ヨーロッパの冒険家たちが憧れたトンブクトゥ。マリのサハラ砂漠南端にあるこの地は、かつて謎の黄金郷として地図に記され、金・塩・象牙・書籍の交易で栄華を極めた、西アフリカで最も裕福な地域でした。
金をばらまいた帝国の王
ラクダの隊商は北から岩塩を運び、南から採れた金と、この地で交換されました。マリ帝国はその交易に課税をし、莫大な利益を手に入れます。王はメッカ巡礼の際、人夫6万人に3kgずつ金を運ばせ、帝国の威力を印象づけるため先々でばらまいたのです。
これが黄金郷伝説を生むきっかけとなり、多くの冒険家がトンブクトゥを目指します。しかしもちろんそこに金はなく・・・皮肉なお話ですね。
泥とワラでできた知の殿堂
泥でできた要塞のような、独特の趣きを持つサンコーレ・モスク。当時は大学として機能し、2万5000人もの学生がいたそうです。
屈指の学問所だったジンガリベリ・モスクは、建設費に200kgもの黄金が使われました。しかし建物自体はワラと泥が材料。何だかおかしな話ですね。
西アフリカでは「塩は北から、黄金は南から。だが神の言葉と知恵の宝はトンブクトゥから」と伝えられるように、ここは学問と宗教の都市でもあったのです。
双子の姉妹ジュンネ
トンブクトゥと「双子の姉妹」都市と言われるジュンネには、日干し煉瓦で造られたものとしては世界最大のモスクがあります。素朴な美を感じる建物です。
建物維持のため、毎年祭りの際に手入れをするそう。突き出た棒を足場にして、泥を塗り付けて化粧なおしをします。
1998年に世界遺産に登録されて以来、人気の観光スポットとなりましたが、数年前に外国人誘拐殺害事件が起き、観光客の数が激減。砂漠化の波も押し寄せ、2012年にはユネスコの危機遺産リストに加えられ、現在は外務省から退避勧告が出ています。
かつての栄華を、とまでいかなくとも、このままさびれゆく地とならぬことを願ってやみません。
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