国内の某空港でグランドスタッフとして働いていた経験のある蒼井空(あおい そら:仮名)さんに聞いた、「今だから話せる驚きの実話」。さまざまな国の人々が行き交う空港では、文化ギャップを感じる興味深い出来事が日々繰り広げられているのです。第7回目は、見ていて心配になってしまうほど挙動不審なおばあさんのお話。
グランドスタッフはケアが必要な方の付き添いもする
(C)mayura benjarattanapakee / Shutterstock.com
車椅子の方やお子さまの一人旅、シニアの方のサポートなど、ケアが必要な場合にグランドスタッフが到着ロビーまで付き添うことがあります。
事前に社内システムを通じて申し送りがあり、搭乗口から付き添って、出迎え人のところまで送っていったり、空港施設内の公共交通機関の乗り場まで案内したりするそうです。
驚くほど挙動不審なおばあさん
(C)pio3 / Shutterstock.com
「あるとき、ネパールから訪日したというおばあさんの付き添いを担当したんです。このおばあさんが、見ている方が心配になるほど挙動不審で、常にあちこちキョロキョロし、怯えている様子で、手をひいている私のことも全く信用していないような素振りでした。もちろん、言葉は通じません。
あまりに様子が普通ではないので、心配になりながらも、入国審査をパスし、預け荷物を受け取りました。途中、エレベーターに乗ったのですが、エレベーター内に設置された鏡に映った自分の姿を穴があくほどじっと見ていましたね。まさか鏡を初めて見たなんてことはないだろう・・・と思いつつ、お出迎えの人のところまで付き添いました」(蒼井さん談)
未だかつてない挙動不審の正体
(C)Quick Shot / Shutterstock.com
「おばあさんを出迎えに来たのは、日本人と結婚して現在は日本に住んでいる、ネパール人の娘さんでした。おばあさんは、娘さんに会いに来たんですね。
娘さんは、おばあさんのことをすごく心配していました。初めての訪日で、住んでいるネパールとの環境のギャップがかなり激しかったようです。無事到着したことを本当に喜んでいました。おばあさんも、娘さんに会えてホッとしたのか、急に私のことを拝み始めたんです。
空港に勤務していると毎日のように旅行慣れしている人々に会うので忘れがちですが、海外を訪れるということは、ものすごく不安が大きいことなんですよね。ましてやご高齢で、近代化されていない地域からの初めての訪日といえばなおさら。一世一代の海外旅行の現場に立ち会って、海外旅行というものの大きさを、改めて感じた出来事です」(蒼井さん談)
[All Photos by shutterstock.com]
※画像はすべてイメージとなります。画像と実際のエピソードとの関係はございません。