(C) facebook/FEITORIA DO CACAO
「ビーン・トゥ・バー」という言葉をご存知でしょうか。英語で書くと「Bean To Bar」、直訳すると「豆からバーに」。これは近年のチョコレートづくりにおけるひとつのムーブメントで、カカオ豆の選別やロースト、粉砕などの加工からチョコレートバー(板チョコ)になるまでのプロセスを、全て作り手が手がけることを指します。
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2015年12月にポルトガル中部の街アヴェイロ(Aveiro)にそんなビーントゥバーのチョコレートショップがオープンし、話題になっています。
不思議な夢に導かれたチョコレート作りへの道
お店のオーナーは、ポルトガル在住日本人の菅知子さんと現地の親友スー・タヴァーレス(Sue Tavares)さん。
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スーさんが失職中に見た「チョコレート作りをするようになる」という不思議な夢に導かれるように、ショコラティエ(チョコレートからお菓子を作る、チョコレート専門の菓子職人。カカオ豆からチョコレートを作る職人とは別)になることを意識するようになった二人。ショコラティエ養成コースの受講申し込み後、アフリカの小島、旧ポルトガル領のサントメ・プリンシペ民主共和国が良質なカカオの生産地で、チョコレートと縁の深い場所だと知ります。コースが始まる前に視察のため現地を訪れようと2014年7月に当地に降り立った二人は、訪ねたカカオ農園でサントメの人々の無垢なやさしさとホスピタリティーに感動する一方、あまりにも過酷な彼らの経済生活にショックを受けたといいます。
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菅さんはTABIZINEの取材に対し、「リッチできらびやかなチョコレート産業およびその消費国と、カカオ生産国との間の経済的ギャップはひどすぎます。カカオ生産者のためにできることはないだろうかと考えました」と当時の気持ちを語ってくれました。
「ビーン・トゥ・バー」を目指すチャレンジ
そんな中、二人は「ビーン・トゥ・バー」の潮流がアメリカを中心に広がりつつあることを知り、カカオ購入者になるべく、急きょ「チョコレート・メーカー養成コース」も追加申請。そして2014年の8月から11月にかけてショコラティエ・コースから休みなくチョコレート・メーキングの2つのコースを受講することになりました。そしてコース修了後、2015年3月には早くも自宅でチョコレートの試作とオリジナル・デザインのパッケージ試作をスタートし、サンプルを配る生活に。
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そのひとつが日本の輸入関係者の手に渡り、ショップの工房設備が整う前に発注予約が入ってしまったからさあ大変! 食品に関する施設をポルトガルでオープンするための厄介な認可取得や様々な事務手続き、更には、自分たちの工房とはいっても慣れない機材を使っての初めての生産で時間との戦いが続きます。
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菅さんたちの作るチョコレートは乳化剤を使用しないため、微細な温度や湿度の違いで品質に違いが出てしまうそう。失敗しては再びチョコレートを砕いて溶かしてやり直し、なのにまたも失敗というループを夜じゅう繰り返したこともあったといいます。そんな努力がみのり、なんとか期日までに日本輸出用の生産を終えることができたのです。
ショップのオープンと、新たな目標
(C) facebook/FEITORIA DO CACAO
そしてついに、2015年12月にはアヴェイロでチョコレート・ショップ「FEITORIA DO CACAO」(フェイトリア・ド・カカオ)をオープン。地元の新聞やラジオ局が取材に来るほどの話題を呼びました。
(C) facebook/FEITORIA DO CACAO
店内にはリラックス・スペースのソファも。お二人のホスピタリティが感じられますね。ですが、菅さんとスーさんの挑戦はまだ始まったばかり。実は、お店を開くきっかけにもなったサントメ・プリンシペ民主共和国産のカカオを取引条件の関係でまだ取り扱えていないのです。現在は主に中南米産のカカオを使用しているそうですが、決して夢を諦めたわけではないので、いつか必ずサントメ・プリンシペのチョコレートを作りたいと菅さんは語ってくれました。
菅さんたちが品質にこだわって作る、異国情緒あふれるチョコレート。日本での取扱店もあるので、ぜひ食べてみたいですね!
アンコンプレ
■販売店舗
カカオストア テオブロマ
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-6-8
電話:03-3460-1726
PLAZA GINZA
住所:東京都中央区銀座5-3-1 ソニービル B2F・B1F
電話:03-3575-2525