嵐峡の絶景を楽しむ「空中茶室」
アメリカの旅行専門誌コンデナスト・トラベラーの「Gold List」には、全世界から格付けされたベストホテルが名を連ねます。2023年、この旅行業界で最も権威あるランキングの一つに日本国内から唯一選ばれたのが、「星のや京都」です。2015年、2016年、2017年に続き、4度目の選出となります。
渓谷に建つ「星のや京都」は、その立地から喧騒とは離れたリバービューを楽しめるのが大きな魅力。宿泊客がお茶や読書を楽しみながらゆったりと寛げるライブラリーラウンジには「空中茶室」もあり、素晴らしい景色が望めます。
ライブラリーラウンジから茶室の客用出入口、躙り(にじり)口のような窓から外へ出ると、広がっているのは嵐峡の絶景。それはもう言葉にしがたい開放感です。ただただ風景を眺めるもよし、お茶をいただきながらのんびり過ごすもよし。
非日常を味わうには最高の特等席。少し肌寒い日でも、ブランケットなども用意されているので安心です。
宿泊客に客室でふるまわれるウェルカムスイーツと、無料で貸し出しが可能な野点籠(のだてかご)で優雅なティータイムの時間を過ごすことにしました。ウェルカムスイーツは、「星のや鳥羽玉カカオ」でフレーバーは山椒、柚子、カカオニブの3種類。上品な甘さでお抹茶ともよく合います。
ライブラリーラウンジには、お茶やコーヒー、ハーブティー、京都のあられ・おかきの老舗「藤澤永正堂」のおかきなどが日替わりで用意されています。並んでいる本は京都の書店「恵文社一条寺店」がセレクトしたもの。ラウンジ内はもちろん、客室内でゆっくりと読むこともできます。
船で川をのぼることから始まる特別感
「星のや京都」へは、嵐山・渡月橋近くにある舟待合から船に乗り15分ほどでアクセスできます。船が来るまでは、舟待合2階で御香煎(おこうせん)をいただきほっとひと息。もちろん荷物も預かってもらえます。
日本でも数少ない「船でしか行けない宿」。それだけで特別感がありますよね。舟に乗り、渡月橋を背に、翡翠色の大堰川を進んで行くと、渓谷に建つ星のや京都が見えてきました。
眺望が素晴らしすぎる客室と最高の朝食
今回宿泊したお部屋は、「月橋(つきはし)」。ゆったりと過ごせる広さと眺望が素晴らしい客室です。川沿いの大きな窓からは、大堰川と小倉山の風景を一望でき、時間や季節によって変わる景色が楽しめます。楓の木々の存在感も抜群で、窓がまるで日本画のよう。
そしてなんといっても、このお部屋でいただく朝食が最高なんです。美しい風景を眺めながらいただくのは、「朝鍋朝食(1名 4,598円・税、10%サービス料込)」。
たっぷりのお野菜と生麩とお餅。お雑煮のように、ことことお鍋で煮ていきます。
焼き鮭は忘れられないおいしさ。こういう、あたりまえの朝食の一品が素晴らしくおいしいと、むしろ印象深くなります。
朝鍋のシメは雑炊で原了郭の黒七味をぱらりとかけるとこれまた最高。至福の朝食時間でした。
客室に飾られた季節を感じる生花
築100年という日本建築の趣や意匠を楽しめる造りでありながら、客室は現代に合わせ快適に過ごせるよう工夫が光ります。廊下の床まで温かく、底冷えを感じる京都の冬もなんのその。
しっぽりと落ち着いた空間でいただく夕食
落ち着いた大人の空間、星のや京都ダイニングでいただく会席料理は、「嵐峡の滋味(1名 24,200円・税、10%サービス料込)」。ドリンクは、食事とのペアリングを考えてセレクトされた京都の日本酒(3種類)をオーダー。
先付けは鮑、木耳、菜の花と、春を感じる料理からスタート。木の芽と菜の花の緑が映える一品。
ふぐの薄造りはちり酢とともにいただきます。醤油、一味、レモン、ネギ、大根が入っているというちり酢がとても美味でした。
クレソン、鮪、黄身醤油。
牛フィレ肉炭火焼き。添えられた山葵菜には存在感たっぷりの粒マスタード。金柑ソースの甘酸っぱくほろ苦い味わいがお肉ともよく合います。
シメのご飯は、沖縄でパイナップルを食べて育った臭みがないすっぽんと、ショウガ、九条ネギを一緒に炊き込んだもの。本当にまったく臭みがなく、あっさりとおいしい炊き込みご飯と赤だしが相性抜群でした。
デザートはゆり根きんとん、黒豆きなこアイス、メロン。お腹も心も満たされる、滋味あふれる夕食を終えました。
優雅すぎるひととき。雅な屋形舟「翡翠」での舟遊び
翌日は、雅な屋形舟「翡翠」を貸し切った舟遊びに出かけました。歴史物語「大鏡」三舟の才によると、星のや京都の前を流れる大堰川では、かつて平安貴族が詩歌管弦に興じながら舟遊びを楽しんでいたとされています。
舟は天井までガラス張りで、開放感たっぷりの造り。天井はスイッチ一つですりガラスにもなり、横と縦の二通りのダイナミックに広がる嵐山の風景を味わうことができます。冬季の翡翠は、両サイドが開閉可能なガラス窓。ブランケットや湯たんぽなども用意され快適に過ごせます。
©Hoshino Resorts Inc.
冬季以外は、このように窓の部分に御簾がかかった仕様となり、心地よい風を感じながら舟遊びが楽しめます。
この日の朝、星のや京都がある奥嵐山は時折吹雪く天候でしたが、渡月橋に近づくにつれ、青空が見える清々しい天気に。宿周辺と渡月橋のあたりでまったく異なる天候に驚きました。
舟上で点てたお抹茶とともにいただく、京都の老舗和菓子屋 老松さんのお茶菓子もまた格別です(お茶菓子は季節によって変わります)。
時間:9:00~15:00(うち乗船時間約50分)
料金:45,000円/1組(税・サービス料10%込)
定員:1組1~4名
料金に含まれるもの:屋形舟「翡翠」/野点籠での抹茶体験/主菓子
(アルコール類は別料金)
予約:7日前まで
※荒天の場合、当日でも運航中止の可能性があります。
※季節や天候により運航時間が変更になることがあります。
※5日前~100%のキャンセル料が発生します。
※不定期で除外日あり。詳しくはお問い合わせください。
香りと向き合う「聞香」
星のや京都では、香りを聞く「聞香(もんこう)」体験もできます(1名 3,388円/税・サービス料10%込)。室町時代に始まったとされる、聞香という遊び。
高価な香木の香りを「六国五味(りっこくごみ)」で表現した優雅な遊びは、戦国時代になると戦に出る武将たちのリラクゼーションになったとか。
季節によって意匠を変える京人形が飾られた趣たっぷりの和室パブリック(状況によって場所が変更になる可能性あり)で、静かに香りと向き合う体験。希少な伽羅(きゃら)香木を用い、香りの聞き方や表現の仕方などを本格的な道具を使って行う貴重な機会です。
快適に過ごせる館内着とアメニティ
作務衣で参加した朝のアクティビティ
星のや京都では、館内着の作務衣に羽織のほか、就寝時のパジャマも用意されています。
朝起きると窓の外にはなんと雪化粧をした木々。その美しさといったら……
肌触りのよいパジャマは上下セパレートですが、暑いときには上だけ着るのも可能な丈感です。
客室にもコーヒーや茶葉、茶器が用意されています。冷蔵庫には無料のウォーターボトルのほか、有料のミニバーもあります。
星のや京都には大浴場はありません。客室にあるヒバのバスタブでは、入浴剤が用意され、季節に合わせてバスタイムを楽しめる工夫も。この日はお湯に浮かべて「金柑湯」が楽しめるようにと、金柑が用意されていました(用意されるものは季節によって異なります)。
- 星のやスキンケアセット(クレンジング、洗顔フォーム、化粧水、美容液、保湿クリーム)
- シャンプー
- コンディショナー
- ボディソープ
- 作務衣
- パジャマ
- 足袋ソックス
- スリッパ
- 草履
- タオル
- ヘアブラシ
- 歯ブラシ
- コットン
- 綿棒
- 髭剃り
- ドライヤー
- 冷蔵庫(ウォーターボトルあり)
- ミニバー(有料)
- ウェルカムスイーツ(星のや鳥羽玉カカオ)
- ドリップパックコーヒー
- 焙じ茶
- 電気ケトル
- 茶器
- 加湿空気清浄機
- Bluetoothプレーヤー
- 読書灯
- 金庫
- Wi-Fi
嵐山の自然に抱かれた、大人の隠れ宿「星のや京都」。そこかしこに散りばめられた日本建築の趣や意匠を目にすれば、古いものを受け継ぐということの大切さと尊さを感じます。
訪れる季節によって窓から眺める景色がガラリと変わるのもまた旅の醍醐味。その時にしか見ることのできない景色と美しさがそこにありました。
所在地:京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
電話:050-3134-8091(星のや総合予約)
客室数:25室・チェックイン:15:00~/チェックアウト:~12:00
アクセス:阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICより車で約30分
URL:https://hoshinoya.com/kyoto/
料金:136,000円~(1室1泊あたり、食事別、税・サービス料10%込)
※スタンダードなお部屋に宿泊した場合の通常最低価格です
[All Photos by Aya Yamaguchi]