ストロッツィ宮美術館における展覧会の新情報
ルネッサンス芸術発祥の地フィレンツェには、今でも美術館が数多く存在し、面白い展覧会が目白押しです。その中から最新情報、ストロッツィ宮美術館で2015年9月24日より新たに公開された展覧会情報をお届けします。
テーマは「神の美」、その見せ方が面白い!
「Bellezza divina」=“神の美”と題されたこの展覧会は、キリスト教に関する絵を集めたものです。宗教画といえば、その宗教でないかぎりなかなか取り付きにくく、またその絵の背景に語られる思想を理解してこそ分かることも多いのですが、この展覧会はそういった宗教の垣根や、小難しさを感じさせない切り口で展示されているのです。
その切り口とは、例えば「聖母マリア」や「祈り」など、宗教に関する分かりやすいテーマごとに展示してあることです。同じシーンを描いた別の絵を集め、見比べることによって、その絵のテーマもですが、それ以上に絵そのものの表現力を見比べることが出来るのです。
さらに絵のセレクトは年代、作者問わず並べられているのもおもしろいところ。例えば「祈り」がテーマの部屋には、ミレーの「晩鐘」、ムンクの「祈る老人」がともに並んでいます。同じ祈りのシーンですが、その表現も伝えるものも全く違います。もちろん、その絵の技法の違いを楽しむこともできますし、また同じテーマでありながら全く違うものを伝えようとする作品を見比べることによって、「祈り」というものを改めて考えさせられるきっかけにもなります。
初めて見るゴッホの深淵
展覧会の目玉のひとつとなっているのはゴッホの「キリスト降架」。ゴッホといえば鮮烈な色使いが特徴とも言えますが、この作品はなんとも優しい慈愛に満ちた青色で描かれています。
マリアの瞳には母の悲しみが浮かんでいるのですが、その表情やキリストを包む柔らかな仕草に深い愛情を感じさせるものがあります。それはあたかも運命を悟り、受け入れ包み込む深い慈愛に満ちているように思います。このようにあたたかく慈愛に満ちた彼の色を見たのは初めてな気がします。
その鮮烈な色使いから、情熱の画家という印象が強いですが、一般に語られている規定概念をはらってそんな風に素直に絵を感じることができたのは、このテーマの中の1枚の絵としてこの絵を見たからかもしれません。
視点を変えることによってこんなにも身近になる「芸術」
宗教画は歴史や文化を語るものくらいしか思っていなかったのですが、自分で勝手に持ってしまったイメージを取り払ってみれば、実に面白くながめることができました。そこには生きることを求める人々の純粋な願いがあり、真摯に生きる姿こそ美しいのだとこの展覧会を通して感じました。
こういった素晴らしいキュレーションを見せてくれるのは、やはり芸術の都ならではと関心しきりです。
何はともあれ、芸術の秋にかこつけて、普段は芸術にはあまり目を向けない方も、ちょっと違った視点で見てみてはいかがでしょうか? もしかして、知らなかった世界の中に、新たな面白さをみつけられるかもしれません。
[All Photo by Ryoko Fujihara]
[ストロッツィ宮美術館展覧会「Bellezza divina」]