【多くの湧き水や名水がある鳥取県「大山」】日本遺産に選ばれた日本最古の神山の見どころや歴史

Posted by: あやみ

掲載日: Sep 4th, 2024

2015年に文化庁が創設した日本遺産に選ばれた「大山(だいせん)」。命を育む豊かな水と、鎌倉時代以降に根付いた「大山信仰」で有名です。また、「大山おこわ」などの独特の食文化のほか、大山の水にまつわる「もひとり神事」といった行事や風習も残っています。今回は、そんな大山にフォーカス。歴史や見どころをご紹介します。

大山 トップ

日本最古の神山! 天然記念物のダイセンキャラボク純林が見られる「大山」

大山 引きの図

中国地方最高峰の「大山」(標高1,709m)は、古来「神の山」「仏の山」として崇められてきた日本最古の神山です。北西側の姿から別名「伯耆(ほうき)富士」と呼ばれています。しかし、富士山とは異なる複成火山で、古期の成層火山と新規の鐘状火山からなり、小爆発や激しい侵食と崩壊により、南壁や北壁は急崖に。

また大山は、大山隠岐国立公園に指定されています。海抜800m以下のエリアは、アカマツやコナラの林が広がり、800m~1,300mのエリアには西日本最大級のブナの森が! そして、1,400m付近からは、特別天然記念物に指定されているダイセンキャラボク純林が見られます。

加えて大山山麓には、広大なブナ林の涵養(かんよう)性により、多くの湧き水や名水のポイントが点在。サントリーの「天然水」も 大山山麓が採取地です。

地蔵菩薩と水が密接に結びついた「大山信仰」

大山信仰

地蔵菩薩は生きとし生けるものすべてを救う仏様です。平安時代に大山寺の高僧である基好上人(きこうしょうにん)が、牛馬安全を祈願する守り札を配りながら、山の中腹に広がる牧野で牛馬の放牧を奨励。

これにより、参詣者が延命をもたらす「利生水(りしょうすい)」と、地蔵菩薩の加護を求めて大山に参詣し、五穀豊穣を祈願する「牛馬信仰」が広がっていきました。

利生水とは、人々に説法しながら旅をしていた行基(ぎょうき)が、大山で修行をしようとしたところ、水が足らず、文殊菩薩に祈りながら金剛杵(こんごうしょ)で岩を砕いたら、あふれ出したといわれる水のことです。現在も枯れることなく湧き続けています。

そして鎌倉時代以降は、「大山信仰」として山陰、山陽諸国も信仰圏に。

日本一長い石畳の道も! 風情ある「大山」の見どころ4選

ここからは、大山の見どころ4選をご紹介します。

国登録有形文化財に指定されている、天台宗の古刹「大山寺本堂」

修験道の修行道場として栄えた大山寺。最盛期には100を超える寺院があり、3,000人以上の僧がいたそうです。しかし、明治初期の神仏分離と廃仏毀釈により、衰退の一途をたどったため、現在は4つの参拝堂と10の支院しか残っていません。

今の本堂は1951年に再建されたもの。伝統的な和様建築の様式で、彫刻に近代的な意匠を用いているのが特徴です。本堂に並ぶ鐘楼も、本堂と同様に中世の様式のなかに、近代の要素が取り入れられています。

本堂近くにある「宝牛」にも注目を! 別名「撫牛」といい、ひとつの願いを心に念じてこの牛を撫でると願いが叶うとか。これは牛の霊を慰めるために鼻ぐりの銅をもって鋳造されたそうです。大山を訪れたら、忘れずに撫でたいですね。

1131年に造営されたといわれる木造阿弥陀如が鎮座する「大山寺阿弥陀堂」

大山寺に現存する寺院のなかで最古の建造物です。平安初期に創建されたものの、1529年に山津波で倒壊。1552年に現在の場所に再建されました。

本尊は、1131年に大仏師良円(りょうえん)によって造営されたといわれる2.79mの木造阿弥陀如来が安置。本尊はもちろん、建物も国の重要文化財に指定されています。

ただし、木造阿弥陀如来の見学には事前申し込みと拝観料が必要です。とはいえ、事前予約をすると、住職の話が聞けるほか、貴重な座禅体験(料金は要相談)もできますよ。

日本一長い石畳の道といわれる「大神山神社奥宮の石畳道」

大山寺入り口から大神山神社奥宮まで約700m続く、石畳の参道は必見です。この参道は、「日本一長い石畳の道」といわれる大山のシンボル。石畳の原型は、1789~1800年にできたとされています。

この参道を歩く際に、見つけたいのがその脇に湧く「御神水」。汲むことも可能なため、空のペットボトルなどを持参するのも良さそうですね。くせのない透き通った水が喉を潤してくれますよ。

参道を上がったところには「大神山神社奥宮」も! 社殿は全国最大級の壮大な権現造りで荘厳な雰囲気です。

6月に神秘的な光景が見られる「金門(きんもん)」

大山石畳の参道の標識に従って、右手側にある横道に上がると、南光河原を流れる佐陀川があります。すると、その両岸には巨大岩石を半分に切ったような岸壁が!

実はこの岩壁そのものが神門に例えられており、御金門と呼ばれています。かつて僧兵たちが修行に励んだ場所だとか。

岩壁の隙間からは大山北壁の荒々しい岩肌が垣間見えて、迫力満点。ここは大山の絶好の写真ポイントなのです。

また6月には、断崖のわずかな隙間に夕日が落ちるという神秘的な光景を見ることができます。梅雨の晴れ間を狙って大山を訪れるのもいいかもしれませんね。

大山独特の食文化も要チェック!

大山おこわ
出典:農林水産省Webサイト

大山のふもとで、祭りや季節行事の際に食べられてきた家庭料理「大山おこわ」は、かつて大山で修業する人たちにふるまわれていた精進料理がおこわに変わっていったものと考えられています。

シイタケ、ゴボウ、栗、こんにゃく、油揚げなどが入っていて滋味深い味わい。1885年創業の老舗旅館「米子屋旅館」に宿泊すれば、大山おこわはもちろん、地元の旬の食材を活かした料理の数々を味わうことができますよ。

大山
住所:鳥取県西伯郡大山町大山
電話:0859-48-6123
交通アクセス:JR「米子駅」から車で約40分
公式サイト:https://tourismdaisen.com/
公式X:https://x.com/tourism_daisen

[参考]
日本遺産 大山
鳥取大山観光ガイド
公益社団法人鳥取県観光連盟

[Photos by Shutterstock.com]

 


 

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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