ハワイ島のワイピオ渓谷 ※写真は現在の様子ではありません
ハワイ島で噴火があったというニュース、ハワイ旅行を計画している人には、人ごとではない話ですよね。一部の報道では5~7月のキャンセル総額は500万ドルを突破し、ホテルや各種アクティビティの新規の予約も半減していると言います。日本の外務省も、公式ホームページ上にハワイ島キラウエア火山の噴火に伴う注意喚起を出しています。これから夏に向けて、ハワイ旅行を計画している人も少なくないはず。ハワイ旅行は本当に大丈夫なのでしょうか?
そこで今回は各種の公的な記録を参照しつつ、ハワイ在住の知人のライターに現状を聞いてみましたので、ハワイ旅行を検討している人はチェックしてみてください。
※記事の内容は、2018年5月25日掲載時点の情報となります。
カウアイ島、オアフ島、モロカイ島、マウイ島は噴火の影響が皆無
オアフ島
今回の噴火はハワイ諸島の中でも、ハワイ島の南東に位置するキラウエア火山の東側の山腹、東リフトゾーンが噴火した形になります。リフトゾーンとは、キラウエア火山のように山体の緩やかな火山の、
<山腹に特徴的に見られる細長い割れ目地形で,この地帯に沿って噴火が起こる>(岩石学辞典(朝倉書店)より引用)
場所とされています。そのリフトゾーンにレイラニエステートという居住区が存在していて、その住宅街の地面が割け、噴火が始まったのですね。執筆時点で最新の情報を見ると、
<Eruption of lava and ground cracking continues in the area>(米地質調査所のホームページより引用)
とあります。溶岩の噴出と地割れは、依然としてレイラニエステートで起きているようですね。
このようなニュースを聞いたり、テレビで衝撃的な映像を見たりすると、「ハワイ、やっぱり危ないよね・・・」といった感覚になってしまいますが、「ハワイ」と日本人が呼ぶエリアは、多くの場合ハワイ島ではなく、ホノルルのあるオアフ島になります。
ハワイ島から見て、北西方向にハワイ諸島は伸びており、ハワイ島の隣がマウイ島、その先がモロカイ島やラナイ島、さらにホノルルのあるオアフ島があり、カウアイ島と続きます。ハワイ島からカウアイ島までは、手元の地図を使ってざっと距離を測ってみると500kmほど。オアフ島でも400kmほど離れています。400kmと言えば、東京と大阪の距離ぐらいですね。
ハワイ州知事が「ハワイ島以外のオアフ島、マウイ島、モロカイ島、ラナイ島、カウアイ島では火山活動の影響は皆無」と公式に発表しているように、ホノルルなど他の島に出かける分には、今回の噴火は全く影響ないと考えていいようです。
カウアイ島
ハワイに20年以上在住し、現在はオアフ島の地元メディアで働いているライターの知人に聞いてみたところ、
「(ハワイ島以外の)他島では全く影響はないです」
と教えてくれました。現実的に噴火のあったハワイ島と他の島は、数百キロも離れています。ハワイ島以外は、旅行の計画をどんどん進めても問題ないのですね。
ハワイ島も一部でしか噴火の影響はない
マウナロア ※写真は現在の様子ではありません
では、キラウエア山のあるハワイ島は、どのような状況なのでしょうか。ややいびつながら円を描くような形をしたハワイ島は、島の東西に空港があり、中央近くに4,000m級のマウナ・ケア山、マウナ・ロア山、その南東にキラウエア山があります。
キラウエア山は、地元ではいまだに根強い信仰の対象となる火山の女神、ペレの魂が宿る火山ですね。TABIZINEの過去記事「世界一の山は、実はハワイ島にあった!?」でも紹介した山々です。
キラウエア山の一帯はハワイ火山国立公園に指定されていますが、米国立公園局(NPS)によれば、国立公園の2/3が現在、立ち入り禁止になっています。
ハワイ州観光局によると、キラウエア山山頂のハレマウマウ火口から噴き出す火山灰や蒸気が北東へ向けて流れているため、ハワイ島南部のカウ地区、キラウエア山の北東にあるマウンテンビュー、ケアアウ、空港のあるヒロといった町まで達する可能性があるといいます。また、ハレマウマウ火口の爆発的な噴火も専門家に危ぶまれているそう。
キラウエア山の火口 ※写真は現在の様子ではありません
しかし、繰り返しになりますが、今回の噴火地域は、キラウエア山の東リフトゾーンと呼ばれる25㎢の一部に限られています。観光の中心地で宿泊施設も集中する西海岸のコハラ、コナなどは、同じ島でありながら110km以上も離れているため、問題ないと公式の情報が出ています。
島の東側で空港のあるヒロに関しても、住民に被害をもたらしている東リフトゾーンの火口から32kmは離れているそう。32kmと言えば、東京で言えば新宿から八王子よりちょっと短いくらい、大阪で言えば梅田から神戸くらいの距離です。
上述の知人も、
「ハワイ島の火山噴火の影響はプナという(噴火の起きている)地域のみに限られていて、ハワイ島でも他の地域では影響がないです」
との話。さらに、
「キラウエアはいつも噴火しているような状況なので今に始まったことではありません。地元の人たちの感覚からすれば、またかという感じです」
とも教えてくれました。この場合の「いつも噴火」とは、プウオオ火口の話ですね。ハワイ州観光局によれば、プウオオ火口は1983年から35年にわたって噴火を続けてきた火口になります。今回噴火のあった東リフトゾーンと、キラウエア山の山頂にあるハレマウマウ火口のちょうど中間地点に位置しています。
米地質調査所が公開するハザードマップ(PDF)を開き、画像キャプションによって作成
さらに先ほど引用したように、地面が割れてマグマが噴き出したレイラニエステートは、現地のハザードマップを見ると、ハワイ島の中でも危険度が最も高い溶岩の通り道の上(危険度1)にあると分かります。
逆にメインの西海岸の観光地などは、例えばカイルナ・コアが危険度4、北コハラは危険度9と安全な地域だと分かります(数字が大きいほど安全)。
・ハワイ島以外の島々はキラウエア山の噴火と何の関係もない
・ハワイ島の中でも、主要な観光地は島の北西にあり、南東にある噴火地点から100km以上も離れているので、噴火の影響はない
・今回の噴火は、キラウエア山の山頂が爆発的に噴火したのではなく、キラウエア山の山腹にあるリフトゾーンの住宅街の地面に亀裂が走り、マグマが噴出し始めた
カウアイ島
[【ハワイ島】キラウエア火山噴火に関する最新情報 – ハワイ州観光局]
[米国:ハワイ島キラウエア火山の噴火に伴う注意喚起(新規) – 外務省]
[News Releases – National Park Service]
[Map Showing Lava-Flow Hazard Zones, Island of Hawaii – USGS]
[Photos by shutterstock.com]