明治時代まで「台風」の言葉は日本になかった
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「台風」という言葉、小学生でも当たり前に知っていますよね。しかし、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると「台風」という言葉が一般的になった時代は大正期で、 それより前の日本では「大嵐」など、呼び方は特に決まっていなかったそう。
しかも、誕生当初は台風を「颱風」と書きました。「颱」の字は、第二次世界大戦後、台風と改められましたが、「颱風」誕生に至るまでの歴史は意外に奥が深いです。
学研『漢字源』によると、中国の福建省や台湾などでは、もともと大風(おおかぜ)を「大風(タイフーン)」と発音していたそう。その音の響きを西洋人が「typhoon」と音訳します。
その音訳「typhoon」がアジアに逆輸入で広まり、「颱風」という文字をあてたのだとか。「typhoon」と「台風」の発音が似た感じに聞こえる理由は、こうした背景があったのですね。
台風1号が元日に発生した年もある
天気予報を聞いていると、「台風〇号」という呼び方を耳にします。平凡社『百科事典マイペディア』によると、第二次世界大戦後の占領下では、アメリカ式をまねて、アルファベット順の女性の名前で呼ばれていた時期もあったそう。
しかし、1953年(昭和28年)以後は、発生順によって番号で呼ばれる台風番号が使われるようになります。
気象庁によると、この番号は毎年1月1日以後、12月31日に至るまで、発生した順番に付けているそうです。1951年(昭和26年)の統計開始以来、最も早く台風1号が発生した年は2019年(平成31年)で、1月1日の元日に発生しています。
夏に発生するイメージが強い台風ですが、南方の海では元日に台風が発生する場合もあるのですね。
ちなみに、2000年(平成12年)からは、アジア太平洋経済社会委員会と国連の世界気象機関(WMO)で組織する台風委員会が定めたアジア名を採用するようになりました。
とはいえ、このアジア名は歴史が浅い上に、聞き慣れない言葉も多いので、ちょっと頭に入りづらい人もいるかもしれませんね。
台風の名前は140個を使い回し
先ほど、2000年(平成12年)から、アジア太平洋経済社会委員会と国連の世界気象機関で組織する台風委員会が採用したアジア名を加盟国・地域が採用しているという話を紹介しました。
そのアジア名は、日本を含む14の国と領域が提案した計140個の名前が並んでいます。もちろん、日本からの提案も採用されていて、日本の提案を含む140個の名前を順番に使い回しているようです。
ちなみに、日本が提案したアジア名は、台風の影響を受けやすい船乗りたちになじみのある星座の名前になっているのだとか。
- 5番:テンビン(てんびん座)
- 19番:ヤギ(やぎ座)
- 33番:ウサギ(うさぎ座)
- 47番:カジキ(かじき座)
- 61番:カンムリ(かんむり座)
- 75番:クジラ(くじら座)
- 89番:コップ(コップ座)
- 103番:コンパス(コンパス座)
- 117番:トカゲ(とかげ座)
- 131番:ハト(はと座)
そのほかには、命名した国や地域にある山や川の名前、空港名が台風の名称リストに登録されているケースもあります。
「正直、アジア名はちょっと頭に入りにくい」という人は、台風の名前を報道で耳にするたび、どこの国・地域の人たちが提案した名前で、現地の言葉でどのような意味があるのか調べてみると、より実感を得られるかもしれません。
関心と注意が高まれば、結果として備えにも身が入り、被災のリスクが減ることもにつながりそうです。この夏から、名前の提案国・地域と由来を、リストを参照して確かめてみてはいかがですか?
[参考]
※ 台風に関する豆知識について – 国土交通省中部地方整備局木曽川上流河川事務所
※ 知恵蔵 – 朝日新聞出版
※ 百科事典マイペディア – 平凡社
※ 日本大百科全書(ニッポニカ) – 小学館
※ 年明けて早くも台風1号「パブーク」が発生 – tenki.jp
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