結婚式を控えたインドの花嫁の手先から腕、そして足に施される、緻密で繊細なボディーペイント「メヘンディ」。日本では、ヘナアートの名で呼ばれています。今回は、そんなメヘンディの優雅でエキゾチックな世界へお連れします。
お祝い事を彩るアート
ヒンドゥー教徒の結婚式やお祭りに欠かせない存在のメヘンディは、かつては女性だけのものだったそう。時代の移り変わりとともに、現代では男性も楽しむようです。ペイントは、手の甲と手のひら、足、そして場合によっては肩や背中にも施されます。
ヘナは、指甲花(しこうか)と呼ばれるハーブをすりつぶしてペースト状にしたものです。かつてはヘナペーストを手作りしていたそうですが、現在は市販品を使うのが一般的。
天然のカラーリング剤であるヘナは、肌に絞り出したら完全に乾くまで放置することで色が定着します。ペーストはダークブラウンですが、肌に残るのは赤みがかった茶色です。
アーティストの手にかかれば、こんなに緻密な柄までも表現できてしまいます。色が最も濃く出るのは、2~3日後。その後1週間程度で薄れていきます。
花嫁にメヘンディを施すのには、なんと6時間近くかかることもあるのだとか。それだけ大切な伝統だということなのでしょうね。
花嫁のみならず、参列者もヘナアートをすることも。
メヘンディにこめられた思い
インドのみならず、北アフリカや中東諸国でも愛されているメヘンディですが、そこには一体どんな思いが込められているのでしょうか。
インドでは、メヘンディに使われる指甲花は、幸運の女神として親しまれる神様ラクシュミーが愛する植物だと言われています。そのことから、メヘンディには幸せをもたらす力があると考えられているようです。
色が濃く出ればでるほど、花嫁は幸せになれると言われています。
インド人の好むゴールドとの相性も抜群です。
日本や欧米、そして東南アジアの観光地では、インスタントタトゥーとして人気のあるメヘンディ。刺青のようで、少しギョッとしてしまいますが、その裏には人びとの幸せを願うあたたかい心が隠されているようです。
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