星野リゾートの『OMO5 金沢片町』は金沢初心者に最適の都市ホテルだった

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Oct 25th, 2022

星野リゾートの都市ホテル『OMO5 金沢片町』に泊まった後、筆者にとっては通い慣れたまちの風景の「解像度」が何メモリも上がった、そんな気がしました。OMOレンジャー(ホテル周辺をガイドしてくれるスタッフ)とのまち歩きからホテルの体験プログラムまで、「OMO」の宿泊体験記を紹介します。金沢旅行を近く予定している人、特に、初めて金沢へ訪れる人は、最後までぜひ読んでみてください。


金沢中央味食街をガイドしてくれる「ご近所ガイド OMO レンジャー」とまち歩き参加者

金沢の商店街に開業した星野リゾートの都市ホテル

金沢に今まで訪れた経験はありますか? 石川県の県庁所在地にして、江戸時代から続く文化・伝統の集積地が金沢です。

まだ足を運んでいない人であっても、京都みたいに古いまち並みが残っている、一方で『金沢21世紀美術館』を代表するように、現代アートっぽい洗練された新しさも感じられる、そんな印象があるのではないでしょうか。


片町にある竪町商店街に面した場所に立地している

その金沢の中心部には「片町」と呼ばれる繁華街があります。「片町は、日本で最初の商店街が生まれた場所だ」と主張する人も居るくらい、明治・大正・昭和を通じてにぎわってきたエリアです。

その「片町」の持つポテンシャルをあらためて評価し、商店街のメイン通りを選んで開業したホテルが『OMO5金沢片町 by 星野リゾート(以下、OMO5金沢片町)』です。

星野リゾートと言えば、軽井沢や竹富島にある最高級ブランド『星のや』などを連想する人も多いかもしれません。しかし実際は、いろいろなタイプの宿を展開していて、値段的にも雰囲気的にも「OMO」ブランドはかなり親しみやすい部類に入ります。

「OMO レンジャー」が金沢では効いている


『OMO5 金沢片町』のパブリックスペースの様子。奥には「OMO レンジャー」おすすめの飲食店情報が掲載される「ご近所マップ」も見える。マップ情報は日替わり。季節や天候などを考慮してスタッフが今日おすすめしたい飲食店の情報を掲載する

星野リゾートの数あるブランドの中で「OMO」(全国に11カ所展開)の特色と言えばやはり「ご近所ガイド OMO レンジャー(以下、OMOレンジャー)」だと思います。

失礼ながら、ふざけたネーミングだと初めて耳にしたときは思いました。今でも正直、ちょっとだけ思っています(すみません)。ですが「OMO レンジャー」の働きが『OMO5 金沢片町』では特に効いているなと今回の宿泊で感じました。


「OMO レンジャー」のたまきちさん。「金沢片町味わいまっし散歩」の途中で立ち寄った和菓子屋『茶菓工房たろう』の前で

初めて耳にした人にちょっとだけ説明しておくと「OMO レンジャー」とは、マルチタスクをバリバリこなす(フロント係から清掃員までなんでも担当する)星野リゾートのスタッフたちが順番に担当するまち歩きガイドです。

「金沢片町味わいまっし散歩」と名付けられたミニツアーが金沢の場合は用意されていて、ホテル周辺のグルメスポットや見どころを一緒に歩きながら紹介してもらえます。

ゲストからすれば「地元の人」だとか「現地の友人」に限りなく近いホテルスタッフに周辺の飲食店や見どころを教えてもらえるわけです。


「金沢片町味わいまっし散歩」の様子。金沢おでんの老舗・名店や話題の新店に至るまでレンジャーの知識量にガイド参加者は終始目を輝かせていた。「金沢片町味わいまっし散歩」は途中離脱もありなので、気に入ったお店が見つかれば、散歩の途中ですぐに飲食を楽しめる

OMOレンジャーたちは単に「物知り」なだけではありません。日ごろから近隣のお店に足しげく通って、地元店の店主やスタッフたちとの人間関係もしっかりつくり上げています。

「金沢の人たちがとても寛大だから」

と、取材に応じてくれたOMO レンジャーのたまきちさんは謙遜していましたが、実際には、かなりの頻度でお店に顔を出し、関係構築に時間を割いているのだと思います。

OMOレンジャーたちと道すがらに挨拶の言葉を交わす地元飲食店のオーナーたちの表情を見ても、普段の地道な活動量が伝わってきます。聞けば、一見さんお断りで知られる金沢の各茶屋街にあるお茶屋さんも、場合によっては紹介できるみたいです。

そうした人間関係込みでOMOレンジャーから提供されるおすすめ情報には、一般的な口コミサイトも及ばないと思います。

ガイドなしよりも「21美」を楽しめる


『金沢21世紀美術館』の敷地内にあるパブリックアートを解説する「OMO レンジャー」。普段は混み合う人気の美術館だが、ツアーが朝一で開催されるため、のんびりと館内の無料ゾーンを楽しめる。8時45分~10時に通年で開催。定員は最大8名で参加は無料。前日24時までに要予約

OMOレンジャーと一緒にまちを歩くコースの選択肢には金沢きっての観光地『金沢21世紀美術館』見学も用意されています。

聞けば、金沢21世紀美術館が民間の企業と一緒にオリジナル体験ツアーを用意する機会はこれまでなかったそう。『OMO5 金沢片町』がまちに溶け込むまた別の一例ですよね。


『金沢21世紀美術館』は無料ゾーンと有料ゾーンに分かれる。「金沢21世紀美術館お散歩ツアー」では無料ゾーンを案内してくれる。お散歩ツアーは現地で終わるので参加者はそのまま、有料ゾーンの作品鑑賞も自分の意思で楽しめる

OMOレンジャーと一緒に回ると、美術館に関するユニークな情報が次々と出てきてびっくりします。

まがりなりにも、北陸を拠点にするウェブメディアの編集長を務める筆者です。金沢には何度も足を運んでいます。にもかかわらず、金沢21世紀美術館の見え方がOMOレンジャーのガイドですごく深まりました。


OMOレンジャーのかんちゃん。館内に置かれた椅子を美術館スタッフがどのような「隠語」で呼んでいるかなど、普通では知りえない豆知識でツアー参加者を終始楽しませてくれる

「金沢21世紀美術館お散歩ツアー」を一緒に回った方々の中には金沢初体験の人たちも少なくなかったようです。言われなければスルーしていた数々の見どころに関心を注ぎながら見学できるので、ガイドなしで訪れるよりも初めての「21美」をはるかに楽しめたはずです。

日本三大菓子どころらしい体験プログラム


OMOレンジャーのゆきんこと共に「生らくがん作り体験」を楽しむ宿泊者たち。開催時間は15:30~16:00で参加費は1,000円。定員は8名で要予約

金沢と言えば、和菓子を中心とするスイーツも欠かせません。京都・松江と並び、日本三大菓子どころとしても知られる土地柄を生かしたOMOレンジャーとの交流もホテルの中に用意されています。


筆者のつくった生らくがん。粉のこぼれる出来栄えがいかにも未熟だが粉だけ食べてもおいしかった。体験後は、棒茶と一緒に楽しめる

例えば「生らくがん作り体験」は和菓子に対する従来の印象を一変させてくれました。

落雁(らくがん)とは、型に入れて打ち出した、美しく上品な乾菓子です。しかし正直、一般的な落雁をおいしいとは(筆者の未熟な感性では)今まで思えませんでした。

しかし、今回の体験でその印象は見事に一変します。

和三盆糖や寒梅粉(もち米を蒸して乾燥させ粉にひいてさらした粉)、白あんといった原料を混ぜた上で、粒あんの玉を挟み込むように型で押し固めてつくる生らくがんは、手に持ったときの重みとしっとりした手触りがまず新鮮でした。

口に入れてからはもっと驚きで、もちもちした食感と寒梅粉の穀物感、粒あんの甘みを舌の上で長く堪能できます。


写真は、加賀棒茶の老舗『野田屋茶店』の茶葉で楽しむ「いいじな棒茶の飲み比べ体験」の様子。ホテルのロビーで開催され、館内でも茶葉は購入できる

硬貨ほどの大きさしかない生らくがんですが食べごたえはなかなかで、棒茶と共にいくつか口にしただけで、かなり満足できます。

和菓子やあんの意外な一面や新たな可能性を、これほど鮮やかに見せてもらえるとは想像していませんでした。

ふらっと訪れてわかるほど金沢は浅くない


1階ロビーにある「OMO カフェ」でくつろぐ利用者。7時~23時(ラストオーダー22時30分)が営業時間で、11時~23時までは外来でも利用可能なので、近所の人やビジネス客など多くの人が出入りしている

食材に触れ、生らくがんで味覚を刺激した上でまちに繰り出すと、和菓子を見る目も少しだけ変わっている自分に気づきます。

公平に言って、京都ほど金沢は深く広いまちではありませんが、ふらっと「丸腰」で訪れてわかった気になれるほど浅くもありません。

初めて金沢へ足を運ぶ人が通りすがりの旅人以上にまちを楽しむためには、金沢の見方・楽しみ方の大枠を自分に「インストール」するためにも『OMO5 金沢片町』を選ぶといいのかなと思います。


客室「スーペリア」の様子。OMOハウス・スーペリア・ツイン・ダブル・ドッグフレンドリー(ペットと宿泊可)・ユニバーサルと全101の客室には6タイプが用意されている

もちろん宿泊時は、OMOレンジャーとの積極的な関わりを楽しんでください。逆に、OMOレンジャーと関わりを持たないのであれば、ホテルの魅力は半減してしまうと感じます。そのくらい『OMO5 金沢片町』のコンセプトとOMOレンジャーのサービスは金沢のまちにマッチしていると思いました。

チェックイン・アウト前後に自由に使えるコインロッカーの充実度なども含めて、初めての金沢旅行の拠点には最適な宿です。ぜひ、チェックしてみてくださいね。


「OMO カフェ」の朝食時の様子。5種類のリゾットとクロックムッシュのいずれかをメイン料理として好みでオーダーし、セルフサービスでサラダ、ヨーグルトなどを選ぶ。「棒茶と生麩のリゾット」は中でもパン食で満足できない人、朝からたくさん食べられない人に最適

OMO5金沢片町 by 星野リゾート
住所:石川県金沢市片町1丁目4-23
電話番号:050-3134-8095(OMO 予約センター)
宿泊料金:1泊14,000円~(1室当たり・税込・食事別)
アクセス:JR「金沢駅」からバスで約10分(バス停「香林坊」より徒歩約4分)
公式サイト:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5kanazawakatamachi/
※記載内容は、状況によって内容が変更になる場合があります。

 

 

 

[参考]
ABOUT – 金沢・片町商店街

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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