イタリアのクリスマスのお菓子といえばパネットーネ。クリスマスを待つ、待降節(たいこうせつ:キリスト教の暦でクリスマスまでの準備期間)の時期に、友人や親戚に配る習慣があり、今でもこの季節になると街には、プレゼント用にかわいくラッピングされたパネットーネが並びます。
パネットーネってあの大きなパサパサした甘いパン? と思った方もいらっしゃるかもしれません。日本でも、輸入食材店などで取り扱っているところもありますが、大量生産品でなく、手作りで作られたものは、ふんわり、しっとり、そしてフルーツのような甘い香りがするのです。そのおいしさの秘密はイタリアの北部にあるコモ湖でしか取れない特別な酵母菌のおかげ。
イタリアからのおいしいクリスマス準備、パネットーネのお話です。
受け継がれた伝統の天然酵母、クリスマスの特別なごちそうになった理由
パネットーネはブリオッシュ生地のドーム型の大きな菓子パン。イタリアのクリスマスの伝統菓子です。パネットーネ作りに不可欠なのがパネットーネ種。イタリア北部のコモ湖周辺でしか採れない特殊な酵母菌です。酵母と乳酸菌が共生するとてもデリケートなもので、ある一定の気温、湿度、環境でしか育ちません。これを使って発酵させたパンは、とても風味がよく仕上がります。例えるなら果物が熟していくその過程で醸し出す、自然でやわらかな甘い風味。美味しいものに飽くなき情熱を持つイタリア人が、クリスマスの特別なごちそうとして用いるのですから、その美味しさは格別です。
とてもよい風味を持つパネットーネ種。だったら、普段のパンにも使えばと思うところですが、とてもデリケートな酵母なので、発酵にもじっくり時間をかけなければなりません。発酵と生地をねかせることを何度も繰り返し、手間のかかる作業です。この手間もまた特別感を感じさせてくれます。
また、パネットーネ種に含まれる乳酸菌がパンを自然に守ってくれるので、長期の保存も可能なのです。昔ながらの知恵ですね。
友人や親戚から贈られたパネットーネはクリスマスを待つ間、そしてクリスマス、お正月までのお祭り期間、朝食に、デザートにと少しずつ楽しみに食べます。大きなパネットーネを切り分けて、家族で、友達で、みんなで分け合って食べるのがまた楽しく、心温まるクリスマスの光景です。
クリスマスを心待ちにする楽しい気持ちとともに食べるお菓子パネットーネ。日本にも輸入されていたり、また酵母を仕入れて実際に焼いているパン屋さんもあるとききます。もし街のどこかで見かけたら、イタリアの伝統的なクリスマスの味、味わってみてください。
[All photos by Ryoko Fujihara]