世界遺産がひしめくイタリアの中でも異彩を放っているのが、アグリジェントの遺跡地域です。アーモンドの花祭りが行われる町の、乾いた土地と青い空によく映える神殿の数々をご覧ください。
アグリジェントの遺跡地域
シチリア島の主要都市であるパレルモから南へ128km進んだところに、アグリジェントの遺跡地域があります。海に面した高台にありますが、20近くの遺跡が集まっているその奇跡の土地を、人々は「神殿の谷」と呼びます。
島の南海岸、つまり地中海に面したその地は、紀元前6世紀からギリシア植民地として有数の都市でした。
古代の建物は、その後の長い歴史の中で人々の手で改造されてしまうものが多いなか、アグリジェントは典型的なギリシア植民地の様子を今に伝える特別なもの。
当時の形状をほぼ完璧に残しているのが、紀元前430年に建設されたコンコルディア神殿です。1748年に復元作業が行われ、ドーリア式建築の荘厳さ、美しさを誇っています。
ユネスコのロゴはパルテノン神殿を模ったものと公式発表されていますが、この神殿がモデルになったという説明がロンリープラネットのガイドにはあります。パルテノン神殿は、屋根など崩れていますから、この神殿もヒントになったのかもしれませんね。
「ギリシアよりギリシアらしい」(トリップアドバイザー)という旅行者のコメントにも納得してしまうような完璧さがここにはあります。
神殿が最も美しいとき
「人間の建てた町の中で最も美しい」とは、古代ギリシアの詩人であるピンダロスがアグリジェントを評した言葉です。当時の神殿は、大理石が塗装され、明るい色合いで色付けされていたそうですから、鮮やかな町だったのでしょう。
筆者は、灼熱の土地と化した8月にこの地を訪れました。地中海を挟んだアフリカは近く、夕方の時間帯であっても陽射しは刺すようで、歩くたびに小さく土ぼこりが舞っていました。約1300ヘクタール、東京ドーム約278個分の敷地は、夏には残酷なほどの広さです。
しかし、この石灰岩だけとなった今の神殿が、抜けるような青い空にむかってそびえる様には、圧倒的な美しさがありました。乾いた土さえ、この町の栄華が過去のものになったという侘しさを伝える大きな役割を果たしていました。
陽が沈み始めると、哀愁が色濃くなります。
あたりが暗くなると、まるで宇宙への通信基地のような様相を呈します。
その後は、ライトアップされ、幻のような美しさに。ご自身の目でその移り変わりをご覧いただく価値は十分あります。
[All photos by Shio Narumi]
参考
[イタリア政府観光局(ENIT)]
[UNESCO]
[lonely planet]
[Slow Europe]
[Parco valle dei temple Agrigento]
[トリップアドバイザー]