ルーマニアの北部、サプンツァ村には「陽気な墓」と呼ばれるカラフルな墓地があります。村の誰もが知っている、一番その人らしい姿を、ユーモアあふれる絵と詩で彫り上げた墓標が並んでいるそうです。
墓を明るいものにしたい、と最初にこの墓標を作ったのが木彫り職人のスタン・イオン・パトラシュという青年でした。
愛する人を失った悲しみが癒えるようにと、始めたそうです。
描かれているのは、職業や特技、ときには死因も
墓標はたいてい、一番上から屋根、十字架、故人を描いた絵、詩という構成になっています。
墓標の言葉がわからなくても、絵を見るとその人の生前の姿を想像し、身近に感じることができます。
警察官、農夫など、一目で職業がわかる人たちも。獣医さんもいます。お料理が得意だったような女性もいます。
止められてもお酒とタバコを愛した人、でしょうか?
でも中には死因が描かれた、陽気と言えない墓標もあります。
まだ幼くして車にはねられてしまった人、敵兵に殺されてしまった人も……。
他にも、落雷、強盗、溺死なども。
なぜわざわざ墓標をこんな絵にするんだろう……と思ったのですが、もしこの絵がなければ、この人たちの無念に共感した世界中からの観光客も、存在しなかったでしょう。
パトラシュ本人の墓標もあります。現在は、弟子の方たちが墓標作りを継いでいるそうです。
時代をこえる作品を残したり、偉業を成し遂げたわけでなくとも、世界中から訪れた人たちが墓標を見て、その故人を感じ、心に留める。それってすごいことだなあと、しみじみ思うのでした。
住所 Sapanta 756 Maramures
入場料 5レイ