青木ヶ原樹海にまつわる伝説
青木ヶ原樹海は、約1,200年前に富士山の噴火によって溶岩流上に形成された広大な原生林です。遠望すると海のように見えるところから青木ヶ原“樹海”と呼ばれています。そんな樹海には、「一度足を踏み入れたら戻れない」「コンパスが狂う」といった多くの都市伝説があります。しかし、それは本当なのでしょうか? ひとつずつ見ていきましょう。
コンパスはグルグルと回るのか?
樹海は一度足を踏み入れると戻れなくなり、さらにコンパスも効かなくなるといわれています。しかし、これは都市伝説です。コンパスはグルグルと回ったりしません。
とはいえ、樹海の溶岩には磁鉄鉱が含まれており、一部の溶岩は磁力が強く、コンパスを近づけると磁鉄鉱に反応し、狂うこともあります。ただし、グルグル回ることはないでしょう。
土壌が少ないのに木が育つ?
前述の通り、溶岩によって形成された樹海には土壌が少ないのが特徴です。このように樹木にとって過酷な環境だといえます。ですが、樹海には常緑針葉樹を中心に広葉樹も存在していて、木々が生い茂っています。実は樹海の木々は木の根に生えている苔から水分を得ているのです。
一方の苔は木の葉が茂り、影を作ることで、枯れずに成長し、さらに水分を多く蓄えることができます。つまり、樹海では木々と苔が助け合い、森を形成しているのです。
樹海には大木がない?
土壌が少ない樹海では、大きな木に成長することはできません。そのため、たとえ木が大きく育ったとしても、風などの影響により、自らの重さに根が耐えきれず、倒れてしまうことも少なくないのです。しかし、倒木してただ朽ちるだけの木ばかりではありません。自らが栄養分となり新しい木の芽を吹かせる倒木もあります。
野犬の群れがいる?
樹海に捨てられた犬が繁殖し、群れをなしているという噂がありますが、栄養が乏しい樹海で、犬が生きていくのは大変です。そのため、噂でしかないと考えられます。さらに樹海にクマがいるという噂も! 確かに青木ヶ原樹海はクマの生息地域であるため、クマがいないとは言い切れないでしょう。
ちなみにネズミやモグラなどの小動物、アカゲラやウグイスといった鳥類のほか、シカ、キツネ、イノシシも生息しています。
鳴沢氷穴は江ノ島につながっている?
鳴沢氷穴の内部には、地獄穴(水が吸い込まれる穴)があり、これが江ノ島の洞窟までつながっているとされる伝説があります。しかし、これまで誰も確かめたことがないため、現時点では伝説にすぎません。いつの日か、どなたかが確かめてくれることを期待したいですね。
自殺志願者が暮らす「樹海村」がある?
樹海の中には、自殺志願者たちが死にきれず暮らしている「樹海村」があるという都市伝説も。これは、清水崇監督により恐怖の村シリーズ第2弾として2021年に製作された、樹海を舞台にした映画のことです。樹海の中に整備された「精進湖民宿村」は存在しますが、樹海村ではありません。
「精進湖民宿村」は森林浴を楽しめる静かなスポット。16軒の民宿が集まっています。雄大な富士山を眺めながらゆっくりと過ごしたくなったら、ぜひ訪れてみてくださいね。
謎の石塁がある?
樹海の中に、長さ2kmにおよぶ石塁は確かに存在します。溶岩を積み重ねてつくられています。戦国時代に本栖集落を守るためにつくられた、江戸時代に獣害を防ぐためにつくられたなど、さまざまな説が考えられますが、いずれの説も決め手に欠け、なぜつくられたのかはっきりとした理由はわかっていないそうです。
なお、この石塁は、東海自然遊歩道から見学可能です。気になる方は一度、訪れてみるのもいいかもしれませんね。
ほとんどの伝説は噂に過ぎないが……!?
青木ヶ原樹海には数々の伝説が存在しますが、そのほとんどは単なる噂にすぎませんでした。しかし、鳴沢氷穴は江ノ島の洞窟につながっているかについては、検証されていないため、謎のままです。さらに謎の石塁は本当に存在します。
青木ヶ原樹海は、神秘的で非日常な光景が広がっているからこそ、このような多くの伝説が生まれたのかもしれませんね。しかし、樹海には、整備された観光客用の遊歩道があるほか、富士山の溶岩流によって生み出された「富岳風穴」「鳴沢氷穴」などもあり、見どころ盛りだくさんです。週末に「青木ヶ原樹海散策コース」を巡り、リフレッシュするのもおすすめです。
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町西湖
交通アクセス:富士急行線「河口湖駅」から西湖周遊バス(グリーンライン)に乗車し約34分、「西湖コウモリ穴」で下車
公式サイト:https://www.yamanashi-kankou.jp/aokigaharajukai/
[参考]
TBS NEWS DIG|“コンパスがグルグル”は都市伝説 富士山の青木ヶ原樹海 奥深い原生林を歩くと見えてくるもの
TBS NEWS DIG|富士山の麓、青木ヶ原樹海に延長2kmの“石の壁” いったい誰が何のために? いまだ解明されない謎
天然記念物 富岳風穴・鳴沢氷穴
AOKIGAHARA JYUKAI
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