2016年に「平成の大改修」としてリニューアルが完了した小田原城が人気を集めています。そんな小田原土産といえば、かまぼこや梅干しが定番。実は木工も盛んで、小田原漆器、近くでは箱根の寄木細工が伝統工芸品に指定されています。良質の木材に恵まれ、平安時代からロクロを使った木工の技「木地挽」が受け継がれているという素地のなか、最近はとてもモダンで面白い製品も出てきています。
エコな様式美が美しい器「ひきよせ」
木工の世界では、少しでも節が入っているとその部分は使えないという命題があります。こちらの器は、節を外した間伐材の角材を組み合わせ、貼り付けて塊にすることで、無駄なく使うことを目指しました。手間暇はかかりますが、無垢材に比べ、材料は三分の一で済むそうです。
寄木にすることで、無垢材とはまた違った魅力が生まれました。組み合わせの妙がなんともモダンです。
こちらは、地元のヒノキを使ったもの。持っていて、軽さに驚きます。木目がひとつひとつ全然違うのが面白いですね。タンブラーやどんぶりは人気で品切れになることも多いとか。お客さんによって、完全に好みが分かれるようで、色味が濃く個性的なものを選ぶ方、あっさりしたものを選ぶ方、様々だそうです。
ふと疑問に思ったのは、使い続けていくとどうなるかということ。スタッフの方に伺ったところ、「ツヤが出て色が濃くなる」でした。実はこの器のメーカーが器のよさを伝えるために隣でお蕎麦屋さんをやっています。
そのお蕎麦屋さんから器を借りてきてみせてもらいました。左が3年ほどヘビーユースされたもの。ツヤがでていますね。毎日ぶっかけ蕎麦などが入れられ、がしがし洗われ、味が出ていますが十分きれいです。
長時間水を保管する、食洗機を使う、といったことには木の器は不向きですが、日常使いではそこまで神経質になる必要はなさそうです。家庭ではここまで器を育てるにはもっと時間がかかりそうですが、育てていくのは楽しみですね。
もっと白っぽいメープルと茶色っぽいウォールナットでつくられたものも素敵です。北米から届いた材料でつくられています。
クリスチャン・ディオールのパリ本店でも取り扱われるなど、世界の様々な企業から発注が来るそうです。日本でも各種メディアで取り上げられていて注目を集めています。
果樹からできたお箸と器
柿の木材は家具に使われることなどがあるそうですが、各種果物の木から作られたお箸が並んでいるのをみたことがありますか?おそらく全国でも珍しいはず。
左から、りんご、かき、なし、もも、みかん、うめ、と並んでいて、印字されています。うめ、みかん、なしの地元産のものが特に人気だそうです。
通常果物の木は、果物がなっている間、大きく切り出すことはありません。そのため大きな木材の入手は難しいそう。
箸はいつも取り扱いがありますが、器はたまたま木材が手に入ったので実験的につくってみたものだとか。非常にレアで、まさに売り切れ御免です。
かまぼこ板を使ったつみき
さらに筆者が引き付けられたのは、杉材のかまぼこ板を利用して作ったつみきです。塗料もナチュラルなものが使われているので、色味も優しいですね。またこの色には意味があって、青色でも、「早川漁港のアジ」「小田原城の青空」などと名付けられているのがなんとも味わい深いものになっています。
こちらのお店では、箱根細工やからくり箱などの商品も扱っています。一度立ち寄ると、時間を忘れてしまいそうです。小田原観光のついでに、駅前の地下街「ハルネ」にある店舗に立ち寄ってみてください。
[All photos by Shio Narumi]