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寅年と申年に執り行われる神事! 古代から始まったとされる「諏訪大社の御柱」(長野県諏訪湖周辺)
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「諏訪大社の御柱」の正式名称は「式年造営御柱大祭」で、寅年と申年に執り行われる諏訪大社で最大の神事です。御柱(おんばしら)と呼ばれるもみの大木を4つの宮社に運び込み、各境内の四隅に曳き建て、御宝殿の造営や調度品の新調を行います。
この祭りの起源は、古代に遡ります。804年、桓武天皇の御代からは、信濃國一国の総力をあげて奉仕が行われるようになったそうです。
御柱祭の内容は、御社殿を造り替えること、その御社殿の四隅に奥山から伐り出す大木(おんばしら)を建てることに大別されます。上下四社に大木が4本ずつ、合計16本の大木の柱が建てられるのです。
これらは、長さが約17m、重さ約13tにもおよびます。さらにいずれも20〜25km離れた場所から、人力のみで曳行! そのため、1本あたり1,000〜2,000人が必要になるそうです。
御柱祭は、16本の大木を仮に見立てることからはじまり、本見立てを行って神聖な薙鎌(なぎがま)を打ち込み、御柱年の3月に伐採。そして、御柱年の2月15日に柱の担当地区を抽選で決める「抽籤式」を実施し、4月上旬に大勢の氏子たちによって里へと曳き出されます。
5月初旬には、騎馬行列や長持ち、笠踊りといった行列とともに、それぞれのお宮へ運ばれ、社殿の四隅に曳き付けられるのです。それから氏子たちの手によって垂直に立ち上げられた大木は、神社の四隅に鎮座する御神木になります。
一方の御宝殿の造営は、寅年と申年の御柱祭ごとに、交互に造り替えを行います。御霊代が新しい御宝殿に移る神事を「宝殿遷座祭」といい、上社では里曳き翌月の6月15日に、下社では里曳きの前夜に実施。
さて、なぜこのような大変な神事を行うようになったのでしょうか。
諏訪大社は境内に神宮寺を有することから、仏教的な性質を持つため、4本の柱は四方位を統べる四天王という説、境内を護摩壇に見立て、御柱はその結界を張る独鈷(とこ)という説は、鎌倉時代から唱えられていたそうです。
このように、今のところ詳しいルーツは明らかになっていませんが、非常に興味を引かれる神事ですよね。
住所:長野県諏訪市中洲宮⼭1
電話:0266-52-1919
交通アクセス:JR「茅野駅」から車で15分
公式HP:https://suwataisha.or.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/suwataisha.official/
出雲大社の本殿の中心にある、“神が宿る”とされる「出雲大社の大黒柱」(島根県出雲市)
「出雲大社の大黒柱」とは、出雲大社の本殿の中央にある「心御柱(しんのみはしら)」という太い大黒柱のこと。この柱は「神が宿る」とされています。
出雲大社の本殿の高さは24m、大社造と呼ばれる日本最古の神社建築様式です。切り妻、妻入りの構造で、平面は9本の柱が田の字型に配置された正方形の間取りになっているのが特徴的。その中心にあるのが「出雲大社の大黒柱=心御柱」なのです。
出雲大社の本殿は、長い歴史のなかで、60年ごとに造営遷宮と修造遷宮を繰り返してきました。現在の本殿は、1744年に造営されたもので、1952年に国宝指定に。
また2000年から2001年には、出雲大社の境内から鎌倉時代に建立されたとみられる心御柱、宇豆柱(うずばしら)が出土。ユニークなのはその構造です。直径約1mのスギの巨木を3本束ねて1本の柱としています。
出雲大社の宮司家に伝わる古代の本殿の平面図『金輪御造営差図』によると、古代には3本の大木を鉄輪で束ねて1本の柱とした、高さ48mにもおよぶ本殿があったそうです。そのため、この鎌倉時代のものと推定される3本の柱は、かつて出雲大社に高層神殿が存在していた可能性を示しているといえます。
なお、出土した心御柱は、出雲大社の神祜殿(宝物殿)で見学可能。展示空間の中心に鎮座しています。そのほか、本殿の檜皮葺きの屋根がどのように重ねられているのかわかる、原寸大で再現した屋根の断面図や、弥生時代の曲がった勾玉、青銅製の戈(ほこ)といった貴重な遺物も!
出雲大社の神祜殿を訪れて、心御柱の大きさやその存在感を体感してみたいですね。
住所:島根県出雲市大社町杵築東195
電話:0853-53-3100
参拝時間:6:00~19:00
交通アクセス:JR「出雲市駅」から一畑バス(出雲大社・日御碕・宇竜行き)で25分、一畑電車「出雲大社前駅」から徒歩約10分
公式HP:https://izumooyashiro.or.jp/
伊勢神宮正殿の床下中央に立てられる、もっとも神聖とされる「伊勢神宮の心の御柱」
「伊勢神宮の心の御柱(心御柱)」は、伊勢神宮正殿の床下中央に立てられている柱です。忌柱 (いみはしら)、天御柱 (あめのみはしら)とも呼ばれており、内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の両方に存在します。
正殿は高床式倉庫から発展した「唯一神明造」という工法を用いて建造。心の御柱はその中心となる神聖なものなのです。
1,300年にわたり繰り返されてきた、20年に一度行われる「式年遷宮」は、14の別宮の社殿などを造り替え、神様に新殿に移ってもらう神宮最大の神事。9年の歳月をかけて33のお祭りと行事を行います。
その過程のひとつ「木本祭(このもとさい)」で「伊勢神宮の心の御柱」になる用材を伐採。そして、いくつかのお祭りや行事などをへて、遷宮諸祭のなかでもっとも重要な秘儀である「心御柱奉建」を行います。この秘儀は非公開で、闇の中で人目につかないように行われるそうです。
また心の御柱は、どこから伐り出されるかといえば、内宮のほとりを流れる五十鈴川の上流に位置する広大な「宮域林(きゅういきりん)」と呼ばれる神宮の森。宮域林は、内宮が鎮座した当時から大御神の山として崇められてきました。
そして690年に第1回目の式年遷宮が行われた際、宮域林は造営用材を伐り出す「御杣山(みそまやま)」に。その後、用材の欠乏により御杣山を別の場所に移しましたが、もっとも神聖な心の御柱は宮域林から伐り出しているそうです。
住所:三重県伊勢市宇治館町1
電話:0596-24-1111
参拝時間:5:00〜19:00(月によって異なります)
交通アクセス:JR「伊勢市駅」からバス約20分「内宮前」下車
公式HP:https://www.isejingu.or.jp/about/naiku/
公式Instagram:https://www.instagram.com/isejingu.official/
[参考]
御柱祭
諏訪市
遠山郷観光協会
出雲大社「心御柱」公開へ、高層神殿の可能性示す遺物 32年に東京で|産経新聞
観光庁
[Photos by Shutterstock.com]