トラベルで使えるお願い英会話表現を考える今回の特集。3回目はショッピングの場面で役立つ英会話表現を取り上げたいと思います。基本的な考え方については初回の『お願い上手のトラベル英会話【飛行機編】「座席を倒してもいいですか?」』に書かれています。この回から読んだ方は、ぜひとも初回の記事もチェックしてみてくださいね。
ちなみに掲載した表現は全てネイティブスピーカーのチェックを受けています。条件さえ合致すればそのまま丸暗記で使えますが、どのようなときにどのようなスタンスの表現が適切なのか、できれば毎回文中のように考えてみると、上達もぐっとスピードアップするかもしれませんね。
「試着したい」は「Can I」と「May I」のどっち?
最初は試着したいときの英語表現から。旅先でショッピングをするだけでも、なかなかハードルが高く感じますが、さらに試着をお願いするとなると大緊張ですよね。
この場合、相手は初対面。「試着をしたい」というお願いは、販売員にとって受け入れる義務のあるお願いなのでしょうか。セレクトショップを経営している知人に聞いてみると、お店の側からすれば試着を断っているお店もあるため、義務とは言えないはずだとの答えがありました。そこで関係はBになります。
今度はお店の側の負担を考えて、表現を調整します。試着室(fitting room)がある店の場合は、試着を許しても特に負担はないと考えられますから、同じBでもB-になります。よって、「かなり丁寧にお願い」する必要もなく、格下げして「丁寧にお願い」すればいいと分かります。
ただ、いきなりお願い表現を店員にぶつけるわけにもいきませんから、
「Excuse me.」
と呼びかけます。その上で、丁寧なお願い表現として中学校の教科書に載っているベーシックな表現、
「Can I try this on?」
「May I try this on?」
(試着してもいいでしょうか?)
と言います。「Can I」と「May I」の違いは、『お願い上手のトラベル英会話【レストラン・カフェ編】「割り勘にして」は何て言う?』で紹介しました。この場合、試着室がお店にあれば、「May I try this on?」が適していますね。試着は物理的にできるともう分かっているのですから、「試着してもいいかな、駄目かな」という半々な気持ちで、「May I try this on?」と聞きます。
洋服店でも試着室がない場合は、物理的に試着が可能かどうかも分かりませんし、お店の側が試着を認めていない可能性も高いです。その場合は、「Can I try this on?」と聞くと適していますね。
「小分け袋がほしい」も「Can I」でいいの?
次は小分け袋が欲しい場合を考えてみます。この場合は、洋服の試着と同じで、初対面の店員さんに対し、お店の側に義務のないお願いをするためBですね。
ただ、小分け袋を用意するという作業は、経営者にとっては別かもしれませんが、少なくともレジで会計をする店員さんにとって、大した負担でもないはずです。まして、迷惑にもなりませんので、同じBでもB-で問題ありません。「かなり丁寧にお願い」を「丁寧なお願い」に格下げします。
ただ、一応初対面の相手に義務のないお願いをするのですから、
「Excuse me.」
と呼びかける必要はあるはずですよね。その上で、
「Can I have some extra bags, please?」(幾つか余分に袋をもらえますか?)
と聞きます。この場合、物理的に相手は袋を持っていると分かっていますが、「May I」だと、小分け用の袋をお店の側が当然用意しているという前提に立った上で、「もらえるかな、もらえないかな」と聞いている感じになります。今回は、小分け袋を追加でもらう行為が可能かどうか分からずに聞いているのですから、「Can I」が最適ですね。最後に、
「Thank you.」
と、感謝の気持ちも忘れずに添えたいです。
「カードと現金合わせて支払いたい」は英語で何て言う
最後はカードと現金を組み合わせて支払いたいとお願いする場合を考えてみます。現在はキャッシュとクレジットカードを組み合わせて支払う人も減ったと思いますが、この手のちょっとややこしいお願いはどうすればいいのでしょうか?
相手は初対面。クレジットカードと現金を組み合わせたいと希望するこちらのお願いに応える義務は、基本的に店員さんにはないと考えられます。関係はB。
ではクレジットカードと現金を組み合わせて支払いを受け付けるという作業は、店員さんにとってどの程度の負担になるのでしょうか。恐らくちょっとした作業にはなると思われますが、慣れたスタッフであれば、それほど難しいレジ操作ではないはず。同じBでもB-、「かなり丁寧にお願い」しなくても、「丁寧にお願い」すれば十分だと思われます。
また、それほど大変なお願いではありませんから、前後で言葉を尽くし、前置きや手間に対する謝罪などを口にする必要もないと考えられます。
支払いのタイミングになったら、
「Could you accept some cash and the credit card for the remainder for the same purchase?」(支払いに現金と、その残金にクレジットカードを組み合わせてもらえますか?)
と聞いてみる方法が考えられます。中学校の教科書で習う丁寧なお願い表現に、便利な言葉として「Can you」がありました。この場合は、現金とクレジットカード払いの組み合わせが物理的にできるか分からずに聞いているのですから、「Can you」とcanを使いたいです。
さらに、少し複雑なお願いをしていると自覚し、少し相手に迷惑をかけるかもしれないと感じて恐縮しているのなら、canをcouldに変え、丁寧さを増すとちょうどいいかもしれません。
過去の連載でも何度か出てきましたが、遠慮する気持ち、恐縮する気持ちがあると、人は自然と物事を遠ざけ、距離を取りますよね。英語表現でも同じで、遠慮や恐縮、控えめな気持ちがあると、言葉の時制を1つ「遠ざけ」ればいいのですね。結果として仮定法になり、「あくまでも現実ではない、仮の話なのですけれど……」という雰囲気が出るようになります。
もし引き受けてくれたら、
「Thank you.」
と感謝の気持ちを口にしたいですね。
以上、買い物で使えるお願い表現を考えてみましたが、いかがでしたか? 相手との距離を考え、相手が自分のお願いを引き受ける義務があるかどうかを考えます。その上で、迷惑の大きさによって表現を調整し、プラスして前後の言葉を必要なら尽くして、相手の心をケアします。
単に丸暗記した例文を使うのではなく、お願い表現、前後の言葉も細かく調整して、自分の気持ちをぴったり表現できるといいですね。最後に笑顔で「Thank you」の言葉を忘れないようにしたいです。
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