的地はあのアカデミー賞映画『戦場にかける橋』の舞台となったクウェー川鉄橋。
第二次世界大戦中、日本軍が敷設したタイとビルマ(今のミャンマー)をつなぐ泰緬鉄道が通るクウェー・ヤイ川に架けられた橋だ。
映画は、第二次世界大戦中にこの土地にあった捕虜収容所を舞台に、日本軍の捕虜となったイギリス軍兵士らと、彼らを泰緬鉄道建設に動員しようとする日本人大佐との対立と交流を描いたものだ。
この映画は知らなくても、映画の中で流れる「クワイ河マーチ」の名前で広く知られる曲「ボギー大佐」は誰もが聞いたことがあると思う。この鉄橋は歩いても渡れるというので、「クワイ河マーチ」を口笛で吹きながら渡ってみよう。きっと、これまでに数えきれない数の人たちがそうしてきたに違いないが・・・。
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続いて、さらにぐっと北上して目指すのは、こちらも世界遺産のまち、スコータイだ。
1238年に開かれたタイ族による最初の王朝、スコータイ王朝の遺跡群が見られるスコータイ歴史公園には当然のごとく足を運びたいが、僕がスコータイで見たいのは、「土」です。
なので、スコータイでは自転車をレンタルして、未舗装の道を探してまちを見て回りたいのです。
またまた古い映画の話で恐縮だが、市川崑監督の作品で、若かりし中井貴一が主演した『ビルマの竪琴』。この映画の冒頭で「ビルマの土はあかい 岩もまたあかい」という文字が表示される(もっと古いモノクロ版では、映画の最後に出てきたように記憶している)。
そして、その赤い土の色が映画の中で鮮やかに表現されているのだ。
これと同じ赤い土がタイやカンボジアでも見られる。ラテライトと呼ばれる赤土で、湿っているときは、普通の土と同じように軟らかいが、いったん乾燥すると鉄分の影響で非常に硬くなり、元には戻らないという。
そんな性質を利用して作られるのが、日干しレンガだ。カンボジアのアンコールワットも、そして、ここスコータイの遺跡の多くもこの日干しレンガで作られている。
映画で描かれていたような赤い土と青い空のコントラストをぜひ、楽しみたい。
次の目的地にして、今回の旅のゴールとなるのはタイの北の都、チェンマイだ。
他の都市同様、遺跡や由緒あるお寺が数々あるが、このまちで僕が体験したいのは、出会いだ。と言っても、いかがわしい出会いではなく、いろんな民族の人たちに出会いたいのだ。
タイ北部には、21部族、約50万人の山岳民族が暮らしているという。
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できるなら、それぞれの部族が暮らす村を訪ねたい。出会った人のことを知ろうと思えば、その人がどんな暮らしをしているのかを見るのが一番だからだ。
でも、時間がないなら、チェンマイ発のツアーに参加するのも悪くない。バスに乗って、山岳民族の暮らす一帯を順に回り、彼らの暮らしを見て、工芸品などのお土産を買う。
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そんな時間すらないのだったら、なんと、チェンマイには山岳民族たちが民族衣装や民族舞踊を見せてくれるショーレストランもある。旅情感や浪漫はかなり薄れるが、それでも出会わないよりはずっといい。そこで手を打つのも悪くない。
そして、チェンマイでのもう一つの楽しみは山の中にある。
まちを離れ、山の中にどんどん入っていったところに、それはある。エレファント・キャンプだ。
山々の自然に恵まれたチェンマイ郊外には、象と触れ合えるエレファント・キャンプがある。ゆったりとした渓谷に、多くの象が象使いと共に暮らしているのだ。
そこでぜひ、象に乗ってみたい。
過去に一度だけ、象に乗ったことがある。それは室内だったが、想像以上に高かったことを覚えている。そんな象に乗って、自然の中を歩けたらどんなに気持ちがいいだろう。
もしかしたら、今回の旅、一番の目的かもしれない。
そんなタイ旅行。
いったいいくらくらいで行けるのか? 前回はバンコク往復2万円の格安航空券をご紹介した。
今回はそれを利用して、バンコクから北を目指す旅。基本的には鉄道とバスを利用。バンコクからアユタヤなら鈍行普通列車で50円くらい。長距離バスもエアコンなしのものを利用すれば、大体どこへ移動するのも数百円で移動できるという。
宿泊もゲストハウスだし、移動費と宿泊費にはほとんどかからない。さぁ、あとは何にお金を使おうか? 思いっきり遊んじゃおう!
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