九州屈指の温泉地・雲仙温泉にある「界 雲仙」
2022年11月にオープンした「界 雲仙」。「界」は星野リゾートが展開する「王道なのに、あたらしい。」をテーマに従来の温泉旅館とは異なる滞在を提案する温泉旅館ブランドです。全国に22施設あります。
さて、雲仙温泉は有明海に面した島原半島の真ん中にある九州屈指の温泉地です。主な泉質は硫黄泉なので、宿に近づくといかにも温泉らしい香りが漂い始めました。
静けさが漂う界 雲仙のロビーに入ると、天井までの高さがある大きな窓の外に広がる「地獄」に驚かされます。地獄というのは温泉の噴気帯で、地面から温泉や蒸気が噴出し、泥がブクブクとしている場所のことです。雲仙には30以上の地獄があるそうです。
ロビーの奥につながる3つの空間
ロビーを過ぎて、すぐ奥にはショップがあります。棚には、厳選された地元のお菓子や民芸品などがそろっています。
その奥のスペースでは、ご当地楽(ごとうちがく)「活版印刷体験」を楽しめます。活版印刷の始まりの地である島原で、自分で文字を組んで印刷するというアクティビティを通じて歴史を感じることができるというわけです。
その先には、ご当地の歴史や文化、自然、工芸にまつわる本やこの地に伝わる物語などを知ることができるトラベルライブラリーが続きます。壁には島原伝統の「島原木綿」が飾られていました。おいしいコーヒーも用意されていて、気になる本を手に取ってのんびりとした時間を楽しむことができます。
地獄を見下ろす客室には露天風呂付きもあります!
客室付き露天風呂(2名定員)の部屋がこちらです。他に、洋室(3名定員)、角部屋洋室(4名定員)、露天風呂付き洋室(3名定員)、特別室(4名定員)、愛犬ルーム(3名定員)があります。
界 雲仙では、お部屋の約半分が露天風呂スペースという特徴から、あえて「客室付き露天風呂」と名付けられています。「客室付き露天風呂」は、湯浴みに特化したお部屋なのです。
部屋は「和華蘭の間」というご当地部屋(各地の界にそれぞれのご当地部屋があります)で、日本、中華、オランダやポルトガルのイメージが混ざり合った雰囲気になっています。
窓の外の露天風呂からは、目の前に広がる地獄を見下ろすことができて解放的です。体が濡れたままでも横たわることができる湯上りチェアで体を伸ばすこともできて、まさに湯を楽しむための部屋といった作りになっています。
テーブルの上には、 界 雲仙オリジナルパッケージの、福砂屋のカステラがお茶菓子として置かれていました。和紙のスタンドライト、その下には郷土玩具の古賀人形が飾られています。
界 雲仙の「客室付き露天風呂」の動画です
半個室で楽しむご当地の食文化を生かした会席
ロビー階にある半個室の食事処で、夕食も朝食もいただきます。こちらのインテリアも和華蘭をモチーフにしており、木材をベースにしたしつらえが落ち着きます。
夕食には、卓袱料理に欠かせない「豚角煮」をリエットにした先付け、酢の物、八寸、おつくりを盛り合わせた「宝楽盛り」、特別会席のメインには「あご出汁しゃぶしゃぶ」、そしてデザートと続きます。
この日の「本日の特別会席」です
(動画内の環境音は実際とは異なります)
翌日の朝食は「貝雑煮朝食」です。貝雑煮は島原の郷土料理。天草四郎が島原一揆の際に3か月もの戦いを具雑煮で乗り切ったとされ、現在、長崎の一般家庭ではお正月に食べられます。鶏肉、穴子、かまぼこ、春菊などなどの具を、小さめの丸餅と一緒に小鍋で作ったものをいただきます。
他には、焼き鯖に出汁巻きたまご、豚の角煮などが並び、ヨーグルトには地元のにんじんを使ったジャムがのっていました。
大浴場で堪能する湯あみは「あつ湯」と「ぬる湯」
大浴場は別棟にあって、「ちょっとお風呂に行ってきます」といった風情です。入り口にはチェアがあって、温泉街ならではの硫黄の香りや山の静けさを感じながら休憩することができます。
中に入ったロビーにもチェアがあり、柚子酢のドリンクと橙ほうじ茶が用意されています。
内湯には源泉かけ流しの白濁した「あつ湯」と、透明な「ぬる湯」の湯舟が並び、ステンドグラスを通した光を揺らしていました。あつ湯とぬる湯に交互に入って、湯あみを楽しみます。
こちらは、地獄の湯けむりを眺めることもできる野趣あふれる露天の岩風呂。火照った体に吹く風も気持ちよく、時がたつのを忘れそうです。
アクティビティは「雲仙地獄パワーウォーク」と「活版印刷体験」
用意していだいた足袋を履いて、雲仙の整備された遊歩道に出かけるのが毎朝開催される(当日の天気によります)「雲仙地獄パワーウォーク」です。普通に歩く速さよりも速いスピードで歩きます。
途中で、杖を使ったエクササイズにも挑戦します。「ヤーッ」と声を上げて杖を突いたりすると、温泉とごちそうでちょっと緩んだ体に気合が入ってすっきりします。
20分ほどのヨガを含む約1時間のコースです。雲仙の地獄を巡って、より深くこの土地の湯の恵みを知ることができました。
さて、長崎は日本の活版印刷発祥の地。天正遣欧少年使節がヨーロッパから運び込んだのが島原でした。
予め裏文字が彫られた棒上の活字を並べて文章を作って印刷するのが活版印刷で、刷った文字がちょっとへこんでいる指触りにも趣があります。
はがきサイズになるように、好きな言葉の文字とデザインを組んだら、印刷機で刷ります。
活版印刷のイラストのデザインで刷ってみたのがこちらです。他では手に入らない自分だけのお土産ができあがりました。TABIZINEの綴りは最後のEが足りないように見えますが、温泉マークがその代わりです。
部屋に戻ってゆっくりしてから荷物を調えても、お昼12時のチェックアウトまで時間がありました。トラベルライブラリーに降りて、コーヒーを飲みながら、外に広がる池とその先の地獄を眺めて、この旅のことをまた思い起こして過ごしました。
住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙321
電話:050-3134-8092(界予約センター9:30~18:00)
料金:1泊1名 25,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料・税込、夕朝食付き)
アクセス: 長崎自動車道 諫早ICより約60分
公式サイト:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiunzen/
[All photos by Atsushi Ishiguro]