手軽になった外国人の友達作り
「旅行を主に取り上げるメディアの『TABIZINE』がなんで国際ロマンス詐欺について書くの?」と一部の読者は思うかもしれません。
最初に断っておきますが、広告記事でもなんでもありません。なかなか海外へ行けない閉そく感のあるなかで、非日常の何かを求めてマッチングアプリで外国人の友達を探す人も一部にはいるのかなと思ったからです。
例えば、英語圏のネイティブスピーカーに、言語交換(自分は日本語を相手に教えて、相手からは英語を教えてもらう)のパートナーを探す人もいるかもしれません。
初めのうちは単なる勉強のつもりでも、いつしか恋心に気が付いて、モニターの向こうの人に特別なつながりを求め始める可能性もあるはずです。
気が付きにくい落とし穴も!?
しかし、いかなる理由があっても、お金の用立てをお願いされた時点で怪しんだほうがいいのだとか。小山さんによれば、
「身分証も預貯金の額もオンライン上では見せかけることが可能です」
とのこと。相手を信用させるために、例えばアメリカ人になりすまし、IPアドレスも偽装する詐欺集団はいくらでもいるそうです。
例えば、ほかの地域の人がアメリカ人・オーストラリア人・カナダ人になりすまし、オンライン上で知り合った異性と疑似的な交際に持ち込み、恋愛感情を逆手にとって金銭的な何かを引き出そうとする犯罪が後を絶たないそうです。
30~50代の独身・貯蓄のある女性はご注意を
また、
「女性の場合は30代から50代、独身である程度の貯蓄がある人がカモにされるケースが多いです」
とも。
例えば「自分はアメリカの軍医でシリアに駐留している。君に会いに日本へ行きたいのだけれど、軍隊にいるのでお金が自由にならない。旅費をいったん立て替えてくれないか」などと要求してくれるそうです。
「軍関係者はよく使われる手段。不意に連絡が取れなくなった時も、納得のつく言い訳がしやすいからです」
とも教えてくれました。
読者の中にはひょっとすると、今まさにアメリカ人などの軍関係者とコンタクトを取っている人もいるかもしれません。まだ金銭の要求がなされていなくても、少し慎重になったほうがいいかもしれませんね。
被害総額は304万米ドル(約324億円)にも
とはいえ、マッチングアプリの相手が必ずしも偽者とは限りません。本当の友達から金銭的なサポートをお願いされるケースもあるでしょう。
筆者も少なくとも3回はあります。1人はフィリピン人、2人はネパール人です。フィリピンの人からは台風で被害に遭ったので援助してほしいとの話。ネパール人からは、家を建てる費用が足りないので貸してほしい、研究開発費がないのでサポートしてくれないか、それぞれそんな話でした。
台風被害以外はすべて断りましたが、本当の話の可能性も含めて、オンライン上でつながりのある外国人が詐欺集団の一員かどうか見抜く方法はあるのでしょうか?
「身分証明書などに使われる写真に使い回しがないかをチェックするサイトはあるのですが、基本的には会ってもいない相手からお金の要求が出たらやはり疑うべきです。
アメリカのFTC(連邦取引委員会)の統計によると、2020年(令和2年)のロマンス詐欺による被害総額は304万米ドル(約324億円)に達していることがわかっています。
日本には言葉の壁があって、海外諸国に比べると国際ロマンス詐欺の流行ははっきりと確認できていません。しかし、ITリテラシーの向上、コロナ禍による自粛生活の精神的な孤立、オンラインデートやオンライン上での出会いの増加など、海外詐欺師が日本へ進出しやすい環境は整いつつあります。
とにかく、会ってもいない相手からお金の要求が出たら要注意だと思って冷静な対応を心掛けてください」
コロナ禍でリアルな出会いの場が制限されている今、オンラインへの依存が高まっている人も少なくないのではないでしょうか。
そのような時に注意したい国際ロマンス詐欺。なまじっか外国語に興味・スキルがある人や、国際結婚でマンネリ化した日常を一変させたいなどと願望を持つ人などは特に要注意ですね。
株式会社Japan PI 代表、調査員歴30年を超えるバイリンガル探偵。1992年、東京都渋谷区の追跡調査センターへ入社し、現場調査員やケースマネージャーとして経験を積む。2002年、東京都新宿区にてJapan PIを創業し独立。探偵業務と外国語学習をライフワークとし、日本と海外で調査を行う。国際調査協議会(CII)、および世界探偵協会 (WAD) 会員。Japan Times、Beacon Reportsなど取材歴多数。
https://www.japanpi.com/
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