JR鶴見線とは
神奈川県横浜市鶴見区から川崎市にかけての港湾地帯を走る、JR鶴見線。臨海部を走る沿線には工場が多く、またJR貨物が運行する貨物列車も走っており、工業地帯ならではの風景が広がります。
昭和2年(1927)「鶴見臨港鉄道」として開業したのが始まりと歴史は古く、戦前・戦中・そして現在まで、京浜工業地帯の輸送を支えてきました。
そんな鶴見線は支線を含めても全長9.7km。ですが短いながらも、個性的な駅があるんです。
ホームに降りればそこは海!「海芝浦駅」
JR鶴見駅から、鶴見線へ。6駅先の終点・海芝浦駅へ向かいます。
平日夕方の電車からは次第に人が消えていき、車両の中には筆者だけに。工場地帯の支線をゆっくりと走り、10分ほどで目的地に到着しました。
ドアが開くと、ホームの外にはすぐに海が広がります!
工業地帯の真ん中ではありますが、正面にかかる鶴見つばさ橋や、写真右側には小さく横浜ベイブリッジまで見わたせる180°のパノラマです。
海のすぐそばに佇む単線の終着駅の風景は、都会にありながら地方ローカル線といった雰囲気。
陸地側には小さな駅舎もありますが、そちらは撮影NG。実は海芝浦駅、駅の外はすべて東芝の敷地で、駅を出ることができるのは関係者のみとなっています。
しかし、電車でしか来られない絶好のロケーションということもあり、筆者以外にも撮影・観光を目当てにした方が数人いらっしゃいました。
駅の敷地内には、小さな緑地も。景観目的の観光客のために解放されている「海芝公園」です。
公園内の看板には景観の解説や、設立の経緯が解説されていました。
ベンチに座り、潮風に吹かれながら、行き交う船を眺めて電車の出発を待ちます。駅の構内とは思えない、ゆっくりとした時間でした。
帰り(海芝浦駅始発)の電車には、先ほどとはうってかわって、大勢のお仕事帰りの方が。通勤の方々にとっては、ごく普通の日常風景なんですね。
まるで廃墟?開業当時の歴史を残す「国道駅」
海芝浦駅から出発した、鶴見方面行の電車を途中下車。続いて紹介するのは、「国道駅」です。
高架の駅から階段を下ると、改札口や対面ホームに向かう渡り廊下が。
こちらは渡り廊下から見渡した様子。アーチが連なる駅の高架下はトンネル状の通路になっています。国道駅は、1930年の駅の開業当時の姿をほぼそのままに残しており、独特の雰囲気が漂います。
1階に降りて、駅の改札外へ。
昔は商業施設だったそうなのですが、今ではシャッターや、打ち付けられたベニヤ板で封鎖され、面影はほとんど感じられません。人もあまり通らず、暗く、ガランとした空間はまるで廃墟のよう。
落書きや放置されたカラーコーンなどが、アングラな雰囲気を醸し出しています。
数カ所に残る看板も、かなり前からそのままにされているように見えます。数年前まで「国道下」という飲食店が営業していたそうですが、現在営業中のテナントはありません。
トンネルの先の出口には、しっかり駅名標が。ちなみに国道駅の”国道”とは、この出入り口が面している国道15号線(旧国道1号線)とのこと。
駅の外壁を見上げると、複数の穴が開いています。実はこちら、第2次大戦で受けた、戦闘機の機銃による弾痕なのだとか。国道駅の歴史を目の当たりにし、驚きです。
高架下のトンネルの途中に、照明に照らされた横道を発見。
反対側、外から見るとこういった具合です。さすがにこれが駅の出入り口の1つだとは思いませんよね……。
帰り際、先ほどの渡り廊下を見上げるアングル。高い天井に美しいアーチ、開業当時はモダンだったことがうかがえます。
東京から40分のローカル線
国道駅から、鶴見駅へ到着。賑わいのある駅に戻ってくると、先ほどまでの2駅の静けさが、どこか嘘のように感じられました。
今回は鶴見線探訪と題して、海芝浦駅・国道駅を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
東京から40分ほどの位置にあるにも関わらず、普段見ることのできない景色と出会える鶴見線。海芝浦・国道ともに通勤や生活で利用される現役の駅ですので、訪れる際には、迷惑にならないようお気をつけくださいね。
[All Photos By ぶんめい]
※鶴見線に関する記載は、以下を参考にしております。
https://www.city.kawasaki.jp/kawasaki/cmsfiles/contents/0000025/25729/22-2.pdf