富士山の火口は峰に囲まれている
富士山の火口は峰に囲まれています。その火口の周りを一周するのが「お鉢めぐり」です。かつての富士講登山では、山頂の神社で参拝後、時計回りに回っていました。ちなみに、富士講とは、富士信仰が盛んになった江戸時代に結成された、富士山参詣を行う組織的な集まりのことです。
お鉢めぐりの距離は約2.6km、所要時間は約1時間半。火口を取り囲むような峰に行ったり、巻いたりする(ピークを通らずに山腹を通る)ことが可能です。これらの峰を富士山の山頂としてカウントすると、9つあるのです(峰=山頂とした場合)。それでは、各峰の特徴と行き方を見ていきましょう。
富士山にある9つの山頂とは?
ここでは、吉田・須走ルートの頂上から時計回りに1周するコースで順を追って各山頂の特徴と行き方をご紹介します。
大日岳(朝日岳)
山頂には、鳥居がありご来光スポットとして人気を集めています。吉田・須走ルートの下山道を左手に見て、丘のように小高い場所に進むとたどり着けますよ。
伊豆ヶ岳(阿弥陀ヶ岳)
火口の反対側に剣ヶ峰が望めるピークです。大日岳の山頂から少し戻って登山道に入ると見えてきます。この周辺の東側は急斜面で切れ落ちているため、足元に十分に注意しましょう。
成就岳(勢至ヶ岳)
伊豆ヶ岳を過ぎるとやや下り気味になり、右手に成就岳が見えてきます。丸いかたちが目印です。
浅間岳
成就岳から進むと東安河原(賽ノ河原)と呼ばれる、緩やかなくだりの場所を経て、御殿場ルートの浅間岳の頂上に到着します。ここには祠があり、溶岩の間から「銀名水」といわれる雪融け水が湧き出てくるそうです。
なお、御殿場ルート(富士山4大登山ルートのひとつ)では出発点の標高が低く、傾斜が緩やかですが、山頂までの標高差が大きく、距離が長いため健脚向きになっています。
駒ヶ岳(浅間ヶ岳)
御殿場ルートの頂上からさらに進むと、浅間大社奥宮のある広場に到着。ここが駒ヶ岳のピークです。
三島岳(文殊ヶ岳)
前述の広場には、富士宮口の頂上、山頂郵便局、トイレ、売店があり、7月上旬〜9月上旬の登山シーズンは多くの人でにぎわっています。そんな場所のトイレの左側に位置するのが三島岳です。
剣ヶ峰
山頂郵便局を通り過ぎると、剣ヶ峰の山頂が見えてきます。実はこの山頂こそが日本最高峰の標高3775.6m! つまり本当の富士山頂だといえます。ただし、山頂への道のりはややハード。急な坂道を往復する必要があり、特に下りには注意しましょう。
とはいえ、山頂からの景色は最高です。「日本最高峰富士山剣ヶ峰」の石碑があるほか、付近には旧富士山測候所の建物も残っています。
白山岳(釈迦ヶ岳)
お鉢めぐりの登山道に戻り、西安河原と呼ばれる平坦な場所を進んでいくと、小内院という富士山の火口のひとつに到着します。その対岸に雷岩と釈迦ノ割石が見えますが、その延長上にある山が白山岳です。
久須志岳(薬師ヶ岳)
登山道から分岐を右に入ると、富士山の神聖な水「金名水」があります。そして、金名水から火口の縁を進んでいくと、登山道に合流し、久須志岳のピークに到着します。
お鉢めぐりの由来とは?
古くから富士山は霊山として崇められてきました。1149年に末代上人が山頂に寺院を造り仏像を奉納したことで、富士山信仰の修行がより具現化。巡礼者たちは山頂でご来光を拝み、山頂の噴火口の外周を一周する「お鉢めぐり」をするようになったのです。
富士山の山頂には、8つの峰があり、仏様が座る蓮華座(れんげざ)に見立てて「八葉」と呼んでいたそうです。「お鉢めぐり」の「鉢(はち)」は、この「八葉」が由来とされています。
なお、当時は富士山信仰の修行として噴火口の外周を回っていましたが、現在は登山コースのひとつとして外周を回ることができます。日本一高い場所からの景色は格別! 天候が安定している登山シーズンに一度は訪れてみたいですね。お鉢めぐりの注意点や山頂の施設などについて詳しくはこちらをご覧ください。
[参考]
富士吉田市観光ガイド
富士山オフィシャルサイト
富士急行/フジヤマNAVI
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