そもそも降水量って何? 降水量を「ミリ」で表すワケは?
降水量は、降った雨がどこにも流れ去らずにそのまま溜まった場合の水の深さのこと。そのため、mm(ミリメートル)で表します。降水量の単位が「ミリメートル」なのに「ミリ」が使われていることがあるのは、一部省略した単位表記を使っているからです。
<例えば、「1時間で100ミリの降水量」は降った雨がそのままたまった場合、1時間で雨が水深10cmとなるということです。1平方メートルに100ミリの雨が降った場合、水の量は100リットル(重さにして約100kg)になります。>(気象庁「雨・雪について」より引用)
また、近年大雨が増えているように感じますが、1901年から全国の気象台や測候所など51カ所の降水量データを使い、日降水量100ミリ以上および200ミリ以上の発生回数を年ごとに集計したところ、いずれも長期的には増加傾向という結果が出ているそうです。
日降水量ランキングTOP10
気象庁の日降水量ランキングは、気象台や気象台と同じ観測装置を使う測候所、気象観測所、特別地域気象観測所のほか、アメダスの観測データが元になっています。このランキングは、統計開始(アメダスは1976年、気象台等は地点により異なる)以降の観測データを対象に、観測史上1位の値を使って作成されました。
第10位 726mm
徳島県剣山 1976年9月11日
徳島県剣山で日降水量726mmを記録したのは1976年9月11日。台風17号の影響により、降雨帯が日本列島に沿う前線帯を刺激。台風の雨と前線の雨が強まり、約7日間雨が続き、各地で記録的な雨量を観測。当時、日本の観測史上、最大の記録になりました。
日本百名山のひとつ「剣山」は、石鎚山に次ぐ西日本第2の高峰(標高1,955m)です。登山口から登山道の中央付近まではリフトが設置されており、初心者でも登りやすく、多くの登山客でにぎわっています。原始林や高山植物の群生地を眺めながら、四季折々の景観を楽しめます。
http://www.turugirift.com/
第9位 735mm
高知県繁藤 1998年9月24日
西日本の南岸に停滞していた秋雨前線が活動を強めながら、1998年9月23日から24日早朝にかけて瀬戸内付近まで北上、25日未明までほとんど停滞。それにより、足摺岬付近から窪川町の沿岸部にかけての土佐湾沿岸部で次々と雨雲が発生して発達。高知市~南国市(後免)~土佐山田町(繁藤)に長時間にわたり雨が降り、9月の月降水量平年値の2.5~3倍となる記録的な豪雨に。
繁藤のある高知県香美市といえば、日本三大鍾乳洞のひとつ「龍河洞」が有名。1億7500万年の時間の流れによりつくり出された、さまざまな形状の鍾乳洞を見学できます。約2,000年前の弥生時代の生活跡や鍾乳洞と一体化した土器を見ることも可能です。
第8位 757mm
愛媛県成就社 2005年9月6日
©️(一社)愛媛県観光物産協会
愛媛県成就社では、2005年9月6日に日降水量757mmを記録しました。台風14号の大雨と暴風が、西日本各地で大きな災害をもたらしたのです。
「成就社」とは愛媛県西条市小松町石鎚にある石鎚神社四社(石鎚神社)のひとつ。石鎚山中腹に位置する中宮です。石鎚登山ロープウェイを下車し徒歩約20分の場所に鎮座しています。
1300年以上前、石鎚山開山の祖、役小角が石鎚山頂を拝もうと、山頂を目指しましたが、なかなか辿り着けず、下山しようとしたところ、斧を研いでいる老人に出会い、その老人の言葉により、西日本最高峰の石鎚山を開山できたという伝説が残っています。
第7位 764mm
三重県宮川 2011年7月19日
提供:三重フォトギャラリー
2011年7月15日に沖ノ鳥島近海で超大型で非常に強い台風になった台風6号の影響により、三重県は大雨となり、2011年7月19日に三重県宮川で日降水量764mmを記録。三重県内の海上では9mを超える波を観測し、猛烈なしけになりました。
宮川は三重県内最大の流域を誇る川で、水源を三重県多気郡日出ヶ岳に発し、山合いを縫うように走りながら、大内山川などの支川を合わせ伊勢湾に注ぎます。宮川は伊勢神宮外宮の禊川であったことから、かつては豊宮川といわれていましたが、「豊」を略して宮川になったとされます。
伊勢神宮外宮の北西を流れる宮川の堤「宮川堤」は桜の名所。「一目千本」と呼ばれる約1kmの桜並木が続きます。
第6位 765mm
沖縄県与那国島 2008年9月13日
2008年9月13日に日降水量765mmを記録した沖縄県与那国島。長時間八重山地方を暴風域に巻き込んだ台風13号により、与那国島では最大瞬間風速と、これまでの9月の月間平均雨量(242.3mm)の3倍を超えて、観測史上1位を更新する24時間雨量が観測されました。これにより与那国島では断水などが続いたそうです。
与那国島で一度は訪れたいのが、海面から約100mの高さの断崖絶壁の岬「東崎(あがりざき)」。先端には東埼灯台もあります。晴れた日には西表島が見えることも。与那国馬が放牧されていて、のどかな雰囲気です。
第5位 790mm
香川県内海 1976年9月11日
香川県内海では1976年9月11日に日降水量790mmを記録しました。これは台風17号と前線による影響。全国的に大雨になりましたが、香川県にある小豆島の内海町(現・小豆島町)では、年平均降水量を上回る記録的な大雨となり、土石流や洪水が発生しました。
小豆島の人気観光スポットは「エンジェルロード」。潮の満ち干きで道が現れたり消えたりします。干潮時には、中余島まで歩いて渡ることができますよ。「大切な人と手をつないで渡ると、願いが叶う」といわれています。
第4位 806mm
三重県尾鷲 1968年9月26日
三重県尾鷲市は、年間降水量が4,000ミリに近く、もともと降水量が多い地域です。1968年、台風16号(第3宮古島台風)の北上に伴って前線の活動が活発となり、大雨を降らせ、尾鷲市で9月26日に806mmという日降水量を記録しました。
鷲尾市には、江戸時代に作られたといわれる石畳の「熊野古道馬越峠」があります。重厚な石畳が、日本トップクラスの雨量を誇る尾鷲の雨から道を守っているのだそうです。全国各地に数ある石畳の中で最も美しいとされていて、一見の価値がありますよ。尾鷲ヒノキに囲まれた石畳を歩けば、この地の歴史と文化を体感できそうですね。
第3位 844mm
奈良県日出岳 1982年8月1日
1982年の台風10号は、四国地方東部から東北地方の広い範囲に大雨を、近畿地方から東海地方には暴風をもたらしました。この影響で、奈良県は7月31日夜から8月3日にかけて大雨になり、奈良県日出岳では8月1日に日降水量844mmを記録しました。
「日出ヶ岳」は、奈良県吉野郡上北山村にある大台ヶ原の最高峰。大台ヶ原は大きく分けて東大台・西大台の2つがあり、年間降水量3,500mmという世界有数の降水量を誇ります。多量の雨が湿潤な気象条件を生み出し、日本を代表する原生林を形成。希少な動植物も生息しています。
第2位 851.5mm
高知県魚梁瀬 2011年7月19日
魚梁瀬ダム
2011年7月12日に南鳥島近海で発生した台風6号は強い勢力を保ったまま徳島県南部に上陸。この台風は動きが遅かったため、台風からの暖かく湿った空気が高知県に流れ込む状態が続き、7月19日、高知県魚梁瀬では日降水量851.5mmに。記録的な大雨になりました。
中心に魚梁瀬ダムのある魚梁瀬地区は「魚梁瀬県立自然公園」になっています。自然林が立ち並ぶ「千本山」では見事な山岳美を拝めますよ。豊かな自然あふれる環境の中でリフレッシュできそうですね。半世紀以上前に木材の運搬に使っていた「森林鉄道」の乗車・運転体験もできます。
第1位 922.5mm
神奈川県箱根 2019年10月12日
2019年10月12日、神奈川県箱根町では日降水量922.5mmを記録。1日の雨量としては全国の観測史上最も多くなりました。過去最強クラスの台風19号が大型で強い勢力を保ったまま伊豆半島に上陸したため、関東地方や静岡県ではこれまでに経験したことがないような大雨になったのです。箱根の10月の降水量の平年値は330mm余り。なんと1日でその2倍以上の雨が降ったことになります。
箱根には数多くの見どころがありますが、荒涼とした風景が広がり、硫黄の臭いが漂う「大涌谷」はユニークなスポット。粘土化して赤茶けた山肌のほか、立ち枯れた木々、湯釜、白煙を吹き上げる噴気孔といった地球の火山活動を体感できる場所が目白押しです。
地熱と火山ガスの化学反応を利用して作られる「黒たまご」も忘れずに味わいたいですね。この卵を食べると「7年寿命が延びる」といわれていますよ。
[参考]
気象庁|歴代全国ランキング
気象庁|雨・雪について
朝日新聞デジタル|なぜ1月の東海カラカラ天気? 多雨の尾鷲で0・5ミリ
Tenki.jp|経験のない大雨 1日雨量 箱根で全国歴代1位
ウェザーニュース|10月12〜13日、大規模な河川氾濫をもたらした台風19号について
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